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もしも人間が魔王になったら 改稿前  作者: キバごん
女王救済編(16/05/21 〜 16/06/20)
7/17

しがみつく

「……」


バルバロッサは自室で、椅子に座り、微動だにせずーーー

窓の外を見ていた。


そこには城の門が見えーーー

その先に、時間が過ぎるとともに見えてくる軍団を待っていた。


何も恨みはしない。

絶望などしない。


自分は今、何かを思うことは許されない。


ただ一つ、あるとすればーーー



相手が、約束を守ってくれるようにーーーー


それだけだ。



ーーーーーーーーーー


先ほどから騒いでいた悪魔たちに、

時間が経つほど暗さが足されていく。


海斗は大部屋にある席から、その過程を見ていた。


「…」


何故、そんな表情になっていくのか。

それなのに何故、総動員で準備をしているのかーーーーーー


思案の渦が頭を支配した。



ーーーーーーーーーー



「姫様は…?」

ラーファが尋ねていた。


相手はアイナだった。


「自室にいらっしゃいます…」


「そう…なの…」



「しかし、、ラーファ様…」

「わかっているわ…」


「いまさら行ったって…」

「言葉が出てきませんもの…」



誰も、何も、できないーーーー


そのことが、どれほど苦しいかーー

今、一番理解することになっている。



ーーーーーーーーーー



街は静まりーーーー

外に出ている者はいない。


この静けさは間違いなく、国のものではなくーーーーー


何も文明が築かれていない土地のそれだ。


一国の主がここを去るーーーーー

そのたった一つの出来事で、街が息をしなくなる。


空も大地も、それに同情しているのかーー


空気の流れる音もなかった。




ーーーーーーーーーー



そんな最中ーーーー


「………」


「ーーー!」


ーーー姫の目に、何かが映った


10kmは離れているだろうか。



黒い塊が、こちらに近づいていた。



ーーーーー



海斗は思い悩んでいた。

今にも何かが起きる。


悪魔全員を悲観させる事、、、

それが何なのかーーーー



すると。

「ーー!…?」


漫画で見たことがある、騎士や魔法使いのような人たちが

全員ある方向へと移動し始めた。


こんな人数が今までどこにいたのか。



「本当に…」


「何が起きるんだ…」


知りたいーーそれだけが胸にあった。



ーーーーー



海斗が見た悪魔ーーー城の守護者たちは、門の前に立ち、上部に登り、軍団を睥睨していた。


それが、自分たちに唯一できる抵抗だったからだ。


しかし、それは、相手にとって歓迎以外のなにものでもなかった。


その軍団は、この国に着こうとしていた。



ーーーーーーー


ーーーー


とうとう、全員が恨む塊が門の前までたどり着いた。


到着早々、軍団の中心人物が口を開く。


「おぉ…!私たちを迎え入れてくれるというのか!」

「素晴らしい、、!祝ってくれるのだな、、」


「こんなに美しい国の女王を妻に迎えることができるとは……私は幸せ者だ!」


悪魔たちを見るや否や、勝手な妄言を口にした。




アイナは門の直上に、無表情で立っていた。

見るだけ、聞くだけしかできないーーーーー


歯痒かった。



ーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーー


ーーーーー



「…到着しましたか……」


バルバロッサは今まで一番暗い声を発した。


「、、、行かなくては、なりませんね…」


言い終わった5秒後ーーー身を立たせる。




あの人が私を待っているーーーー


皆が私を待っているーーーー


私が向かうことで、、皆が、国が、全てが救われる。


それができることを、悦ばしいと思わなければならない。

私一人しかできないのだからーーー






ーーガチャーーーー


「あ、いた」


「…え……」


「やっと探し当てた…」




自室に人間が入ってきた。


己が、自国の魔王になってほしいと願った人物が、そこにいた。


最後に、心を固め、もどさないようしようとした時にーーーー


「…何の用ですか…」

当然そう聞くだろう。


その問いに対しーーーー

「これから何が起きる」

問いを答えとして持ってきた。


海斗は敬語をやめ、普段通りの話し方をする。

徹底的に情報を絞り出してやろうとしたからだ。


「…貴方には、関係のないことです」

しかしそう簡単に話してはくれない。


それは海斗自身も予想できた。


「特別なことらしいじゃねえか」


「、、はい、とてもーーーー特別なことです…」


「それを教えてくれよ」


「だから、、、貴方には関係の」

「知る権利くらいあるだろう」


このままだったら同じことの繰り返しーーー

それを切るために自分のペースに持ち込んでいく。


「…まさか、、外に見えるやつらと関係あるのか?」


奴らは遠くからでも見えるほど数が多かった。

おそらくこの国の人口以上だろう。


「……そうです…関係していますよ…」


