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19話 エリア━PROSPER

駅周辺は、学生たちで埋め尽くされ、活気にあふれていた。

そして、俺も元気いっぱい━ではなく、しょんぼり駅に向かって歩いていた。


「はあ」


「なあ、いい加減元気出せって」


「そうはいってもなあ・・・」


俺はまた一つため息を吐く。

そんな俺の後ろを、物珍しそうにこの町を見渡す出会が歩いている。


「ぬ、五月氏はここに来るのは初めてか?安心せい!ここは治安もよければ、アニメグッズも萌え萌えじゃんけんもできる、ある意味第二の秋葉原なのだ!!」


通時がなぜか誇らしげに言う。

アニメ関連の店があるところに来て、スイッチが入ったのか口調がいつもとは少し違った。


「ていうか、ここは通時が喜ぶようなものだけが、揃っているわけではないぞ?カフェに、いくつものデパート、街を一望できるタワーの上には動物園まで兼ね備えた超未来都市地区だよ。その名もエリア━PROSPER!!」


和人が補足説明をする。


「そうなのですか・・・私はこういうところは初めてで、とても驚いています。何でもあるんですね」


そう、何でもあるのだ。

しかも、ここでしか見られない設備や、ここにしかない店がわんさかある。


『ようこそ!エリア━PROSPERへ!何か分からないことがあったら、この私に、何なりと聞いてね!』


例えば、これ。

今の言葉を発したのは、道のど真ん中に突っ立っている人型ロボット。

まるでペッ●ー君を連想させる見た目をしている。

このロボットは何体もいて、彼らだけでこの街を警備し秩序を維持している。

つまり、こんな可愛らしい見た目をしつつ、実はものすごく強い警備ロボットだ。

何か悪いことしたら、一瞬で駆けつけてくるからご用心。


他にもこのように近未来なところがあって、この県から孤立し、エリア━PROSPERという独自の国家が出来上がっているように思うほどだ。


『こんにちは皆さん。岩本厚です。我が社オフィシャルフレンズ社が、中心になって作った、エリア━PROSPERに、またまた新しい店が仲間入りしました━』


そして、この街で一番大きなビルのモニターに映し出されているのは、この街の父、岩本厚だ。

この人は同じような街を他県にもたくさん作っているのだが、一つ一つのエリア、社長直々に毎日挨拶をしている。

その、勤勉なところが評価され、絶大な評価と支持を得ている人物である。


「ふーん新しい店ねー。孝信、どうだ?いってみっか?」


「俺は帰る」


きっぱりと断る。

今日あんなことがあって、呑気に遊んでられっか。

家に帰ったら枕にダイブして泣きじゃくるわ。


「釣れない野郎だなぁ。・・・なら、俺たちも帰りますか」


そういって、再び足を動かしたところで━


「あ、タカじゃん!」


「あ、孝信君」


呼ばれた気がして振り向くと、そこには季楽と里奈が立っていた。

二人とも手にパンフレットと紙袋を持っていて、どうやらエリア━PROSPERを満喫中らしい。


「おう」


「あ、和人と通時もいるじゃん!それと・・・」


季楽は俺の耳に顔を近づける。


「あの美人さん・・・誰?」


出会のことを言っているのだろう。

里奈も同じ疑問を抱いたらしく、顔を寄せてくる。

2種類の甘い香りが交差する。


「孝信の彼女だよ」


和人があたかも本当のことのように言った。


「「ええええ!!??」」


「ちがあああう!!!」



~3分後~



「びっくりしたよ。つまりは出会ちゃんは転校生で、彼女、ではないってことだよね」


里奈がほっとしたように言う。

ふぅ、やっと誤解を解けた。

一件落着だ。

ん?和人?

そこで這いつくばってるけど(調教済み


「私もびっくりしたー。・・・ていうか、タカ。この前の、私との電話すっぽかしといて、どういうつもりよ」


・・・。そういえばそんなことも、あったな。・・・・やっぱわかんない。


「そういえば、里奈たちは何しにここに来たんだ?」


「って、話逸らすなぁ!」


ナニソレオイシイノ?


