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14ーアレク・ルシャナ

学園生活も半年が過ぎようとしていた。

2週間後には中期休暇が始まる。


「ルナ、どうだった?」

寮の部屋に戻ってきたルナマリアに、中期休暇の予定を聞いた。

「そうね。やっぱり領地には戻らない方が良いみたい。しばらくお世話になってもいいかしら?」

「もちろんだよ!ルナと一緒に過ごせて嬉しい」


婚約保留問題で、ローウェン侯爵家は荒れているらしい。兄のアーサー・ローウェンからジュナの家でルナマリアを療養させてほしいとの言伝があった。

中期休暇をルナマリアと過ごせるとあって、不謹慎だがジュナは嬉しかった。










学園でのルナマリアへの関心は時間が解決してくれた。

聖女たちを避け続けていたので、細々とした嫌がらせなどは少しあったものの、表立って大事は起きなかった。


教会とローウェン侯爵家の関係は日に日に悪化しているらしいが、学園で過ごしているぶんには特に問題はない。


エリアルとも週に一度は会うことが出来、お昼やお茶の時間を一緒に過ごせた。


ジュナはそれなりに満足した学園生活を送っていた。





「ジュナ、エリアル様とはその後進展はないの?」

「進展も何もないよ。ルナ、いつも一緒に会ってるじゃない」

恥じらうこともなく、むしろ呆れ顔で応じる。2週間に一度くらいのペースで聞かれる質問なので、答え方も慣れたものだ。

ルナマリアも期待せずに質問しているのか、「ふぅん残念」と軽口で終わる。


しかしこの度のルナマリアは違った。

廊下で外をぼんやり眺めていたジュナの肩をつかみ、強引に目線を合わせる。

「ジュナ。もう少しで夏季休暇よ!なんとか進展なさい」

「えっ」

さすがにジュナも慌てる。

「今エリアル様は令嬢たちから、何通も何通もパーティーの招待状を贈られているらしいわよ」

「パーティー?」

「そうよ。自分たちのパーティーにエリアル様を呼んで、お近づきになりたいのでしょう」


中期休暇、魔法学園に通う貴族の令嬢たちは、学園で親しくなった人を呼びパーティーを行うらしい。


「エリアル様は高貴な方だけれど、ジュナと親しくしていることが裏目に出たようね」

「そうか···私みたいな下っ端貴族と仲いいから···ってちょっと」

「ジュナと恋人らしい雰囲気があれば、こうはならなかっただろうに」

うんうんと頷きながらノアが口をはさむ。

ジュナは狼狽えることしかできない。


「あっ、ルシャナ先生の授業準備で呼ばれてたんだった」

ジュナは話を強引に変えた。

やれやれと手摺りに縋っていた体を起こし、ノアが聞く。

「一緒に行こうか?」

「すぐそこだから大丈夫よ。ルナと先に教室に戻ってて」

さすがに2対1は分が悪い。ジュナはその場から逃げ出した。











「失礼しまーす。ルシャナ先生?」

魔法薬学の研究室は、誰もいない。少し言われた時間より早めに来てしまったので、留守なのは分かるが、鍵は閉めておくべきだろう。


(ルシャナ先生、相変わらずなのね。前にも研究品の盗難にあってるはずなのに)

天才だが、どこか抜けている。アレク・ルシャナはそういう人だった。


「ルナもノアも、私をからかって。進展なんてあるわけないじゃないの」

どこまで行っても、やはり自分は妹止まりなのだ。数ヶ月前、一瞬良い雰囲気になった気がしたが、気の所為だった。

最近、エリアルに会ったのはいつだろうか?1週間は前だ。


ふと机に乱雑に置かれている資料が目に止まった。

"闇魔法の活用において"


闇魔法。今でも時々夢に見る。実際に自分が使える訳はないのだが、自分と聖女が対峙して、自分が闇属性の魔法を使っているかのように錯覚する悪夢。


「やあ。今日のお手伝いはクライス嬢でしたか」

ビクッと肩を揺らして驚いてしまった。


ルシャナ先生は、不思議そうにジュナの手が伸びている先を見た。

「クライス嬢は闇魔法に興味が?」


「えっ!あ、いいえ。闇魔法、あまり知られてませんよね?聖女さまが降臨されて、光魔法があるんだから闇魔法もあるよねーくらいに思ってました!使ってる人見たことないなー」

慌てて早口になってしまった。

更に顔が赤くなっていく。ジュナは何も言えずに視線を落として固まってしまった。


先生は狼狽するジュナを見て、ふふっと笑った。

「ふふ。その様子だと、闇魔法がイメージの悪いものだと思ってますね?そんなことはないんですよ。光属性と同様、とても珍しい属性なので普段は見かけることはないでしょうね」


ジュナは顔を上げてルシャナ先生を見た。

男性にしては華奢で、表情の乏しい人だと思っていたが、笑うと年相応の若者に見える。

「この世に1番最初からあった属性は闇です。その後、光属性が生まれ、四大元素の属性が生まれました。闇属性がなければ他の属性は生まれなかったはずです。つまり、全ての魔学の大元なのですよ。闇属性は」

(そうなんだ。知らなかった。これから習うことなのかな?)

「なので闇属性を知りたいということは、何も恥ずべきことではありません」


ルシャナ先生が熱弁を続けているとドアのノック音が響いた。

「先生?ジュナ?何か手伝おうか?」

ノアが扉を開けた。


「あっすいません、熱中し過ぎしちゃいました。クライス嬢、気になったならまた聞きに来て良いですからね?」

ルシャナ先生は乏しいながらも笑って言った。

そして呟いた。

「教会が止めていなければ、授業で説明出来るのですが···」

申し訳なさそうなその呟きは、ジュナには聞こえなかった。







次の日からジュナはルシャナ先生の研究室に通うようになった。

ルシャナ先生の言い分を疑う訳ではないが、闇魔法に興味があることを、ルナマリア達に話せば心配すると思い、1人になるタイミングで少しの時間だが研究室を訪れた。


「闇属性を持つものが少なすぎて、研究がほとんど進んでないのです。闇魔法の効能も、他の属性に比べると解明できてないのです」


聞けば、ルシャナ先生の祖母にあたる方が微量ながらも闇属性を持っていたらしい。

「私の祖母は闇属性と風属性を持っていました。属性を2つ持てるのもとても珍しいことです。祖母は回復魔法が使えました。光魔法が身体の表面を治癒するとすれば、闇魔法は身体の内側を治癒するといいますか···まだ謎な部分が多いので断言は出来ませんが」


悪夢のおかげで、闇魔法にマイナスなイメージを持っていたジュナも、だいぶ考え方が変わってきた。

そのおかげもあり、感じでいた不安も薄らいだ。




そうこう過ごしている間にあっという間に2週間が過ぎた。







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