みんなでお勉強
お読みいただきありがとうございます!
あれからいくつか変化がありました。
まず、ゲイリー様が第1王子の側にいるようになりました。どうやら政治学の選択授業を取っていて、通行税について教師そっちのけでお2人で熱く議論して仲良くなったようです。ゲイリー様のお父様は宰相なので、ゲイリー様も国について色々考えていらっしゃるのですね。
そしてイザベラ様とわりと仲良くなりました。ティアとイザベラ様と一緒に授業後は予定が合えば課題をやっています。場所は図書館の中にある自習室です。個室が何部屋かあり、1部屋は5人ほどが入れる広さ。ここなら話をしても咎められることはありません。便利です。
第2王子はあれから特に声をかけてくることはありません。イザベラ様曰く、プライドが高いので自分より賢い女性は苦手なようです。もちろん第2王子はイザベラ様のことも苦手。確かに考えてみると第2王子の取り巻きは皆4か5クラスです。
ちなみに第2王子の時は第1王子の時のようなハニートラップ対策教育はなかったようです。
そしてイザベラ様の動きですが、第1王子を無理やり説得して婚約者候補や他の生徒たちも交えてお昼を毎日、大人数で食べておいでです。建て前は他の方々と親交を深める、本音は他の婚約者候補のご令嬢達のことを知って目移りしてほしいみたいです。
「私のイチオシは婚約者候補の中にいたソフィア・オルコット嬢なのだけれど」
イザベラ様は課題をやりながら悩まし気です。オルコット侯爵令嬢といえば、ダンス試験の時に自分が殿下のパートナーでもいいんじゃないかと言ったあの方ですね。
「ティターニア様、寝ないでください。ほら、ここの文法が間違っています」
イザベラ様は面倒見がいい。外国語を見るとすぐに寝てしまうティアを起こして、間違いを指摘している。ティアは算術が得意でも、外国語はイマイチなんですよね。
「オルコット侯爵令嬢なら、マナーも教養もしっかりしていますから。ダンスはそれほど上手くないですが及第点でしょう。1クラスですし、少し自己主張の強い方ですが殿下にはそのくらいの方がいいでしょう。はぁ……小説のように平民上がりの男爵令嬢に恋をしていただくのはあの殿下には難しいですわ」
イザベラ様はインク壺に向かって悩まし気に話す。私がイザベラ様の話を聞かずに課題をカリカリやっているからだろう。ティアは眠気と戦いながら外国語を訳している。ちなみにインク壺は決してブタのインク壺ではない。
「イザベラ様、ここはこれで合っていますか?」
「ちょっと見せて。えぇと、ここの冠詞が抜けているわ。ここも」
イザベラ様、頼りになりますね!
イザベラ様のお父様であるレヴィアス公爵が外交関連のお仕事をされているせいか、それとも婚約者として優位に立つためにしっかり家庭教師がついたのか知りませんが、イザベラ様は外国語が大変お得意です。外国語だけなら学年でトップか2位くらいじゃないでしょうか。
「オルコット侯爵令嬢は可愛らしい方ですものね」
「えぇ。彼女はお昼にいつも殿下の隣に座っているわ。殿下のこと好きなのかもね」
あまりに話を聞かずイザベラ様が拗ねても困るので適当に返事をします。それから他愛もない会話をしていると、自習室の扉をコンコンと叩く音がします。
「あら?使用中にしていたはずだけれど」
入口近くに座っていたイザベラ様がぱっと立ち上がって確認しに向かいます。私はとうとう机に突っ伏して寝始めたティアを起こします。
扉を開けたイザベラ様が息をのむのが聞こえました。扉を見て顔をしかめなかった私を褒めたいです。
「ベラ、外国語の課題を見てもらってもいいだろうか?」
第1王子ですわー。後ろにゲイリー様もいらっしゃいます。
「でも今はお2人と勉強していますので……城の教育係に聞けばよいではないですか」
イザベラ様はコチラをちらりと見たその一瞬で顔をしかめて見せました。私もそんな顔がしたいです。何で殿下がここに来るのか?みたいな顔です。
「教育係はギルバートに時間を割いている。私のためにさらに時間を割かせるのは申し訳ない」
ギルバートって誰だ……あ、第2王子か。ゲイリー様は第1王子を放って私と半眼状態のティアのところまで来ると、ティアにハンカチを差し出しました。無言で口の端をトントンと叩きます。
「ありがとうございます。でも大丈夫です」
私は素早くそう言うと、ティアの口から垂れていたヨダレを自分のハンカチでささっと拭きました。ゲイリー様はほっとしたように笑います。うーん、どこぞの王子と違ってゲイリー様は気が利きますね。さっきのハンカチにも少し見ただけですが綺麗な刺繍が施してありました。
「邪魔をする」
第1王子も自習室に入ってきました。イザベラ様は殿下の後ろで憮然とした顔をしています。
「じゃあ私たちはこれで……」
後は若いお2人で~とばかりに教科書とノートを片付け始めましたがイザベラ様に止められました。
「アルトリリー様、まだ課題は終わっておりません事よ。ここ、文法が逆になっていますわ」
「あ、はい……」
帰ったら領地経営のお勉強が待っていますから課題は終わらせておかないとキツイです。
イザベラ様の凄みのある笑顔を前にまた教科書とノートを開きました。なにやら重力が増した気がします。
その後は殿下とゲイリー様も交えて勉強しました。殿下も外国語はお得意なので大変お世話になりました。私は文章を書いているとすぐ冠詞を抜いてしまうので。
「また抜けているぞ」
いやしかし、何で私の外国語の課題を殿下が見ているのでしょうか。ここはゲイリー様かティアを見るべきところでしょう。あぁまた寝かけたティアをゲイリー様が起こしている……ヨダレはやめてね、一応異性の前だし。
それかイザベラ様と会話してください。2人っきりで会話なんて中々できないでしょうから。
ノートの端に「イザベラ様と勉強やお話しなくていいんですか?」と書いて、目の前に腕を組み尊大な態度で座る殿下に見せてみた。殿下の眉間にさらにシワが刻まれる。
「ここは……こうだな」
表向きは勉強しているように見せかけて殿下はノートに返事を書いてくる。
「勉強以外で何を話したらいいかわからない。さっきので課題は全て終わった」という大変ヘタレなお返事だった。めんどい。「他愛もない話をすればいいんですよ。授業が難しいとか。最近流行っている観劇の話とかそれか休日一緒にでかけないかって聞いて計画立てるとか」「どこに?」自分で考えろやと言いたいがやめておく。「お忍びでカフェに行くとか。公爵家を訪ねるとか。王宮の庭を散策するとか」「そんなのでいいのか?」「会話が大事なんですよ。会話が。視察でもなんでも理由はつければいいんですよ」「また相談させてくれ」
いやめんどいわ。自分で考えてくれ。陛下、女性への接し方の教育係を殿下に着けることを早急にお勧めしたい。
「そろそろ下校時間だから帰りましょうか」
ゲイリー様の号令でその日は帰宅した。課題は済んだのでそれだけは良かった。
ブックマーク・評価をありがとうございます!




