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鉄壁の運び屋 零ノ式 ー記憶の欠片ー  作者: きつねうどん
最終章 渡り鳥
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最終話 宿命

私にとって父は少々不思議な人だなという印象でした。

私の家の近くは坂が多いですが「歩くのめんどくさくない?」という方でして、いつも面白い人だなと思っていました。


というのも実は私は運び屋になりたかった訳ではなく、母と同じく医者の道を志そうと思っていたからなんですね。

私の母は異邦人で、私もそれに似て明るい金髪とブラウンの瞳を持っています。

染めた訳ではありません。地毛ですよ?


ただですね、父の事が気がかりで。

いつも家にいないし、危ない仕事をしていると噂で聞いた物ですから心配になってしまって。いつも父の無事を教会で祈っておりました。

そしたら、神からお告げが出たのです。

「自分が運び屋になれば良い」と。


あっ、今。私の事を疑いましたね?神の声など聞こえないと。

解釈を誤ってもらっては困ります。神は常に私の事を守ってくださっているのです。そうです、私の心をね。

ですので、神の声というのは即ち自身の本音という事でもあります。

そうなれば行動は早いです。私は早速、父にその事を伝えました。


「えっ、紫紋が運び屋に?それは良いけど、どうして急に?医者の道はどうするつもりだい?」


「私はまだ若いですから無茶できますし、後からでも十分間に合います。今はファティの事が心配なのです。私は貴方を愛しているから。それ以上の理由はありますか?」


そういうと父親は泣きじゃくり、私を抱きしめました。

やっぱり父は変わり者です。

いいえ、元々比良坂町では珍しい異邦人の女医に惚れた方です。変人に決まってます。私は外見は母に似ましたが中身は父に似てしまったようです。


「聞いたわ紫紋、運び屋になるんですってね。これで家族3人の時間も増えると良いけど」


診療所の庭先で紫陽花の手入れをしている時、母にそう言われました。確かに私と父で業務を分担出来ればそう言った時間も増えるでしょう。私は父と母が大好きですし、愛しています。

それ以上に神は慈悲深く。私の人生には必要不可欠です。


ただまぁ、家族だけの社会なら良いのですが世の中には沢山の人がいらっしゃる訳で。

どれだけ人類愛が尊いと言われても限界があるわけです。

私に対して、軽蔑したり石を投げてくる方を愛そうとは思いません。

私はそう言った方々には冷徹なのです。


そんなおり、私の地元に高貴なご子息が来られました。

そうです。七星様ですね。


「君が噂の新入りか。僕の名前は七星亘。君はとても綺麗な容姿をしているが、ご両親に似たのかな?」


私の容姿を怖がる事なく、むしろ綺麗と言ってくださった方は両親以外初めてでした。


「はい。母が異邦人でして、私はそれを受け継ぎました。奇妙に思わないのですか?実は周囲から物怪のようだと言われた事もありまして」


「どうして?君は君だ。それに同じ姿をした人間なんて1人としていないよ。皆、混乱するから名前をつけて差別したがるけど根本は一緒だ。君の手にしてる紫陽花も僕達の仲間だ。歓迎してくれてありがとう。もらっても良いかな?」


「母と父の思い出の花なんです。どうか、大切にして頂けますか?私の名もそこからもらったんです。私達にとっての愛の結晶だからだと」


「勿論。君の気持ちも、父君と母君の思いもね。素敵なご家族だ。...僕も父上と母上に会いたいよ」


その時、私は七星様のご両親が人魚によって命を落とされた事を知りませんでした。

ただ、七星様は良く此方へ顔を出してくださったのです。

もしかしたら、自分の家族と重ねていたのかもしれません。

どうか、彼に神のご加護がありますように。

違いますね。それ以上にご両親が天国で安らかに彼を見守ってくださいますように。


そのあとの事ですが、私は父と共に運び屋業に勤しんでおりました。

しかし、お告げがまた降りまして。今度は「仲間と合流しろ」と言われてしまいました。

正直言ってどうしろと?という思いが当時はありまして。

私は閉鎖的な空間で日々を過ごしていますし、仲間と言われてもピンと来ませんでした。ですので父に相談してみたんですね。

そしたらまた泣かれまして、抱きつかれました。


「紫紋、偉いぞ!良く言ってくれた!実はパパの知り合いに名門の運び屋一族がいて、乙黒家っていう所なんだ。そこのお嬢さんとなら年も近いし、気が合うんじゃないかな?紫紋の気持ちが固まってからで良いからさ。会いに行っておいで」


そう言われまして、丁度良いタイミングで七星様が来てくださって手を貸していただき、他御三方と対面する事になりました。

本当は父に手を貸してもらおうと思いましたが渡りに乗った船という事で話はスムーズに進みました。

本当に神のご加護は素晴らしいものですね。

日頃行いが功を奏しました。


「まぁ、素敵なお花。ねぇ、亘君。折角だしお屋敷に飾らない?」


「そっか、お父さんとは会った事はあったけど初めましてだよね。会えて嬉しいよ。これからよろしくね海鴎君」


「ツンもお前に良く懐いている。これからこの町も大きく動いていく事になるだろう。よろしく頼むぞ」


まさか、自分のしてきた事がここまで大きくなるとは思ってもみませんでした。

そのあと、望海様との出会いもありまして気づいた事があると言いますか、父に聞いてみたんです。海鴎のルーツは何なのかと?

そしたらですね、教えてもらいました。

理由は望海様と一緒。昔、比良坂は海に囲まれていたそうですね。


それを聞いて私は自分の事が、名前が大好きになりました。

私の名前は平和と愛の象徴なんだと。

この時がいつまでも続く事を願います。



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