「その内容が知りたい」


「…………」


ついに黙り込んでしまった。


だが、海斗が欲しいのはその反応じゃない。


「言ってくれ、、知りたいんだ」




海斗の追求に折れ、とうとうーーーー



「……私は…」

「あの軍団の主…魔王と結婚するんです…」


やっと言ってくれた。

やっと聞くことができた。



「それが、嫌なんだな…?」


「……」

それについては、何も言葉を発さず、首も降ってはくれなかった。


「……断る事はできないのか…?」


「…契約しましたので」


「契約…?」


「はい、契約です…貴方の世界にもあるでしょう?」


婚約したっていうことかーーーーー


「……契約でも、、破棄したりできるだろ」


こっちの世界でも、婚約破棄はよく聞くことだ。


しかしーーーーー


「…それはできないんです…」

静かに首を横に振る。


「契約というものは、悪魔にとっては最上級の事象…破る事は許されません…」

「もし、破る事があったら…」


「…周りの国から、、袋叩きにされるでしょう……」


どうやらこの世界での契約はどんな形のものであれ、破棄できないらしい。


「それに…」



「結婚をしなかったら…この国を滅ぼすと言われました…」






ああーーーーなんだよーーーー






「やっぱり嫌なんじゃねえか、結婚するの」


「……」


今までの空気をぶった切るようにーーーー

その言葉は発せられた。



それに対しバルバロッサは、何も反論することができなかった。


「自分のことぐらいはっきり言いやがれ」

「最初あんなに暗かったのは、結婚するのが嫌だったからだろう」


「で、その時間がもうそこまで来てるってこった」


目線の先の女性は黙ったままだ。


「図星なんじゃねえか」


「……違い、、ます…」

「これは…私が、、、他ではない、この私が…」


「…進んで…行うんです」

ぎこちなく、苦しそうに言った。


「じゃああんた、そんな格好で行くのか?」


「女王と魔王が結婚するんだ、当然式は行われるはず」

「みたところ、ワンピース一枚しか着ていないようだが?」


そう、バルバロッサは今、服一枚しか身にまとっていないのだ。

とてもこれから結婚をする女王の姿ではない。


海斗はそれを見て、少なからず女王の本心を悟っていた。


「…これは……むこうで、、着替えるんです…」


「嘘つけ、さっきドレスを見たぞ」


「……」


その通りだ。

海斗は純白のドレスを目にした。


それこそ、特別な日に着るのにふさわしいものであった。


「嫌なんだろう、したくないからこそ、この時間になっても着ていない」

「そうだろ」



相手は黙ったままだった。


しかしーーーーーー






「仕方のないことなんです!!」


今までとは別人のように声を荒げる。

だがそれには、心の内にある何かが混ざっているようだったーーーーー


「私が犠牲になることで!!この国が!国民が救われる!」


涙が流れ始めるーーー


「…そうしなければ…!!国は無くなります!」

「奇跡的に誰かが生き残ったとしても…!確実にまともな道は歩めなくなる…!」


「それは、、それは絶対にあってはならない…!」


自分の事ではなく、他人を優先的に考えるーーーーー

本当に優しい人なんだろう。


「相手が約束を守ってくれるとは限らないだろう」


「それでも……信じるしかありません…!」


その一言でどれだけ追い詰められているのかが窺える。


ならばーーーーーーー



「ききてえんだが、その契約っていうのは、、悪魔は破棄できないし、邪魔することもできないんだな?」



今の会話で生まれた疑問を投げかける。



「ーーそうですが…」


「じゃあ、人間の俺がーーー」

「割り込んで破棄させるのはーーー?」



「!!ーーーー何を言っているのですか…!相手は悪魔なんです!人間のあなたに何ができるのですか!」


ラーファを助けるために悪魔二人を撃退したという事は、その事を聞いたアイナから伝えられた。

ただし、今回の相手は違いすぎる。

人間一人には無理がありすぎる。



「でも、それしか方法がない」

「あんたを救うには、それしかない」


「…」


バルバロッサは複雑だった。


腹をきめたはずだったのにーーーーー

もうーーー希望は捨てたはずなのにーーーー


無理やりまた、持たされてしまう。



「二度と、関係ないなんて言わせねえぞ」


「…もう、、やめてください…」


「なんで、そこまでして自分一人で背負おうとする」


見えているのに。

わかっているはずなのに。

頑なに否定する女王ーーーー



だからこそ、背中を押さなければならないーーーーーー

しっかりとした言葉で。








「あのな、結果なんてどうでもいい」

「やって苦しい方を選ぼうとするな」






「どちらが楽しいか、それで選べ」

























「たす……けて……」





運命の分岐までーーあと 時間ーー



















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