11.確かめたいこと
町の方に久しぶりに戻り、レクシアはネリィに買ってもらった服に着替え一人、宿にいた。
彼女とは別れ、またルッキネスと二人きり。彼女は宿屋でも、以前剣の姿のままであったが。
「さすがに、一か月半も経っていたら、もうパーティには新しい人、いるよね……」
町で得た情報によれば――メクウ率いる『烈火』には、既に新しいメンバーが加わっているとのことだった。
レクシアと違って戦うこともできるヒーラー――それをメクウが受け入れたのなら、やはりレクシアは必要なかったということになる。
期待していなかったと言えば、嘘になる。メクウがまだ、レクシアのことを探していてくれたのだとしたら……。
「どうしたらいいんだろう」
『レクシアはどうしたいの?』
「どうって……でも、気がかりなことは、あるんだよね」
それはもう一つ――町で得た情報だ。
《嘆きのコルセスタ》で、《哭猫のルッキネス》の姿が久しぶりに確認されたということ。
そのために、メクウ率いるパーティもまた、コルセスタに向かっているというのだから。
ルッキネスは、ここにいるはず……そう思っていたが、彼女はルッキネスを名乗っているだけだ。
「ねえ、ルッキネス……聞けてなかったことだと思うんだけど……あなたは、魔物の王じゃないの?」
『私は魔物じゃないよ?』
「……え、そうなの……?」
ルッキネスに聞くとその答えはあっさりと返ってきて、思わずレクシアは身体を起こした。
『私は魔物じゃなくて、剣になれるようになった獣人』
「獣人……剣になれる……?」
『そう。ずっと前に作り出された』
「そ、そうなんだ……。え、それじゃあ、今いるっていうルッキネスは……!?」
彼女の言葉を聞いて、レクシアは気付く。確認されたルッキネスは――きっと、『本物』の魔物の王だということに。
「ど、どうしよう。本物がいるのなら、メクウが――って、あの子なら、私がいなくても大丈夫、かな……」
慌てて向かおうとしたレクシアだったが、すぐにそう落ち込むようにしてベッドに座り込む。
『行かないの?』
「……うん。別に私がいかなくたって、大丈夫だと思う」
『レクシアは、友達のこと嫌いになった?』
「! き、嫌いになんてならないよ。本当は聞きたいことだって、あるし……!」
『それなら、行かなくていいの?』
「……」
ルッキネスに問われ、レクシアは再び黙ってしまう。
メクウの言葉は聞いていない。あくまで、アクトから聞かされた言葉だけだ。
確かめたいという気持ちは――当然ある。
「……もしも、これで聞きに行って、やっぱりいらないって言われたらショックな気がする」
『わたしにはレクシアが必要だから大丈夫』
「……そう、だね。わたしも、わたしにもルッキネスは必要だよ。だから、うん。けじめをつけるために、確かめに行こう」
レクシアはそう決意した。生還できたのだから、メクウの真意を確かに行こう、と。