2話 二人の天敵
和人たちと別れを告げ、家に帰るためにバス停に向かう。
そこへ向かうまでの道は県の中心部を通り、日光を反射させたビル群がそびえ立つ。
道路に植えられている並木が風でサラサラと揺れてなんとも心地よい。
俺はこの感じを堪能しながらゆっくり歩くが、すぐに目的地に着いてしまった。
元々距離はそこまで遠くなかったが、やはり夢中になれるものがあると時間は早く進む。
俺はそこに着くなり時刻表を見ると落胆の声を発してしまった。
「うわー」
1分前にバス来てたじゃん。
「なんでゆっくり歩いたんだよ!」と過去の自分を責めるが何も起こらないことは知っている。
まあ幸い、20分後に同じバスが来るのでそれに乗ることにする。
この隙間時間を何で埋めようか。
昔は俺が主役の空想世界で無双することが出来たのだが、今はもう卒業した。
特にすることは無かったので、俺はサンサンと光る真っ白な太陽を見上げてぼーとする事にした。
日光が俺の顔に当たる。
暑くもなく、寒くもない。
そよ風も吹いて最高のコンディション。
「ああ、良き」
なんて、思いながら穏やかな気持ちに浸っていると、雰囲気をぶち壊す雑音が辺りに響く。
その雑音の正体は上品さの欠けらも無い、ただただうるさい声。
それも複数。
俺はこの声の持ち主を空を見上げた状態でもすぐに理解した。
『自分たちは青春を満喫してますよ!』と言わんばかりの、げらげらと笑う集団。
99バーセント女子校生。
しかも俺の方に接近中。
ああいう、うるさい奴らは大抵「絶対言わないでね!秘密だよ!」と言って指切りしても、家に帰ったらLINEで拡散するタイプ。
友達から聞いた話だと『群れ社会で生きるには犠牲が付き物』とか名言らしく言っていたけど、それってかなり最低なこと言っているからな。
そんな俺ら陰キャ系の天敵の習性を復習している間にも俺の真横を通過中。
あー良かった。絡まれなくて。
まじでうるさかった。まったく。
もうこっち来んなよ。
ああ、安心安心
俺は気を緩めてまた日向ぼっこをしようとする。
そよ風の音を聞こうと耳を澄ました。
「キャハハ!まじウケる!じゃあみんな、私と里奈ここのバス停だからだから。じゃあねー」
ん?
耳を澄ましたらいい事に嫌なことを聞いてしまった気がする。
天敵は言うなり女子高生の2人が何故か俺の真後ろに並ぶ。
え?このバスに乗るの?
なんでこっちきたの?
みんなとあっち行くんじゃないの?
まずい、天敵が背後に2人。
これって、少しでも気に触るようなことしたら後ろからコソコソ笑われるパターンじゃん。
この時の対処法は『絶対絡まれるようなことはしないこと』
俺は何もせずに正面を向いて静止した。
完璧。
これで絶対話しかけてこない!
