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エイドリアンは意外と良い人!

「アルトリリーおねえさま!」


マラカイト侯爵邸に到着してお父様の手を取り馬車から下りると、ピンク色の塊の突撃を受けました。しかし、筋トレをしていますので、ここで倒れる私ではありません。


「ふふ、ごきげんよう。アリアーデ様」


いやぁ、可愛い。燃えるような赤毛にピンク色のドレスを着た美少女は私の腰に抱きついたまま頬を膨らませます。マラカイト侯爵家の末っ子アリアーデ様。5歳です。


「アリアとよんでくださいといっておりますのに、おねえさま」


いやぁほんと可愛いですねぇ。可愛さを堪能していると、伸びてきた手にアリアを引きはがされました。


「アルトリリー嬢、今日もあなたは美しい」


「お兄様! おろして!」


うわぁ気持ち悪いと思いながらも、顔に出さず挨拶をします。お父様が横で笑いをこらえていますわ。

挨拶してきた長男アーネスト様にアリアは荷物の様に脇に抱えられてジタバタしています。

アーネスト様はアリアを小脇に抱えたまま器用にひざまずくと私の手の甲にキスを落としました。うん、これ会うたび毎回なんですけど、そろそろやめません? 寒気がしてきました。


そうしていたら次は反対の手を別の誰かに取られます。


「相変わらず月の女神のように美しい」


うわぁ吐きそう。砂を吐くようなセリフを言っているのは次男エルネスト様。別名:騎士団の女たらし。アーネスト様は女遊びはしていないそうですが、この人はすごいそうです。

そもそも月の女神を見たことあるんですかね? 同じようにひざまずいてキスを落としていますが、ほんとにこれ毎回毎回やめません? 引きつった笑顔を浮かべて挨拶していると、3人が押しのけられて侯爵夫人に保護されました。

ちなみに三男エイドリアンは2人の兄の様子を呆れ切った顔で見ています。それが普通の反応だと思います。しかし、見事な赤毛が4人そろっていると壮観です。


「アルトリリーちゃん、よく来たわね! さぁバカ息子たちは放っておいてお茶しましょう!」


侯爵夫人アリシア様はお父様と同じで黒髪です。黒髪より赤毛って遺伝で勝つんですね……。


そしてアリシア様に引きずられ、お庭でお茶会です。アリシア様はあっさりとしておおらかな方です。娘のように良くしていただいております。息子を婿にどうか勧めてくる以外は大変良い人です。4人産んだとは信じられないスタイルの良さ。やはり毎日剣の稽古をされているからでしょうか。アリシア様はお強いんですよ。しっとりとした黒髪、垂れ目気味の優し気な目の下にはセクシーなほくろ。

エルネスト様とエイドリアンはこのセクシーなほくろをしっかりと受け継いでいます。性格はほぼ真逆ですが。


お茶会にはアリアも一緒です。ちょこんと座ってお菓子を凝視しているのがまた可愛い。男性陣は男性陣のお話があるようで別行動です。あ、侯爵様に挨拶できてない。確かアリシア様の後ろにいらっしゃったのに。引きずられてそのままでした。しまった、マナー違反ですね。アリシア様には旦那のことは放っておけと言われてしまいましたが。


「もう! うちのバカ息子達は! もうちょっと誉め言葉と口説き方を勉強させないと! 毎回毎回似通った感じなんだから!」


怒るところはそこなんでしょうか……。そもそも口説き方ってどこで習うのでしょう?


「でも、うちには息子が3人いるから、好きなのを取ってくれていいのよ? どれかタイプいない? アルトリリーちゃんがうちの娘になってくれるなら嬉しいわ! 大歓迎!」


「いえ、結構です……」


取っていくって、石ころか何かみたいですね。


「うーん、うちの息子達は、中身は置いといて見た目は悪くないと思うんだけど……アーネストが口説くのはアルトリリーちゃんだけよ? あの子、優秀だし将来は侯爵だし。なんなら婿入りもオッケーだし。優良物件だと思うんだけど。でも美しいとしか褒める語彙力がない男は飽きられるわね。あの歳になっても婚約者決まってないのはちょっとね」


いや、そんな情報いらないです。それに中身も大事です。アリシア様は息子を上げてるのか下げてるのか……。


「エルネストは女遊びはすごいけど妊娠させるようなヘマはしてないわよ。近衛騎士の中でも実力は上から数えた方が早いくらい。最近では王子殿下の婚約者候補のご令嬢達に護身術や剣術を教え始めたみたい。そういえばレヴィアス公爵家のご令嬢に話しかけられたとか言っていたわ」


いやいや、あんなのと結婚したら女性に恨まれてブスリと刺されそうです。

イザベラ様、もしかしてエイドリアンとお近づきになりたくて護身術を提案したわけじゃないですよね? 兄であるエルネスト様もさすがに公爵令嬢で、王子の婚約者候補に手は出さないだろうけど……。


「でもやっぱり年の一番近いエイドリアンかしら? アルトリリーちゃんはエイドリアンと仲がいいものね? 一緒に木登りするくらいだもの。あの子はむやみに女性を口説かないし、面白みはないけど誠実ね」


いや、エイドリアンとか……イザベラ様に呪われそう。一緒に木登りをしてるってわけじゃないですよ。私が木に登ってたらエイドリアンがお小言を言うだけです。私が言うことを聞かないので、エイドリアンも最終的に木に登ってくるだけです。断じて一緒に登ったわけではありません。


「おねえさまが本当のおねえさまになってくれたらうれしい」


頬を染めてそう言うアリアは可愛いけれども。超可愛いけれども。私も妹欲しいけど……。やっぱりあの3人はないですわ。ただの幼馴染のようなものですもの。政略結婚が普通なのにお父様は好きな人と結婚しなさいと言って下さっているし、まぁこの人でいいか、という妥協で結婚相手を決めてはお父様に失礼ですもの。

お父様はお母様に初めて会ったときにこの人と結婚する! と分かったそうですわ。私にもそういう方がいらっしゃると良いのですけれど。


「ねぇ、アルトリリーちゃん。試しにお義母さまって呼んでみて? ね? ね?」


いやいやいや無理無理無理。そんなことを言ってしまったら絶対マズイ。3人の内どれか押し付けられる。アリア、そんなキラキラした目で見ないで!


「アルトリリー。カスクート公爵が呼んでる」


「お父様が? 何でしょう? 少し失礼いたします」


いつの間にかエイドリアンが庭までやってきて少し距離があるところから私を呼んでいます。侯爵様に挨拶もできていませんし、ちょうどいいですね。むしろ助かった! お義母さまなんてさすがに呼べないです。そそくさとエイドリアンのところに向かいます。


「お父様はなんと?」


「あぁそれは嘘だ。どうせお前が母上から、うちの息子をぜひ婿にって言われてるだろうから助けようと思って来ただけだ。カスクート公爵の名前を借りる許可は取ってある」


「そうなの。ありがとう。助かったわ」


「今日お前が来る前から母上が意気込んでたからな。お前にまだ婚約者がいないからだろう。学園に入ったら出会いが増えるから母上も焦っているのかもな」


おおぉ、エイドリアン、あなた良い人! そういえばこうやってエイドリアンはちょこちょこ助けてくれるんですよね。イザベラ様、見る目ありますね!

そういえばそうですね、学園で婚約者を見つけるという手がありますね。


「その格好なら今日も木登りするんだろ?」


「もちろんよ」


「頼むから学園ではするなよ」


エイドリアンは私が木登りをするのを止めるのは、とうとう諦めたようです。



読んで頂いてありがとうございます!

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