「うーんとね、新しい店がいくつかオープンしたみたいだから、行こうかなって。あ、孝信君も来る?」


「うん!いくいく!!!」


「和人あんたに聞いてない」


里奈が冷静に和人を切り捨てる。

あー、超しょんぼりしてるよ。


「ん、別に予定ないしが、俺は帰━」


おい、最期まで話を聞け。

俺は帰る、と言おうとしたがもう手遅れらしい。


「ほんと!!!??出会ちゃんは!?」


「ええ。私も行ってみたいです」


「ほんとぉ!!」


里奈はひまわりのような眩しい笑顔を作る。


「じゃあ、さっそく行こ行こ!」


こりゃあ、今更帰るなんて言ったら、一生、里奈のがっかりする顔が焼き付くだろう。

それは、絶対に避けたい。


「おおう、おーい通時!行くぞー」


そういって、里奈に引っ張られながら、コスプレイヤーにウホウホしている通時を呼んだのであった。




彼女たちに連れられて向かったのは、このエリア━PROSPERの中でも1、2番くらいに人気なショッピングモールだった。

ここは俺自体、何度か来ていることもあって、躊躇いなく入ることが出来た。

たまにあるじゃん。

新しくできたデパートに入ったら、みんなバリおしゃれしてるのに、自分はジャージで、周りは何も言わないけど自分がめっちゃ恥ずかしくなる時。


でも、このショッピングモールは子連れや小学生たちも来ていて、比較的ラフな感じだ。

インドア系男子〈引きこもりを美化したもの〉も入りやすい。


俺は、パンフレットを手に取ると、感嘆のため息をついた。


「マジかよ。屋上に水族館、そしてプール。動物たちと一緒に泳げる、だってよ」


前来たときはこんなものなかったはずだが。


「これは先月できた水族館だね。私達も泳いでみたけど、超楽しかった!ペンギンと一緒に泳いだりしたんだよ」


「ほえー」


泳ぐにしても、ペンギンの糞とか踏まないのかね・・・



いかんいかん、こういうの考えてたらきりがないな。物語的に



「じゃあまずは、服屋さん!さあみんな!レッツゴー!」


「「「お、おおー」」」


こうして、季楽を先頭に俺たち一行は目的地へ歩き出した。




服屋にて


「あのさあ。どうしてこんなに、服選ぶの遅いもんかねえ。もう30分は立ってると思うんだけど」


里奈は同じ服を15分くらい見つめて悩んでるし、季楽は出会にたくさん服を着せて、わー人形みたい!なんて言っている。

俺は店の前のベンチに座りながら言った。


「こういう時は黙って付き合うのが、モテる男だよ」


隣に座っている和人が言う。


「俺、アニ●イトに言ってくるでござる」


「「おい」」


逃げるようにして、立ち上がった通時の手を掴む。


「は、はなせ!もう、うんざりだ!早く推しに会いたい!!」


な、なんだこいつ!?

いつもより何馬力か、力が強まっているだと!?