俺は安堵のため息をついた。
「あ、タカじゃん!」
「ほんとだ!孝信君!」
ギグッ。
世界には同じ名前が沢山いるんだなー。
俺はぴたりと動かない。
「おーい!聞こえてる?タカ?」
「・・・」
「高宮孝信君だよね?」
え、そんな名前、知らない。
「タカ!」
肩を揺すられる。
ああ、もはやここまで。
俺はjkに敗北しました。
すう、、、はあ。
深呼吸して覚悟を決める。
思い切って振り向いた。
「・・・」
そこには知っている顔が2つ。
「なんだよ」
なんだお前らだったのか。
心配した俺が馬鹿だった。
「何だって何よ?」
片方が反論してくる。
だがもう、恐怖は感じない、、、うん。
紹介しよう。
ここにいる2人のjkは俺の数少ない女友達。
俺の事を「タカ」って呼んだ方が、高橋季楽。高1。サッカー部マネージャー。
チャームポイントは金色がかったロングヘア。
しかも某所には「そこにしか栄養いかんの?」みたいな事を嫌でも思わせる体型をしている。
体型もすらりとしていて、ボンキュッボン。
そんなハイスペックお姉さん。
ああもう、あなたをめがけてダイブしたい。
普通なら即好きになるところだが、騙されちゃあかん。
こいつ、数人は殺ってんぞ。社会的制裁で。
季楽と敵対したら、いつの間にか女子全員が敵になってて、時折ボソッと聞こえる言葉の切れ味はエクスカリバー級らしい。
だから、季楽と話す時は地雷を踏まないように慎重に会話する必要があるので注意だ。
一方、「孝信君」と呼んだほうが、清水里奈、高1。幼馴染だが、違う高校に通っている。
チャームポイントは銀色がかったショートヘア。
相変わらず某所の未発達度がすごい。
となりにいる季楽と比べると「富士山」と「田沢湖」。
まあ、ちょっとロリめで中学生と間違えられる時があるが、顔といい動作といい可愛いから男子からの人気は絶えない。
元アイドルであまり売れていなかったそうだがダンスも歌もそこそこできる。
こいつなら世間からぶりっ子だの叩かれている「萌え袖」とかやっても、絶対様になってしまう。
そんな里奈を普通なら即好きになるところだが、騙されちゃあきまへん。
こいつも同じく数人は殺ってんぞ。社会的制裁で。
里奈と敵対したら、里奈の熱狂的ファンからの「俺の姫になんてことしやがんだ。、、オマエ、、、テキ、、、コロス」オーラがすごいらしい。
そのオーラにより、里奈の敵対者メンタルは果物のごとく潰れるらしい。
え?なんでこの情報を知っているかって?
体験談だよ。
まあ、そんな怖い所はありつつも、それぞれ違う美しさを持つ美女が俺の前にいる。
気に触ることを言わない限り気安く話せる仲だ。
俺たちは立ち話をすることにした。
「あのマジでうるさい集団は里奈と季楽達だったのか。
ていうかさっきから気になっていたけど、なんで季楽がいんの?家の方向逆だろ?」
「いい質問だ、タカ!私、今日、里奈のうちに泊まるんだ!!ふふん、いいでしょ!
「そんな自慢げに言われても何も感じないんだけど」
「あ?なんか言った?」
「あははははは!今のは冗談だよ!麗しき季楽ちゃん!いや、様!!」
「ふーん、そこまで言うなら許したげる」
あぶねー。早速地雷を踏むところだった。
俺はチラッと腕時計を見る。
バスが来るまであと14分。
このペースで地雷踏んでたら、バス来た時にはもうズタボロじゃん。
俺は深呼吸し気合いを入れ直して会話に入る。
「あーそう言えば、孝信君と季楽は国立中高合同学院に通っているんだよね?どんな感じ?」
里奈の言う「国立中高合同学院」略して合同学院。
俺と季楽は合同学院に通っている。
学院は高等部と中等部に分けられて、俺達は中学部から内部進学で高校に入学した。
「んー、委員会とかでたくさんの生徒と話すけど、他の高校より美男美女が沢山いる気がするなー。特に美月先輩とか割と可愛い。」
「へー。可愛い・・・か。私も是非その美月先輩と話してみたいなー」
なんだか顔が怖いですよ、お嬢様。
「季楽は?」
「えーとねー。私はサッカー部のマネージャーがすっごく楽しくてね!エースの流星君が、試合でハットトリックして、女子はもうイチコロだったよ」
「え?ハットトリックとか超すごくない!?りゅ、流星君だっけ?」
「しかもね!成績も学年一位で超イケメンなんだよ!」
「・・・流星かぁ」
浜松流星。あまり聞きたくない名前だな。
「そう言えば、タカ、中学部の時サッカー部で流星君と仲よかったもんねー」
「えー?そうなの?」
「うん。タカは中学の時、流星君よりサッカーうまくてサッカー部のエースだったんだよー」
「ほんとー?」
「うん!あと、みんなとめっちゃ仲良くて、滝野君なんかとはほんとにね・・・」
季楽は、寂しげに懐かしむように言った。
おそらく俺も同じような表情なのだろう。
里奈が不思議そうに首をひねっているが、ここはスルーだ。
あの時交わした約束。
絶対に果たす。
待ってろ、滝野。
そうこう話しているうちにバスが着いたので乗り込む。
いきなりだが、この時代のバスはひと味違う!
