不思議なお茶会 続きます!!
「「………………」」
私もティアもこの展開を予想していませんでした。お互いに無言です。
というか私達に婚約者はおりませんので婚約破棄はできません。
イザベラ様は何を勘違いされていらっしゃるのでしょうか?
「……申し訳ありませんが私達はまだ婚約者はおりませんので……出来かねます……。お力になれず……」
「あっ、違うの!と、とにかく婚約破棄を!」
えっと……意味が分かりません。
イザベラ様大丈夫でしょうか。珍しくアワアワしながら婚約破棄を!と言い続けています。
切羽詰まっているようですがこれ以上変なことを言われては困りますわ。
ポカンとしているティアの手を取ります。
「お力にはなれないようですので。お菓子とても美味しかったですわ。それではまた!ごきげんよう!」
「ま、待って!っっシシィ!引き留めて!」
「お嬢様、今のはお嬢様が悪いですよ」
げっ、帰ろうとしたら夜会の時のメイドさんが行く手を阻むように出てきました。
あの時は良く見ていませんでしたが、明らかにベテランの香りがします。
「お嬢様は少し混乱していらっしゃるので……きちんとお話しますのでもう少しお時間を頂けないでしょうか?」
すんごい綺麗な直角お辞儀をされてしまいました。ティアもそのお辞儀をほぉと感心したように見ています。
「……わかるようにご説明をお願いいたします」
シシィと呼ばれたメイドさんはその言葉に頷くと、紅茶のおかわりを持ってきてくれました。
仕方なく2人で再び席に着くと、イザベラ様は涙目です。
勝気そうな令嬢の涙目ってけっこう……キますね。良いです。さっきのことは許しましょう。
「取り乱してしまって申し訳ありません……あの……私が殿下の婚約者候補筆頭というのは……ご存知?」
コクコク頷きます。そのくらいは私でも知っています。第1王子ですね。
「お父様から夜会の日にアイザック様との婚約は確定と言われたの。本当はあの場で発表される予定だったんだけど、なんとか説得して婚約確定も発表も延期にしてもらったの……」
「アイザック様??」
「さぁ、どなたのお名前かしら?」
「殿下のお名前よ!知らないの!?」
ティアと誰だっけ?えへ、と笑っていたら叱られました。だって第1王子とか王子とか殿下としか呼ばないし。そうそう、カッコイイお名前でしたね。アイザック王子。
「婚約オメデトウゴザイマス」
「オメデトウゴザイマス」
もっと大げさに祝わないといけないですかね?
「違うわよ!嫌なのよ!婚約破棄って言ったでしょ!?」
そういえばそうでした。
はてはて、何が嫌なんでしょうか?だって腐っても王族ですよ?あ、腐ったら死んでいますよね。
「アイザック様との婚約が嫌なのよ!嫌よ!あんな鉄仮面なんて!」
「お嬢様、落ち着いてください」
取り乱したイザベラ様をシシィさんが慰めます。さりげな~く不敬な発言が聞こえました。
イザベラ様ってけっこう子供っぽいですね。大丈夫でしょうか?
「へぇー、嫌なんですか」
「へぇー、それはそれは」
ティアも飽きてきたようで生返事をしながら紅茶をずずっと飲んでいます!ティア!音は立てちゃダメ!
「もうちょっと反応してよ!」
「いや、だって殿下ってそんなにお会いしたことないですし。顔覚えてませんし」
「どんな方か知らないのに、ねぇ?鉄仮面?って何?」
「うちの夜会で会ったでしょ!」
はて、夜会で会いましたでしょうか。
殿下がいたら皆群がっていくので。特に女性が…………絶対いませんでしたよね。
「いたわよ!」
「お嬢様、あの日はお忍びでいらっしゃったので変装をしておられましたよ。殿下は夜会やお茶会でも最初だけですぐお帰りになられるので、お顔が分からなくても無理はないです。お嬢様のように小さい頃から頻繁に会われているわけではないのですから」
シシィさんナイスフォローです。ただ単に私は殿下に興味がなく、ティアは夜会に行く余裕(主にドレスを新調するお金)がなかっただけなのですが。
「……そうね。夜会の廊下で会ったでしょう?あの時に最初にあなた方に声をかけたのが殿下ですわ」
夜会。廊下。声をかけた?
「もしかしてあの黒髪の……?」
あのずっと眉間にシワよせてた人?途中から空気だった?
「えぇ、髪は黒く染めていらっしゃったわ」
「へぇー」
「へぇー、あれが殿下だったんですか」
あの不機嫌な黒髪の方ですか。道理で綺麗な顔なわけです。
王族は皆、金髪のはずだから彼が王族だなんて思いもしませんでした。
「とにかく……私は絶対、殿下とは結婚したくないのです。あんな何考えてるか分からないような男はご免ですわ。だから……あなた方に私の婚約破棄を手伝っていただきたいの」
「「ほぁ?」」
お読みいただきありがとうございます!
ブックマークもありがとうございます!