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第3話 コンビニでの再会

 昨日の出来事が嘘のような普段通りの学校生活を送り、今日の夕食は少し豪勢なコンビニ弁当にしようと考えた。


 今日は何にしようかな……牛丼もいいなぁ。よしっ!君に決めた!


 手を伸ばすと、誰かの手を掴んでしまった。


「あ、ごめんなさい」「いえ、私の方こそ」


「夏凛か」


「兄さん」


 なんと、君に決めたのは妹だった。妹を召し上がらなければならないのか……なんてバカな考えは置いておいて、どうみても先に夏凛が弁当に触れていたので譲ることにした。


「俺、他のにするから取りなよ」


「あ、はい」


 なんともぎこちない会話だ。逆に今までよく妹と遭遇しなかったものだ。家でも息が合ってるかのように会わなかったのに……。


 夏凛は何回かこちらをチラ見したあと、そのままレジに向かった。俺は"麻婆丼とコーラ"を買って外に出る。すると、あの時の夫婦がコンビニに入れ替わりで入っていくのが見えた。


「あ、あの!」


 あの現象について聞かなくてはいけない。だから声をかけてみた。


 こちらに気付いたのか、旦那さんだけがこっちにきた。


「おお、君は───」


「黒谷 黒斗です!」


「了解、俺は拓真だ。じゃあ黒斗、俺に何か用か?」


「昨日もらった赤い紐なんですけど──」


「好きな子にでも使ったか?その顔だと使ったんだな!どうだ?ビビったろ?あれな、失敗作だから心配してたんだよ……ん?浮かない顔だな、どうかしたか?」


「それが───」


 俺は昨日の出来事を拓真さんに事細かに説明した。すると、拓真さんは目を見開いて俺の手を握ってきた。若干興奮してるようにも見える。


「君はッ!実の妹に使ったのか!あれを!?」


「す、すみません!」


「なんというか、黒斗は強者(つわもの)だな」


「え?あれって手品かなんかですよね?マジもんの呪いのアイテムとかじゃないですよね?」


「さっき言った通り失敗作なんだ。誰彼構わず発動するから処分に困ってたんだ」


 な、なんでそんなもん渡すんだよ!と叫びたかったが、コンビニの入口で大声あげるわけにもいかないので何とか押さえ込んだ。


「あ~その、なんだ。一応異性で良かったじゃないか。母親だったら悲惨な結果だったぜ?大丈夫!強制的な媚薬とかじゃないから当人同士がなんとも思わなければ、会う回数が少し増えるくらいだからさ」


 そうか、気の持ちようってことか!縁結びなんて名前だから恋愛を連想するけど、兄妹としての絆を結ぶって考えればいいわけか!なんだ、そう考えれば良いアイテムじゃないか。


「拓真さん、俺、妹と疎遠だったんですが、これで仲良くなれそうです」


「おう、頑張れよ!」


 固く握手を交わし、帰宅の途についた。


☆☆☆


 鍵を開け、家の中に入る。夏なのに、いつも通りの冷たい感覚がする。弁当をチンして自室で食べる。今の俺に妹を夕食に誘う、なんて自分から行動を起こすことはできない。


 紐に頼りながら少しずつ距離を詰めればいいのだ。


「つうか辛いッ!麻婆ってこんなに辛かったか?」


 1階の冷蔵庫にコーラを取りに行く。辛さを炭酸とキンキンに冷えたコーラで流し込んだあと、トイレに行きたくなったので急いでトイレに向かった。


 トイレで用を足して水を流し、扉を開けるとそこにいたのはバスタオル1枚で髪を乾かす夏凛だった。


 いつもなら妹は部屋で乾かすのに、この日に限って何故かそんなはしたない姿で洗面所にいる。暗闇で見えなかった部分と昨日の感触を思い出しそうになる。


 普段は編み込みロングストレートな黒髪が水分を含んだ肌に張り付いている。起伏に富んだ身体が見事なSラインを形成し、その中でもバスタオルが外れそうなほど存在を主張する胸部は実妹と言うのを忘れそうなほど魅力的だった。


「すみません、あんまり見ないで下さい」


「あ、ごめん。き、綺麗だったから」


「え?」


 俺が突拍子もないことを言ったせいで夏凛は唖然としている。そこからさらに両手で前面を隠す姿に少しだけドキッとしたが、叫ばず叩かずな夏凛に感謝して洗面所から退散した。


 もしかして、これが紐の効果?今のでさらに嫌われたかもしれない……勘弁してくれよ。


 その後、自室の壁にもたれ掛かり、想像以上の遭遇率に頭を抱えて朝を迎えるのであった。

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