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8話 決戦 前編

 時刻は午後5時過ぎ。

空は青色からほんのり茜色に色づき始め、廊下に光の柱が差し込む。

窓からは果てしなく伸びるひこうき雲が見えた。

そんな中だからこそ一際目立つ真っ赤に光る瞳。

そして口から放出される白い蒸気。

目線の先に立つ康太は人とは言い難い風貌をそなえている。

恐らく俺も同く悪魔のような姿なのだろう。


彼は満面の笑みで俺を見据える。

いや、これは笑みではなく自信満々ににやけていると言った方がいい。

そんな不気味な彼までの距離は3m程度と近い。


俺は思いっきり腕を後ろに引いてから、拳を突き出した。

仲間を血まみれにされたことへの恨みを共に。


『ガアン!』


金属の衝突音のような鈍い音をあげて康太は吹っ飛んだ。

そのまま、廊下の突き当りの壁にぶつかる。


なんて威力だ。

5mくらい吹っ飛んだぞ。

彼は気絶したのか全く動く気配がない。

やったか。

ピクリともしないので俺は安堵の息をもらした。


「まさか一撃で倒せるなんて、、、、っ!?」


目の前に瞬間的に現われた顔に俺は息をのんだ。


「油断しちゃ、ダメでしょ」


速い!


顔に強い衝撃を受ける。

そのまま何回転かして気付いた頃には床に倒れていた。


(孝信。起きてください。また攻撃がきます)


その声の意味を理解した時には、手が振り下ろされていた。


(オート回避)


俺の体は攻撃を受ける直前に動きなんとか躱した。

元居た床はクモの巣のようにヒビが出来ている。

そして、それを作り出した本人の姿が見えない。

どこいった?


「!?」


後ろに気配を感じた。


(右に避けてください)


いわれるがまま俺は右にダイブする。


『ブオオン』


空気を切る音が聞こえる。

そして強い風が押し寄せた。

こいつのパンチ半端ねえ!


「ええ!?避けたのかよ」


康太は心底意外そうにな声をあげる。


「じゃあ、もっとテンポ上げてくぜ」


そういっての正面に突っ込んでくる。


(攻撃を予測中。、、、完了。右、左、左、右に避けてください)


「りょーかい。右、左、左、右!!」


ボクサーのように華麗に攻撃を躱していく。

まるでバトルゲームのコマンド入力みたいだ。


(右、左、右、下)


「右、左、右、しゃがむ!」


時折、彼の拳が頬をかすめる

そのたびに小さな火花が散る

だが、不覚にもここまで躱せると楽しくなってくる。


(左、左下、右、左)


「左、左、しtうぐぇ!!??」


俺は変な声をあげて吹っ飛ぶ。

流石に痛い。

そして少し頭がくらくらする。


「いてて・・・左、下って、言ったとおりに避けたら当たったぞ!」


(私は『左下』と言いました)


「はあ?分けて言ってただろ!今の結構痛かったんだからな!」


(あなたの耳が悪かっただけです。耳鼻科に行ってみたらいかがでしょうか?)


「なんだと!?」


こっちも別の意味で火花が散っています。


「ねえ。なに独り言を言ってるかわかんないけど、まだ終わってないよ!」


ハッとして声のする方を向くと、康太が一直線に飛び込んできていた。


「スロウ!」


この遅い世界でもこいつの攻撃速度はかなり早い。

俺はとっさにスロウを唱えて攻撃を避ける。

避けられると思わなかったのか、勢いを消せずに俺を通り過ぎてしまう。

そのまま受け身をとれずにゴロゴロと転がっていく。

そしてすぐに起き上がって喚きだす。


「どいつもこいつも!システムアナウンサー!もっと俺に力をくれ!」


(康太はサイボーグ適性が非常にあるようで、この早い段階でほぼ能力を使いこなしています。ただ、あの様子だとシステムアナウンサーとあまりうまくいっていないようです。サイボーグはシステムアナウンサーとの連携で真の力を発揮します。今が攻め時でしょう)


俺は発狂している康太を見る。

するとあいつも俺の視線に気づき睨らみ返してくる。


「あああ!あいつを殺す!!絶対に絶対に!」


俺の方に飛び込んでくる。


「あれ!?」


康太はサイボーグの驚異的な身体強化が切れたのか、先ほどのように勢いよく飛んでこない。


「どうしたんだ・・・・あれ・・・」


彼はいきなり静かになる。

どうしたんだ?


