95話 運命の神様
王宮の正面では十数人の兵士が警備を行っていた。だが、このくらいの人数であれば、正面突破も困難ではない。後はどの位の応援が来るかと言うことである。
「よし、イーナ。ここは二手に分けようじゃないか。俺は、出来るだけ広場で敵の目を引きつける。みんなは先に進んでくれ」
シータの提案に、ミズチとシナツも同じく、残ることを進み出た。
「俺達も残る。ここで出来るだけ目立てば良いのだろう」
「ありがたい申し出だが……人出を広場に割きすぎることにならないか?もし、俺を心配しているのなら大丈夫だぞ」
すると、ミズチはフッと笑みを浮かべながら、申し訳なさそうにしているシータに言葉を返した。
「俺達も、脱出手段がなくなるのは困るのでな。流石にリンドヴルム1人で、5人も乗せて飛ぶのは骨が折れるだろう」
「なるほどな。それは確かにそうだ」
ミズチの言葉にシータも笑みを浮かべて、口を開いた。
「そういうことだ、イーナ。アマツとリンドヴルムと、ノアでお前達は先に進むんだ。後で合流しよう」
「わかった、ありがとう。危なくなったらすぐに引いてね。こっちは大丈夫だから」
最初にシータが広間に残ることを提案したときには、私は反対するつもりであった。カムイの街でミドウを1人残して退却した事、そのことが、私の中で未だに、引っかかっていた。だからこそ、ミズチ達が残ってくれると言ったとき、私は少しほっとしたと言うのが正直なところであった。
「敵襲だ!」
ミズチ達が、広場に出て行くと、一気に兵士達が集まってきた。皆の目が、ミズチ達の方へと向いた隙に、私達は一気に王宮の中へと入った。
「一気に王の所まで行こう。逃げられる前に」
「そうですね。ただ、ルイスはおそらく逃げません。あなたや、私を自分の手で葬るつもりで、待ちかまえているでしょう」
ノアは冷静に言い放った。もしそうであれば、私にとっても好都合である。私もルイスとは、決着をつける必要がある。
「それにしても、王宮の中が静かすぎない?」
「外のみんなが、上手く引きつけてくれているのではないのか?」
リンドヴルムは全く気にしていないような素振りで言葉を返した。だが、同じ感想をアマツも抱いていたようである。
「まあ、敵の本拠地だからね~~罠の一つや二つあっても全くおかしくはないよ~~例えば、私達を誘っているとか……ね、ノアさん?」
アマツに突然、台詞を振られたノアは一瞬戸惑った様子で固まった後に、言葉を返した。
「そ、そうですね」
そして、アマツは再び、いつものつかみ所の無いような様子で、私に話題をふってきた。
「まあ、どちらにしても、イーナなら多少の罠があろうと大丈夫だよ~~」
「そうだといいんだけどね」
私はなんとか笑顔を作って、アマツに言葉を返した。不安が全く無いと言えば、嘘になる。ただ、どんな罠が待ち受けていようと、対処していくだけである。
そして、私達は遂に王宮の奥へとたどり着いた。そういえば、リラさんと戦ったときも、不気味なほど静かな王宮を進んでいった。そして、あのときと同じように、私は、扉の前に立っている。
私はそこで、少しの時間立ち止まっていた。あれから私はリラさんの分も、妖狐のため、そしてモンスター達の為、必死に走り続けてきたつもりだった。モンスターと人間が共生していける世界を作るという、彼女の夢。
「こんな形で、またここで戦うことになるなんて……何かの皮肉かな……」
あのときは、私はシャウン王国を守る為に、この場所でリラさんと戦った。だが、今度はシャウン王国と戦う立場で、ここに立っている。もしもこの世界に神様がいるとすれば、たいそう意地悪な運命の神様なのだろう。
「イーナ~~?大丈夫~~?」
アマツが、こちらを心配する表情で、言葉をかけてきた。それに私は慌てて返答をした。
「大丈夫。ちょっと感傷に浸ってただけだよ!さあ行こうか」
そして、私はゆっくりと王の間へと続く扉を開けた。すると、目の前には大量の武器を構えた兵士と、中心にルイスと大臣と思われる人物が見えたのだ。
「ようこそ!我らが王宮へ!そしてさらばだ!」
一斉に銃弾の嵐が私達の方へと飛んできた。だが、そのくらいは私も想定内である。レェーヴ原野でレインと戦ったとき、氷を利用して、銃弾を止める技。私も、九尾の力を使いこなすために必死に修行はした。一度コツを掴めば、数が多かろうと、そこまで難しいものではない。
「ずいぶん大層なもてなしだね」
兵士達は銃撃がきいていないことに、動揺していた様子ではあったが、ルイスは落ち着いた様子で、表情を変えることはなかった。
「流石九尾。まさか、無傷とは恐れ入ったぞ」
「まだ、何か策はある?」
私の言葉に、ルイスは全く動揺した素振りを見せずに、高らかに笑った後、私達の方に向けて言い放った。
「策もなにも、お前達は最初から、私の手のひらの上なのだよ。なあ、ノア兄様!」