「苦しいときは、、、みんな一緒だ!!」


俺たちが必死に綱引きみたいなことをしていると、、、


「ね、ねえ、孝信君。これ、どう?どっちがいいかな・・・」


里奈がとてとて歩いてきて、二着の服を交互に胸の前において見せてくる。

里奈が持ってきたのは、大人な印象を受けるストライプ柄のⅤネックシャツと、リボンのついた可愛らしい印象を受けるギンガムチェックのブラウスだ。

どちらが似合うか感想を聞かせてくれ、ということだろう。


「うーん」


めっちゃ悩むぞ。

正直、里奈だったらなんでも似合いそうな気がするから、あとは俺の好みになっちゃうんだよな。


超絶唸っていると、和人は俺の肩に手を置いて、モテる男っていうのは意見をしっかり言うやつなんだ。見てろよ、と囁いてくる。


「俺はⅤネックシャツがいいな!たまにはクールな里奈ちゃんも見てみたいし!」


「うーん。でも、ブラウスも超かわいいんだよねー。やっぱブラウスにしようかなー」


「・・・あー確かにそうかも。これ超かわいいし」


和人が意見が反映されなくて、地味にしょんぼりしている。

いやワロタ。


「俺も和人と同じでシャツ、似合うと思うけど」


「ええ!ほんと!?じゃあこれ買ってくるね!!」


そういって、あっさり里奈は上機嫌にレジに向かっていった。


「・・・よし通時。アニ●イトいくか」


「うむ」


「ちょっと待とうか」


今度は二人の手を掴んで引きとどめる。


「だってだって、俺の意見里奈ちゃん聞いてくれないのに、何で孝信は、速攻聞いてくれるうううjにbvycvうぃttc」


おい、一回落ち着け和人。

後半なんて言ったか分からなかったぞ。

おい、通時。推しの名前連呼して、アニ●イトの方角を崇めるな。

イスラム教か。


「ねえ、タカ!これどう!?かわいいでしょ」


必死に引き留めていると、いきなりそんな声が聞こえて振り返る。


「・・・・・・・・・・わお」


もはや2人は駄々をこねるのをやめて静止している。


「ど、どうですか。・・・少し恥ずかしいですが」


「こりゃ、新たな推し発見。アーメン」


通時が出会に向かって崇めだす。

が、無理もない。


そこには、季楽に服装をコーディネートされた、五木出会が立っていた。

彼女の変わったところといえば、クラシックブルーのワンピースを着ていること。

ただそこしか変わっていないのに、いつもとは違う美しさが感じられた。


まるで青空を感じさせるブルーのワンピースに着いた可愛らしいリボン。

白く輝く髪がかかり、照れているからかいつにも増して、ゆらゆら動くエメラルド色の瞳。


全てが相まって、繊細ながらも華やかに感じられる。


この店の前を通る人全員が、立ち止まって感嘆の息を漏らしている。


「えっと、すごく似合ってる。うん」


俺が一声かけると、出会は、そうですか、一言言って俯く。


「・・・」


妙な間が生まれる。

・・・。


「なにおまえ。照れてんの?」


「っち、違います!でも、服にこだわるのって初めてで、よくわからないんです。こういう時なんて返したらいいのか」


俺はそんな出会をみて、つい微笑んでしまう。

出会は出会で、うまくやっているみたいだ。

俺以外の人とふれあい、初めての感情に触れ、学んで。

まだ、肩苦しいところはあるけど、もう彼女は人と変わりない。


彼女はAIと名乗っているが、彼女もプログラムや機械ではなく、人になれる日が来るのだろうか?

ふと、そんなことがよぎったが、すぐに頭のどこかに消えてしまった。


「出会ちゃん!私買ってあげるよ」


季楽が胸を張って言う。


「いえ、それは・・・」


「大丈夫大丈夫。私に任せといて!友達一日目記念ということで!!!で、これはいくらなのかというと・・・」


季楽はワンピースについている値札を確認すると


「げ、6000円!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねえ、タカ!助けて~」


「なんでやねん」





服屋を出て、次に向かった店は大きな雑貨屋である。


ここは、アクセサリーや文房具、キッチン用具から掃除用品まで幅広く兼ね備えた便利な店である。


「はあ~。何で俺が。8割負担とかあんまりだ・・・」


「いやー、頼れる男ですな、タカは」


店の前で、今日何度目になるか分からないため息をつく。


「じゃ、私は引き続き出会ちゃんをコーディネートしてきます!」


季楽は俺に敬礼をする。

敬礼すな。

俺は上官か。

季楽は、出会を連れて、店の奥へ行ってしまう。


「俺はどうしようか・・・」


里奈は既に店に入ったみたいで、見て回ってるし、和人と通時は文房具コーナーで今の時代あまり使わないシャーペンを書き比べしている。


みんなここでいくらか時間を潰すようだったので、俺も店に入ってみることにした。




店の中は、リズミカルな南米の方の音楽がかかり、オレンジ気味のライトが店の中を照らしていてとてもお洒落だ。


雑貨店と言ったら大抵、無印●品に行くので、同じジャンルの店と言えど新鮮である。


「なんじゃこりゃ」


店を回っていると、奇妙なものがあったので手に取ってみる。


それは、デカいタケノコのような形をしていて、2つの穴が開いている。

材質は、、、骨?