3秒程静止してから彼は人が変わったようにキリっとした顔で俺を見つめた。


「私は佐々木康太ことNo145のシステムアナウンサーです。先ほど彼は高宮孝信の殺害を望まれました。しかし、このままではそれを達成することは不可能と判断したため、私が引きついで相手をします」


つまり、もうあの体の持ち主は康太じゃなく、システムアナウンサーってことか。


すると彼は制服のズボンをパンツが見えるぎりぎりのところまで剥ぎ取った。

何してんだ?と不思議に思いながらも、やけに様になった康太の行動をうかがう。


「では、早々に任務を開始します。固有機能『浮遊』、作動」


さっきは発動しなかったが、今度は違うらしい。

彼の二本の脚に入れ墨のみたいな無数の黒い線が現れる。

脚を全体的に眺めるとアメリカの州境のようにもパズルのピースようにも見えるある程度規則正しい形が描かれている。

そして数秒したのち、その形に合わせて各肉体の塊が飛び出した。


『ブシャアア!!』


周りに血が飛び散る。

廊下はもう真っ赤だ。

俺の体にも赤色の液体が付着する。

どんどん飛び出した塊は足を忙しく動き回る。

塊は脚を組み立てているパーツと言い換えたほうがいいだろう。

血の合間から見える鉄のレバーやパイプのようなものが、パーツを連結させて脚を組み替えていく。

ウイーン、ガシャ。ウイーン、ガシャ。とロボットが変形するときのような音が響く。

血の生々しい匂いが鼻を刺激した。

そして目や口に付着した血が平常心をかき乱す。


気持ち悪い・・・。

吐きそうになって口を押える。


(孝信。しっかりしてください)


出会は言う。

そうだ。

ここで弱ってどうする。

俺は必死にこらえて彼に向き直る。


次第に吹き出る血が止まった。

そこには普通なら見えるはずの肌色の脚の姿はもうなく、あったのは銀色に輝く2本の脚。

鉄でできたようなゴツゴツしているいかつい足である。

水銀のようにきれいな容姿をしていて、自分の赤く光る眼が反射して輝く。

俺はそんな芸術作品のような「アシ」に見とれていた。

そうこうしているうちに、彼の足元から煙が上がり始める。


『ゴオオオオオ』


飛行機のジェットエンジンのような重い音が鳴り響く。


「場所を変えます。人が来るようなので」


確かに複数の足音が聞こえる。

その人達に怪我人は任せて良さそうだ。

しかも俺もこんな姿は見られたくない。


「!?」


いつの間にか目の前にいた康太が俺の首を掴む。

そしてそのまま窓を飛び出した。

何やってんの?この人?


「え・・・落ちる」


ここは床も何もない上空。

このままだと地面に真っ逆さま。

下には、先ほど同様蟻のような人や輝くビルが見える。


「場所を変えるってのは嘘だったのか」


俺は落下しながら言う。

怖い。超怖い。


「勝手に信用されては困ります。私は貴方を効率よく殺すために場所を変えようとしているだけです」


『グイイイイン』


そういうなり銀色の脚がまたまた変形していく。

まさにトランスフォームのようだ。

みるみる変形していき足の原型はもはやなく、気付けばロケットのエンジン部分のような筒状の形に姿を変えていた。

銀色の筒の穴から勢いよく炎が出る。

そしてあっという間に体勢を立て直して上昇していった。


鉄腕@トムみたいじゃないか。

誰だよこんなに似せた設定にしたやつ。

あ、、、俺でした。


(康太は足をジェットエンジンにして、浮遊する固有機能を持っていたようです)


そうだったのか、それは便利だ。だが・・・


「でも、そんなことより・・・息が・・苦しい」


首を掴まれて浮かんでいるので、痛いし苦しい。


「サイボーグは体力が多く、徐々に削っていかないと死にませんから」


口調と表情がまるで似つかない康太は上昇しつつ、ビルにかなり接近する。

気付けばもう鼻から3㎝先にはビルの壁がある。


「死ね」


そういって康太は俺の顔をビルの壁に押し付けながら上昇する。

すごい力で押し付けられているため、上がっていくたびに各階の窓ガラスが割れて俺の顔に突き刺さる。

そして外壁に顔が食い込んで俺が通るたびにコンクリが砕け散る。

バキバキと壁にひびが出来ていく。

体力ゲージを見ると刻々とHPが減少していった。


「これからですよ!」


彼はもっとジェットの出力を上げた。

戦闘機並みの速さで進む。


「うぐぁ!!!」


ゴリゴリゴリと鈍い音を立てて、俺の通ったところが削り取られていく。

頭に重いコンクリの破片がたくさん当たる。


あっという間に屋上の上空に出た。

屋上にはヘリポートがある。

俺はそこのど真ん中投げられた。

なんとか着地をして体勢を立て直す。


「ここなら広いし、誰も見られずに済むでしょう」


残りHPは60ほど。

結構削られている。


康太はジェット機能を止めて一旦着地する。


周りを見渡しても見えるのは赤みを帯びた太陽と、それに伴って色付き始めている大きな空。

冷たい風が俺の体を包み込む。


「No145。任務を遂行する」


彼は真顔で言う。

その表情から何もかも見透かされているような気持ちになる。


俺は立ち上がり身構える。


「さあ、第二ラウンドの始まりだ!」


こんな状況だからこそ気合を入れる。

俺達はお互いの方向に走り出した。

あれこれ書き続け、だれみょんでくれない現実。

では、私は誰にこのあとがきを書いているのか?

それは誰にも分らない。


ぜひこれからもおねがいします!

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