人のコミュニケーションは大切に
この国の主の部屋ーーーーーー
暗く、時間が進むと同時にそれは深くなっていく。
しかし、明かりをつけようとはしない。
それは外の街も同じであった。
国は今ーーー無音の土地と化していた。
ーーーーーーーーーーー
「……姫…」
「……」
「……あと、、わずかです…」
「…本当ですね、、」
二人の会話には4時間前と同じように、血が通っていなかった。
生者が話しているとは思えないほどだ。
「…悪いけど…アイナ……」
「時間が来るまで、、一人にさせてもらえるかしら…」
「……」
はい、と言いたくなかった
だが、相手の事を考えると、そう言わなければならないと体が反射的にーーーーー
「…はい、、姫の仰せのままに…」
姫を最後まで守ると誓った騎士は、言う通りに部屋から出る。
それはもちろん、姫のことを想ってこそーーー
しかし、それ以上に、姫からの、一番大切な人からの
最後の願いだったからだ。
ーーガチャーーーーーーーバタンーーーーー
後頭部を扉につけーーーー
腕を脱力させ
体に重力以上の何かが覆い
臓器が下にもってかれ
それらを細い足二本で支えるーーーー
「ーーーッ…!ーーー!ーーーーッぁ…あーーー」
涙が流れるーーーーー
絶対に流さないと決めた涙が、己の肌を濡らしていく。
せめてーーーーせめて声だけは出すまいと、必死になって声帯を首の筋肉で圧し潰す。
今まで築き上げたものが全て沈むーーーー
それを見届けることしかできなかった。
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海斗が人を求め、城内をウロウロしているーーーと
「ん…?」
向こうから5、6人の女性が走ってくる。
「ぉ…これは好機、、!帰り方が聞ける!」
「すいませーん!」
彼女たちは止まらず、海斗の横を通り過ぎていったーーー
「ーーーーあれ〜……?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「何かあんのかな…」
あの後からも慌ただしく移動する、多くの悪魔たちを目撃することができた。
この城に来た時とはまるで正反対。
足音が止まなかった。
「こりゃ聞き出せる余裕ないな…」
「…とりあえず、、戻るか、、」
ただただ歩き回るだけで終わったーーー
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料理を食べた大部屋に戻ると
多くの悪魔たちが話し合いをしていた。
とても近づける雰囲気じゃなかった。
「……」
同時に、何かがもうすぐ起ころうとしているーーーー
頭が足りない自分でも、そう察することができた。
「だけどなぁ…」
「…聞けないしなぁ…」
悪魔たちの顔は真剣そのものーーーー
とても「何かあるんですか?」とは言いにくい。
「違う人さがそ…」
「あぁ…みんなこんな感じか…」
「まいったなぁ…」
今まで目撃した悪魔たちを思い返す。
あんだけの数の悪魔が騒いでいるのだ。
みんな暇なわけがないーーーーーー
「…しゃあねぇ…それが終わるまで待と……」
なんだか祭りのような感じもするしなーーー
不安を薄めるために、そう自分に言い聞かせた。
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「……あれ、、?」
「俺の木刀は…?」
気づけばどこかにいってしまっていた。
「あるぇ…」
「でっで、でででも!行った場所は限られる!」
「この大部屋と…あのドレスがあった部屋…!」
そう、この男、かなり歩き回ったのにたった二つの部屋しか入っていなかったのだーーーーー
時間を無駄にしたことは言うまでもない
「俺のいた席〜…」
そこには悪魔たちが集まるところになっていた。
どうにか遠くから首を少し伸ばしたり
たまにできる隙間から見たりしてみたがーーーー
「ないな…こりゃ…」
席の周りにはなかった。
次にドレスの部屋に行こうとする、、が。
考えてみたらそこの部屋に多くの時間を過ごしたかと言われればーーーーーー
そんなことはない
すぐに出たはずだし、木刀を落とした音もしなかったーーー
そこにあるはずもない。
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ーーーーーーー
と、わかっていても確認してしまうのがこの男である。
「…ないね…」
あるのは綺麗なドレスだけ。
「…お邪魔しました…」
ーーーーーーー
「どこ行ったの俺の木刀…」
行き場を失ったようにさまよう海斗。
木刀はどこに消えたのかーーーーー
ーーーーーーーーーーー
「海斗さんまたお会いしましたね〜」
「あ、本当ですね」
さまよううちにエレイナさんとあった。
「もしかして、、何かお探しですかぁ…?」
「…はい、、木刀をなくしてしまいまして…」
あった数秒で見破られてしまった…
そんなに落ち込みムードが放出されていたのかーーーー
「、、もしかして、これですか…?」
「えっ」
エレイナさんの両手には、探している木刀が握られていた。
「ど、どこでこれを…!?」
「海斗さんが食事を取られていた部屋に…」
「見つけた時にはもうどこかに移動しておられたので…」
「あぁ…ありがとうございます…」
木刀を受け取るーーーー
本当に感謝感激雨あられ。
やはり悪魔の方は優しい。
惚れる。
また探し回っていた時間が無駄にーーー同じことを繰り返すんですねこの男
そうだ、これから何があるのか聞けるんじゃないのかーー?
エレイナさんはあまり忙しくなさそうだし…
そう思った海斗はエレイナにーーーーーー
「これから、何かあるんですか?」
「みなさん忙しそうですし…」
聞かなければよかった
その一言で、、、
「……」
そんなに暗い顔をされるなんてーーーーーー
「!ーー……」
すぐに聞いてはならないことだと理解した。
最初にバルバロッサさんと会った時よりも暗い顔をしたからだ。
「す、すいません、やっぱ何でもないです…」
話をなかったことにしようとするがーーーー
「…これから、、この国にとって、、、特別なことが、起きるんです…」
とても苦しそうな顔で話してくれた。
「特別なこと…」
最初にラーファも同じことを言っていた。
特別と言っても、それが良いものなのかーーー
内容は知らないが、そうは思えなかった。
「…話してくださり、ありがとうございます」
「…あと、木刀も、、ありがとうございます…」
「、、では…」
とてもじゃないが、この場にはいられなかった。
重く、暗く、、誰も得をしない空気がそこにあったからだ。
エレイナは、海斗が見えなくなるのを確認するとーーーー
ーーー大粒の涙を流したーーーーーー
運命の分岐までーーあと1時間ーー