97話 結末
気付いたら100部分になっていました!自分自身でもこんなに続けられるとは驚きです。
いつもありがとうございます。
このまま100話、その先も続けられるように楽しんで書き続けたいので、これからもよろしくお願い致します。
ルイスの笑みに、私も笑みを浮かべて返した。正直、身体はいつもの数倍重く感じていたし、先ほどから頭を引き裂くような頭痛が鳴り止まなかった。サクヤの言うとおり、力を使いすぎたのであろう。
ルイスもそれを感じ取っていたのだろう。ルイスが選んだのは接近戦であった。剣を抜くと、素早い動きで、こちらへと斬りかかってきた。私も、ルイスの攻撃をなんとか防いだが、大分神通力の力も落ちていた。いつもよりも、敵の動きが読みづらい。
「大分消耗しているようだな」
「だからなに?」
私はルイスに冷たく聞き返した。今更消耗してようがしてまいが、関係ない。ちらっとアマツの方に目線を送ると、アマツはこちらに笑顔を向けていた。
――助けようか?
――いらない、わたしがやる
「戦いの最中に、余裕だな」
ルイスの鋭い斬撃が次々と私へと襲いかかってきた。冷静に一つ一つの攻撃を防いでいったが、さらにルイスの攻撃は激しさを増していった。
「どうだ!そろそろお前の体力も限界であろう!楽になるがいい!」
ルイスは確かに手応えを感じていた。同時に、恐ろしさも感じていた。策をいくつも巡らせて、兵士達の命も犠牲にして、やっと目の前にいる憎いモンスターの首筋まで剣が届きそうであったからだ。だが、ここまでしても、未だ仕留め切れてはいない。
それほどまでに実力差がある。すなわち、人間にとっての脅威でもあると言うことだ。だからこそ、今皆で作り出した討ち取るチャンスを逃すわけにはいかない。
渾身の想いを込めて、ルイスは目の前の九尾に剣を振るい続けた。
だが、彼の攻撃は、決して九尾に届くことはなかった。追い詰めているのは確かである。後一押し、一押しさえあれば、剣先が九尾の喉元へと届くはず。
そして、次第に希望は焦りへと変わっていった。何故、届かない。目の前の九尾はもう、満身創痍であるのは明らかである。だが、それでも剣は届かない。何故?
先ほどまで追い詰めていたのは確かである。しかし、剣を振れば振るほどに、目の前の九尾がだんだんと遠ざかっていく感覚にルイスは襲われていた。
ここまでしても、足りないというのか?
そして、ルイスは一つの選択をしたのである。これ以上、接近戦では埒があかない。だとすれば、頼れるのは銃である。人間の技術の詰まった武器。彼は剣撃から、銃撃に切り替えようとしたのだ。
その一瞬の隙。それを私は見逃さなかった。
距離をとろうとして、ルイスは少し下がったのだ。その動きに合わせて、カウンターのように龍神の剣を振った。
金属音と共に、ルイスの腕がその身体を離れ、床へと落ちた。ルイスは、腕の切断面からしたたり落ちる血を、もう一方の腕で食い止めながら、こちらの方に向けて言葉を発した。
「負ける?私が負けるだと……?この国も終わりか……」
「終わりじゃない!」
ぼろぼろになったノアが、立ち上がってルイスに向けて叫んだ。
「私とイーナ殿達で新しい時代を築いていくさ。皆が手を取り合って生きていける国を」
「モンスターと人間が共生なんて出来るわけがないだろう。お前までこの女狐にだまされているのか」
ルイスはぼたぼたと血を流しながら、ゆっくりとふらついた足取りで外に向けて歩みを進めた。
「これだけの兵士を犠牲にして、何が平和だ。何が理想だ。お前は最初からなにも見えていなかったんだ」
ノアの言葉に、ルイスは笑みを浮かべ、こちらを見ることはせず一心に歩みを続けた。
「国を守って死ぬことの何が悪い。どちらが正しかったかは、いずれわかるだろう。この国は終わりだ。私は一足先に黄泉の国から、この国の末路を見送ろうじゃないか」
ルイスは手に持っていた剣を自らの首元に当てると、ノアに不敵な笑みを送り、そのまま一気に自らを突き刺した。鈍い音と共に、小さなうめき声が漏れる。そのまま、ルイスは力なく床へと崩れ落ちていった。
「どこまでも愚かな弟よ……」
床に冷たく横たわるルイスの方を眺めながらノアは静かに呟いた。
「ノアさん……」
「いいんです。やっと終わりました。これからこの国も生まれ変わります。どうか、これからもよろしくお願いします」
ノアは深々と頭を下げたまま、しばらく動かなかった。この国が立ち直るまでにはまだまだ時間はかかるだろう。だが、止まっていた時が確かに動き始めた瞬間でもあった。
そして、緊張の糸がほどけた私も、一気に倦怠感に襲われた。視界がぐるぐると回っている。ふらついて倒れそうになったときに、何かが身体を支えてくれたのを感じた。
「お疲れさま~~イーナ~~やっと終わったね~~」
聞き慣れたアマツの声に、私は一気に安堵に包まれた。
やっと終わったんだ。
そうして、そのまま私の意識はブラックアウトしていった。




