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第39話 ……おや!? 夏凛のようすが……!

 たまに出掛ける以外はほとんど自堕落な生活を送っている中、新しい習慣が出来た。


「あ、起きちゃいましたか?」


 朝、目を開けると夏凛がベッドの脇に立ってこちらを見ていたり、俺の机に座ってスマホを弄ってたり、とにかくただそこにいて普通に過ごしている。こんな風に不意を突いて現れるので、一応見られてはいけないものにはパスワードをかけたり紙媒体はベッドの裏に隠している。


 今までは朝、昼、夕の食事と、たまにテレビを観るくらいしか一緒に過ごすことはなかった。

 それなのに、プールに行った辺りから用事もないのに俺の部屋に来ることが増えてきたんだ。


 勿論ずっとではない。夏凛は助っ人部として毎日何かしらの部活に参加しているので、昼間は学校に行っている。


 だけど、朝だけは欠かすことなくこうやって俺の部屋で何かしらの行動をしている。過ごす分には構わないが夏凛は無防備なところがあり、時折ドキッとさせられるから困り者だ。


 アニメや漫画みたいに起こしに来るわけではないようで、本人(いわ)く"もっと兄妹らしいことをしたいから"と言っていた。


「兄さん」


「な、何?」


「ご飯できてますよ」


「わかったよ。すぐに行くから下で待っててくれ」


「はい!」


 …………。


 今日の夏凛は正座したまま動く気配がない。


「夏凛? 俺、着替えるからさ……下で待っててくれると、助かるんだけど」


「あ! ご、ごめんなさい!? 気が付かなくて……では下で待ってますね」


 いつもは俺が起きたらすぐに下に行くのに、今日はジーッと俺を見つめて動かなかったな。

 何か顔に付いてるのかと焦ってしまったじゃないか。


「さて、行くか」


 俺は手早く着替えて夏凛の元へ向かった。


 ☆☆☆


 我が家はとても静かな食卓だと思う。夏凛との関係が改善されても、互いの事をあまり知らないから会話も続かない。

 普段は授業の話しとか、助っ人部での話しがメインとなっている。

 だが、今は夏休み……唯一の会話材料である学校が休みなのだから殊更静かになってしまう。


 カタンッ──。


 ──不意に夏凛がお茶碗を置いた。明らかに何かに対する前振りにしか見えない。


「ちょっと良いですか?」


「あ、ああ!」


 何の話をされるのか身構えてしまう。『私、彼氏が出来ました』とか言う報告だったら発狂するかもしれない。

 そりゃあ、いつかはそう言った対象が出来てもおかしくはない。だけど神様、せめてこの1年くらいは猶予が欲しい……だって、俺達ようやく"兄妹"になれたんだぜ?


 俺は神に願いつつ夏凛の言葉を待った。


「そんな注射をされる前の子供みたいな顔しないで下さいよ~、言いにくいですよ……」


「言いにくいですと!?」


 やっぱり、彼氏なのかな……。ああ、俺もう……死んだ……。

 俺は箸を握り締めて夏凛の言葉を待った。


「か、海水浴場に行きましょう!!」


「海水浴? 彼氏じゃなくて?」


 夏凛は頭上に疑問符を浮かべながら考え込む。


「何のことかわかりませんが、彼氏とかいませんよ?」


「それなら良いんだ。あ、海水浴の話しだったな、俺は構わないけど、誰か呼んだ方がいいか?」


「2人だけじゃ、ダメですか?」


「いや、いいけどさ。そんなに勿体つけて言わなくても良かったんじゃないか?」


「だって~、兄さん完全に忘れてるじゃないですか~!」


 夏凛がむくれて抗議し始めた。


 俺が、忘れてる? 海に行く約束とかしたっけ? 思考の海に飛び込むこと約3分──それに近い言動を思い出した。


「もしかしてプールで"次は一緒に"って言ったあれのこと?」


「さては兄さん、冗談と思ってましたね!? 私は結構本気だったんですからね!」


「悪い悪い、お詫びになんでも1つ言うこと聞くからさ、許してくれよ~」


 俺は不覚にも、頬を膨らませてむくれる夏凛が少し可愛いと思ってしまった。まぁ、本気で怒ってる訳ではないので夏凛もすぐに笑顔に戻った。


「"なんでも"という言葉、忘れないで下さいね? 結構重いモノを用意しておきますから」


「お、お手柔らかに……」


 こうして食事を終えたあと、夏凛は部活のために学校へ行った。

 宿題は終わってる、テストの点も平均点なので補習もない、となればゲームをするしかないわけで、積んでいたゲームを消化することにした。

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