それが置いてあった棚の名札を見てみると、、、


バッファローの角笛?


これってバッファローの角なのか?

ほー。

ほら貝笛と同じ要領のものなのかもしれない。


「ていうか、誰が買うの?19000円って高っ!?」


そっと元の場所に戻す。


ほんとに何でもあるんだな。

今時は、バッファロー???


なんて考えながら、再び店の中を歩き出す。

雑貨店は、こんなしょうもないも物も売っているから面白い。


次に向かったのはアクセサリーコーナー。

コーナーの奥で、さっきから唸っていた里奈が呟いた。


「これいいかも・・・」


何かを手に取ってはにかむ。

だが、値札を見るとガックシして、元の場所に戻した。


俺は不思議に思い、近づいて声をかけてみることにした。


「なんかいいの見つけたのか?その割には、落ち込んでいるけど・・・」


「うん。このネックレス可愛いと思ったんだけどね・・・」


そういって、里奈は指差す。

そこにあったのは太陽の形をしたネックレスだった。

太陽を銀色の金属で模っていて、真ん中には桜色のガラス玉が埋め込まれている。


「あなたを悪いものから救ってくれます」


俺は紹介用のパネルを読み上げる。

里奈って、こういう占いとかオカルトって信じる人だっけか・・・?


「たまにはこういうのも、信じてみていいかなって思ったんだけどね・・・。でもその、、、値段が・・・」


そんなに高いのか?

里奈が見つめている値札を見てみると、、、げ、4500円。

高くね?メレダイヤのネックレスと同じ価格帯やん。

一見1000円台の代物かと思いきや、こんな高いのか。


「こればっかりは仕方ないかな・・・」


里奈は超落ち込んだ表情で言った。


「・・・」


俺が黙ったことで生まれた間を埋めるように、里奈が口を開く。


「あ、季楽が出会ちゃんのシャンプーで迷ってるぽい。私もはせ参じてくるね」


そういって、季楽の方へ、とてとて歩いて行った。











「はあー楽しかった!じゃあ次行きますか」


雑貨屋さんの紙袋を持ちながら、季楽は言った。


「まだあんのかよ・・・」


通時は呟く。


「男子はごちゃごちゃ言わずに付いてくる!はい、これ持って!」


「ええ・・・」


「それは出会ちゃんに買ってあげた物だから、しっかり持ちなさいよ!」


「ッ!?出会ちゃんの!?はい!しっかり持ちますゥ!!」


「よろしい!じゃあ、出発!」


そういって、季楽を先頭に歩き出す。


俺は彼らの後ろを歩いている。

彼女らが少し前に進んだところで言った。


「なあ、里奈」


彼女は不思議そうに振り返る。


「どうしたの孝信君?」


「はい、これ」


雑貨店のロゴが着いた紙袋を渡した。

里奈はそれを受け取ると、ぽかんとした表情で見つめる。


「これって・・・さっきの。開けてもいい?」


俺はうなずくと、里奈は手の平に銀色と桜色の何かを出す。


「誕生日の前祝」


俺が渡したのは、太陽のアクセサリー。

あんなに物欲しそうにしているのは、珍しかったのでつい買ってしまった。

里奈は慌てて訴える。


「いやいや、誕生日はずっとずっと先だよ!?2ヶ月くらい!」


銀色がかった、短く綺麗な髪がサラサラ揺れる。

その時に香る、柑橘系の香水は場を和ませるように広がっていく。


「知っとるわ、何年幼馴染やってると思ってるんだよ」


俺の幼馴染道を舐めたらいかん。

小学校の時に聞いて、しっかり今でもしっかり覚えてるわ!

7月23日だろ?・・・・ん?11月?