スマホで降りるバス停を設定して、入口のパネルにかざす。
あとは、「ピロン」となったら運賃支払い完了!!
あら便利。
では何故こんなに便利になったのか?
それは2025年に、乗車券制度がバスには無くなったからだ。
それを拍子に「スマホがあれば何でもできる」という風潮が強くなって、あらゆるものがデジタル化、つまりスマホに取り込まれていった。
そしてついに一昨年、何千年もの歴史のある人類の最高の発明品『紙幣・貨幣』が無くなった。
これには賛否両論があったが今となっては便利ということが知れ渡り、誰も文句を言わなくなった。
でも、俺からしたらお金が無くなった気がしなくなるので、つい物を買いすぎてしまい不便だと思う時がある。
「えー皆さんご乗車頂きありがとうございます」
車内アナウンスが流れる。
そして、それが流れ終わるなりバスが発車した。
座席から見える外の景色はとても新鮮だ。
ビルが立ち並びモニターがちかちか光っていて「もうここは東京かよ」と思ってしまう。
「そう言えば、孝信君。何の委員会に入っているの?」
後ろの座席から里奈の声がする。
「図書委員会」
「ふーん」
「図書委員ってオタクしかいなくない?だって通時いるじゃん!」
あいつがいるとオタクしかいないことになってしまうのか。
まあ確かにそうなんだけどさ。
実際図書室になぜかラノベ置いてあるし。
恐るべし通時。
「ていうか何で図書委員会に入ったの?タカは元サッカー部のエースだし、体育委員会に入ればよかったじゃん」
「無理やり、体デカいオタクたちに囲まれて勧誘されれば断れないだろ!」
そうだ。あれは事故だ。不可抗力だ。
「合同学院の図書委員会は怖いね・・・」
そうだ。そうなのである。
分かってるじゃん里奈。
「そういえば先輩たちの様子はどう?」
季楽が言う。
「・・先輩がなんかあったの?」
里奈が首をかしげた。
「ああ、美月先輩っていう人が、学校一の問題児の先輩から告白されたんだよ。断ったらしいのだけれど、その問題児が諦めきれなくて付きまとっているらしい」
「はあ!?なにそれ!?男として超情けないじゃん!!」
珍しく里奈がぷんすか怒っている。
「そうなのよねー」
季楽がため息交じりに同意する。
「これはもう一度、美月先輩がきっぱり振ってやれば相手も引き下がるよ!」
普通は里奈の言うことは正しいのだが、今回はそうはいかない。
「振った相手ていうのは父親が大企業の社長で甘やかされて育ったからか、かなりの不良でな。いつもヤンキーの部下を引き連れて好き放題やってて、下手につき返して気に障ったらしたらタダでは済まない」
「ほえー。美月先輩も大変だね」
「そうだな」
話が一段落しそうなところで丁度俺の降りるバス停に着いた。
俺は席を立って降車口へ向かう。
「タカ、バイバイ!」
「じゃあね!」
季楽たちが手を振ってくるので、俺も振り返す。
そして俺はバスを降りるなり家へ向かったのであった。
ごめんなさい。長くなってしまいました!!
次からはもっとコンパクトにしていきます。
だから、見捨てないでー。
おっほん、
気を取り直して、
あー。やっぱ疲れるなー。
もう眠いので、寝たいと思います。
ルンバと一緒に。
いつか、カラオケ一緒に行こーね。
続き書きたいと思ってるんで、よろしくですー。
というわけでどうか、1文字でもいいので読んでくれたら幸いです。
では、ルンバのところに行かなければ。
今日はありがとうございました!