他愛ない話がどうしようもなく楽しかったりする
この国は、門から城の扉まで大通りが一直線に伸びているーーーー
海斗は今、そこにいた。
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二時間前ーーーーーー
まだ海斗はベッドで横になっていた
その横で
「魔王様になるのなら、式を開かなければなりませんね!」
バルバロッサは嬉しそうにはしゃいでいた。
「式?」
式があるのか…
「はい、戴冠式ですね」
「早速魔王様専用の服を作らせますので!」
「ちょっと失礼します〜!」
バッ!!
バルは海斗にかけられた布団をめくり、どこからともなくメジャーを取り出した。
「えちょっ」
恥ずかしがって身を縮こまらそうとするが、疲れで体が動かない。
包帯とトランクス1枚しか体を覆うものがない海斗ーーーー
ーーーーバルと他悪魔三人に見られる、、、恥ずかしい。
「ふむふむなるほどー、、だいたいわかりました!」
「早速魔王様の服をお作りしてきます!」
そう言い終わった瞬間部屋を飛び出していった。
「台風だなあいつ、、、」
「…いつもだったらあんな感じだったんですか…?」
「はい、、あのような感じです」
「魔王様」
「せめて式が終わってから呼んでください」
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それから半時間で怪我が治ったーーー
ーーーどうやら治癒魔力を大量に送ってくれたらしい。
で、体に異常がないか〜などを調べてくれているとバルが服を持ってきた。
黒をベースに、縁を赤にしてくれていた。
デザイン的には好みだが、聞くにこの服、一時間で作らせたという。
非常に申し訳ない。
それを試着してから一時間経ち
今に至るーーーーーー
道の中央を歩き、両側にたくさんの悪魔たちが並んでいる。
『ひたすら歩いているだけでいいですよ!魔王に就任しましたってみんなに知らせるだけですから」
と言われたが、どんな表情をしていればいいのかわからないーーーーー
少し汗が出てくる。
本当にやっていけるんだろうか…
不安だ。
それだけが頭を走っていたーーーーーー
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「あぁ〜終わったああああ……」
先ほど式が終わり、この先魔王室となる部屋の椅子にどかっと座っていた。
「ーーーーこれから何が待っているのか…」
「……まあ、国民全員女性というのはいいな!」
「眼福眼福…ストレスで体が崩壊しそうになったら街に繰り出そう、、」
まさしく変態が考えそうなことを口に出していると
ーーーーコンコンーー
扉がノックされる。
「お、、はいよ〜」
返事をして入ってきたのはーーー
ガチャーーーーー
「やぁ魔王、疲れてないか」
アイナだった。
「アイナさん、、元気そうに見えます…?」
「今にも死にそうに見える」
「ほんとかよ、衝撃の事実だよそれ」
詮無い話をする二人。
だがアイナにとっては喜ばしいことだ。
「どうだった?式のご感想は」
「……少なくとも楽しくはなかったな、式だから当然のことではあるだろうが、、」
「でも綺麗な女性ばっかりだったからそれは良かったかな」
落ち着いた声でそう言った。
「そうか、それは良かった」
アイナは呆れた笑顔で返した。
決して嫌そうではないが。
「これからはその美人で凶暴な悪魔と付き合っていかなくてはならんがな」
「え、、凶暴なの…」
「当然、、君の知ってる名前もいると思うぞ」
「例えば?」
「サタン、ベルフェゴール、アスモデウス、リリス、etc〜」
めちゃくちゃ有名な悪魔だ。
「あぁ〜…胃が破裂する〜…」
「名前を聞くだけで痛みを通り越すとは、そっちの世界でもかなり悪名高いようだ」
「そりゃあ悪魔といったらそいつらだからな」
その悪魔たちと国づくりを……そうか優しい悪魔でありますように…
そう心で呟いた。
すると
「では私はもう出よう」
「じゃあな、頑張ってくれ、、魔王様?」
扉を開き体を半分出して、面白がるように言ってきた。
「やめてくれその呼び方、、、海斗でいい」
どうもむずかゆくなる。
「そうか、では私からも」
「?」
「さん、はいらん、アイナでいい」
そう言うと扉を閉め、出ていった。
「わかったよ……アイナ…」
目を閉じ、力を抜くように、呼んだーーーーー
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部屋でダラダラしているだけではダメだと思い、城内をうろつく海斗ーーーー
内心少しだけ、新しい出会いがないか期待していた。
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『やぁお嬢さん、どこに行くのですか?』
『、、あ、、魔王様…いえ、特別目的はありません』
『…魔王様、先ほどの式でのお姿、、、見惚れてしまうほど、凛々しいものでした…』
『本当ですか、、嬉しいな、そんなことを思ってくれるなんて…』
『…ここであったのも何か縁です、一緒に歩きませんか⤴︎?』
『!ーー嬉しいです、こんな私に構ってくれるなんて…』
『自分を卑下しないでください、、美しい女性よ…では行きまsy…ッ!』
ドッシーーーン!!!
『くっ…!』
『あんっ…!』
『……『あん』……?』
モニュンーーー
『いきなり胸だなんて…』
『も、申し訳ない!、、綺麗な胸を汚してしまうなんて…』
『いえ……今ので完璧に惚れてしまいました…』
『どうぞ、、、、もっとあなたの手で、私を汚してくださいまし…』
ーーーーーー
げへへ
無いとは思うけど妄想するのは自由だからね。
少しニヤつきながら歩いているとーーーーー
「海斗さん!!」
「ーーー!!!」
ビクゥッ!
気づけばラーファが前からやってきていた。
「魔王になってくれたんですね…」
「あ、あぁ…そうだよ、魔王になったよ〜…」
「?」
海斗の言い方に少し疑問を持つラーファ。
いかん、いかんぞ、、、
平常心、平常心。
「えへへ…じゃあサタンさんと海斗さんと三人で遊べるんですね!」
「遠慮したいです」
「?」
「いや、、そうだなぁー、楽しみだな〜」
「はい!楽しみです〜」
本音が口から出ていった、、
本人にはよく聞こえてなかったみたいだが、、あぶねぇ…
「あと、、さっき笑ってましたけど、何かいいことがあったのですか?」
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「男のたしなみだ、気にしないでくれ」
「ーーー?、、は、はい」
これで海斗の魔王生活1日目が終わったーーーー
バルに人間界へと送ってもらい、ひとまず安心。
魔界へ迷い込んだ時は昼だったので、親には遊び行っていたと、ごまかすことができた。
疲れた海斗はいつもより早く床についたーーーーー