そんなことを考えていると、タカ早く来てー、と前から声がする。


「ああ、今行く」


俺は手を上にあげて返事をした。

そして、先に進んでいる出会達に追いつくために、少し小走りで向かう。


「孝信君」


後ろから、声がする。


俺は顔だけを振り向かせた。

すると、幼くも華麗な笑顔で里奈は言った。


「ありがと。大事にするね」


俺はこの言葉に何も返さず、再び前を向いて歩き出した。










警視庁『オフィシャルフレンズ社世界征服対策本部』にて




「先日のテロ事件と偽った、サイボーグ暴走事件で、No1の居場所が分かったと、連絡が来たよな?」


この部屋中は、ぴりついた息苦しい空気で埋め尽くされていた。

吉田警視は低くくも、重い声音で言う。

彼は部屋の一番前にある机に座り、この部屋にいる全警官を見据えている。

顔の前で手を組んでいるため、表情は伺い知れない。


「はい、我々本部は詳しい情報を報告するように連絡しているのですが、未だにそういった情報は提供されていません」


部屋の前の方に立っている、小林警部補は言った。

横には、田中巡査部長も立っている。


「なにせ、No1を発見したと報告した警官は今、薬の過剰摂取で搬送されていまして、昏睡状態だそうです。その状態の限り、詳しい場所は聞き出せそうにはなく、地方の警察が彼に代わって捜査しています」


「その、警察官は報告書にNo1のありかを記載し、署に提出しなかったのか?」


「報告書を自宅で作成中に倒れたそうです」








港のある暗い倉庫の中にて



「No175。やはり耐えられなかったか」


岩本は壁に寄りかかり、たばこを吸いながら言った。

淡い煙は、天井のわずかな隙間から飛び出て夕方の空と同化していく。

その近くに、凛として立っている青髪の女、寺田秘書は頷いた。


「彼があんな状況では、No1を連れてくるのは難しいでしょう。こちらから新たな人手を送り込んだ方がいいのでは?」


「そうだな」


岩本は素っ気なく答える。


「あの、マスター。彼は病院に搬送されたと聞きましたが、血液検査などでサイボーグの体だと感づかれませんか?私たちの皮膚は針を通しませんが」


「彼は特別さ。1年前のあの時、彼をサイボーグの体にする材料は持ち合わせていなかった。あったのは、現No1が元々持っていたシステムアナウンサーとそれに付随した、固有機能だけ」


彼は、大きな白い煙を吐き出す。


「だから、彼はサイボーグのシステムだけを与えられた、人間。ただの失敗作だよ。その点ではいくら手術したところで人の体には変わりないから安心さ」


「それに、もうサイボーグの情報は流れているさ」








警察庁『オフィシャルフレンズ社世界征服対策本部』にて


吉田警視は苛立った声で言った。


「彼に同行していた部下の警官は何か知らないのか?」


「それが、皆、記憶が抜き取られたかのように、No1との接触時のことを覚えていないらしいのです」


「・・・・・これも、奴らの手の中か」


この会話を聞いていた警官は、どういうことだ、ありえない、だの小声で口にする。

この部屋は、静かながらも混沌としていた。


「時間がないのだぞ!」


吉田警視が発したこの一言に、ここにいる者全員が背筋を伸ばす。


「三日後、いや、明日には、世界征服という残虐な計画が実行されるかもしれないのだぞ!?ええい、待ってられるか!!!」


彼は化学班のリーダーに確認する。


「サイボーグの解剖のデータを元に作った、アレはできているのか?」


「え、ええ一様。ただし作品の段階ですが」


それでいい、と吉田警視は頷く。

そして、大きく息を吸っていった。


「No1がいると思われる地域に、6割の勢力を送り込む。現場の指揮は小林警部補に任せる!!」


「了解!」


皆が敬礼をして、返事をする。


吉田警視正は立ち上がって言った。







港の、ある暗い倉庫にて


「時間がない。そろそろ警察も、No1も動き出す。検体Yが奪われたのもいい例だ」


岩本は煙草を地面に落として踏みつける。


「現場にはNo6を投入する。そして、例のアレも実行しよう」


「了解しました」


寺田秘書は返事をする。



それを聞いて岩本厚は歩き始める。


そして、遠いどこかにいる、熊のような警察官と同じ言葉を発した。




「「任務、開始だ!!」」


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