絶対エイドリアンのせい
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「その先生は教科書中心に出題するから教科書をきっちり読んでいれば大丈夫だ。こっちは習ってないことも平気でテストに出す」
「まぁ、そうなんですね! ありがとうございます!」
語尾にハートマークが付きそうな勢いで喋るご令嬢はあのキャサリン・メイヤー嬢ではない。
エイドリアンを前にしたイザベラ・レヴィアス公爵令嬢だ。
なんで図書館の自習室にエイドリアンがいるのでしょうか? イザベラ様が図書館の入口でたまたまエイドリアンと鉢合わせして中間テストのための対策を教えてほしいとここまで引っ張ってきたのです。
イザベラ様は普段でも美人ですが、今はなんだか2割増しに見えます。恋する乙女☆って感じです。
中間テストは学園パーティーの前に行われます。またも全教科。成績が悪ければクラス替えこそありませんが、選択授業の履修資格剥奪なんてこともありえます。ひぃぃ、恐ろしい。
「むにゃ……今日の売り上げは……すやぁ……」
ティアは相変わらずイザベラ様が目を離した隙に寝ています。
ティア、寝ながら売り上げ計算しないで! 絶対計算間違いしてるから!
ハートマークを飛ばしながらエイドリアンと会話するイザベラ様を見て、私邪魔じゃね?と思って退散したいのですが、イザベラ様がテーブルの下でしっかりと私の手を握っています。
これってこの前みたいに帰ろうとすんなよってことですか? それとも気を抜くとエイドリアンを襲いそうだから淑女の距離を保たせるための理性の綱ですか??
「外国語は俺たちの学年と担当が違うからわからないな……」
「そうなんですね。エイドリアン様も1クラスなのですよね?」
そう、エイドリアンって脳筋なのかと思ったら頭いいんですよ。ちなみにベイルートお兄様も1クラスです。もちろん2人とも1つ上の学年ですからね。周囲が頭良い人ばっかりって地味にプレッシャーです。
というかイザベラ様、何を食べたらそんなにお胸にお肉がつくんですか?秘密のトレーニングとかあります?
もう外聞も関係なく、ソレをエイドリアンの腕に押し付けちゃえば良いのでは?あのメイヤー嬢が第2王子にやってるみたいに。エイドリアンも男ですからねぇ。私はつるぺたですから、良い刺激になると思うんですよ。
ぼへーとイザベラ様のお胸を見ていると、エイドリアンが苦笑したのが分かります。
「アルトリリー、大丈夫か? 疲れてるのか?」
「大丈夫。大丈夫」
「領地経営の勉強を頑張っているだろう?」
目の前にザ・公爵令嬢がいるんですから私のことは気にかけなくて良いのですよ、エイドリアン。イザベラ様が怖いんです。
そのとき、自習室の扉がノックされました。
「あら?」
イザベラ様はエイドリアンに向かって首をかしげますが、エイドリアンは肩をすくめます。
私も友達は他にいませんし。イザベラ様が立ち上がって扉を開けると、またあの2人がいました。第1王子殿下とゲイリー様です。
「じゃあ、俺はこれで。中間テスト勉強頑張って」
「エイドリアン様、ダンスの試験はどんな感じですの?」
エイドリアンは2人が来た瞬間、しれっと退散しようとしましたが、イザベラ様に引き留められます。
私は見ましたよ、イザベラ様が2人が来た瞬間、チッみたいな顔をしたのを。
その後は同じくテストの傾向が聞きたい殿下とゲイリー様にも引き留められて、しかも勉強まで見ています。エイドリアン、マルチな能力をお持ちで。殿下なんかぜひ手合わせしてほしいなんてお願いしています。
「アルトリリー、また遊びに来いって母上が言ってるけど、勉強が忙しいか?」
「うーん、オルティスが今度休みをくれるみたい。でも孤児院にも最近行けてないから行きたいし」
「じゃあ気が向いたときに気分転換……になるかわからないけど来いよ。エルネストの兄貴が勤務の日にしよう。孤児院は俺も一緒に行っていいか? まだ先だけど母上がアリアーデにある孤児院を管理させようとしてるみたいだから。他がどんな感じなのか俺が見ておきたい」
「いいよ。エイドリアン来たら男の子が喜ぶと思う」
「そうか、なら良かった」
エイドリアンはふっと笑うと私の頭をぽんぽんと撫でて自習室から出て行きました。
振り返りたくない。なんかイザベラ様ともう何人かの視線が背中に突き刺さっているのを感じます。エイドリアン、なぜ頭ぽんぽんなんかしたんですか~。私そんなに疲れて見えました?
「アルトリリー様、私も孤児院に一緒に行ってもよろしくて? そういったことも勉強しておきませんと」
「孤児院か。最近市井の視察にも行けていないな、ちょうどいい。私も行こう。ゲイリーも付いてこい」
「はぁ……あの、ご迷惑でなければ……」
「むにゃむにゃ……」
こうなったのって絶対エイドリアンのせいですよね?
なんで殿下とかまで付いてくるんでしょうか。めんどくさいわぁ。
とりあえずテスト勉強頑張りましょう。
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