75話 Allied Queen
第2部 完結です!
私が代表!?
思わず、勢いに任せ首を縦に振ってしまったが、どう考えても、私は代表の器ではない。私より、ミドウのほうが交渉事には長けているし、力でも、皆には敵わないだろう。ミドウは、慌てた私を見て笑うと、再び言葉を続けた。
「それはおぬししかおらんだろ。モンスターと人間と共存できる世界を作りたいといったのはおぬしではないか!」
「それはそうだけど!もっとみんなのほうがふさわしいというか……なんというか!ミドウさんの方が交渉とか上手いし!強さで言っても、みんなのほうが強いし……」
私とミドウのやりとりを見て、皆が笑いを浮かべる。そして、ミドウはさらに続けた。
「確かに、交渉ではおぬしよりわしのほうが長けているかも知れない。それに、おぬしはまだまだ神通力を使いこなせていないというのも事実だ。だが、おぬしの理想はモンスターと人が共存できる世界なのだろう。ここに居る皆が、おぬしのその理想に賛同している。ならば、そのどちらの立場も理解しているおぬしがトップに立つと言うのが最適なのではないか?」
ミドウの言葉に私は返す言葉を失った。能力に長ける劣るで話をしていたこと自体が間違いだったのだ。私が決めたことなのだ。私が責任を持たないで、誰が取るというのだ。
「……わかった!代表は私に任せて!」
みんなの目を見ながら、私は力強く答えた。
「もちろん、今のおぬしではまだまだ不安な部分は沢山あるからな!足りないところはみんなで補うさ!それでこそ共存というものだろう!」
そういうと、ミドウは高らかに笑った。
「それで、もう一つのほう、国の名前はどうするんだ?」
ミズチが冷静に問いかけてきた。私に判断をゆだねるかのように。
――そちが代表なのじゃぞ!そちが言わんでどうする?
サクヤが私の背中を後押しするかのように笑いながら言葉を発した。
私は、少し考えた後に思いついた国名を答えたのである。
「レェーヴ連合……」
名前を考える時に真っ先に思いついたのはアーストリア連邦のことであった。昔争い合っていたいくつもの国が、連邦を作ってから急激に成長した。ナーシェの話を思い出したのである。
だからこそ、私達の国も、いろんな種族が手を取り合って助け合える。そんな国にしたい、と言う願いを込めて連合をつけることにした。
――ずいぶん安直じゃな……
ふと周りを見ると、皆、先ほどまでのノリノリな顔から少し真面目な顔に変わっていた。あれ……私やらかした?
「……まあよい、名前は何でもいいだろう!」
ミドウが私をフォローするかのように沈黙を破った。なんか滑ったみたいで辛いから……やめて……
するとサクヤが、私を小馬鹿にするかのようにぽつりと呟いた。
――イーナのネーミングセンスはなかなかのものじゃからの……
そうなのか、やっぱり私のネーミングセンスは絶望的なのか……
「イーナ様!ルカは素敵だと思うよ!」
ルカにまでフォローされると本当に辛い……頼むから、みんな笑ってください。真面目な顔でこっちを見つめるのはやめて!お願いだから!
「国が出来たとして、色々と制度を整えていく必要があるな。何せ、いろんなモンスター達が一緒に暮らしていくとなれば、問題も多々起きよう」
ここで、ミドウが話の流れを変える。ありがとう、ミドウさん。
「じゃあ、私から提案があるんだけど……」
私の発言に皆が私のほうを見る。皆の視線がなんだか辛い。トラウマになりそうであるが、勇気を出して私は話を続けた。
「私の元々住んでいた国では、いくつかの省庁って言う機関があって、それぞれの機関で仕事を分担する制度を取っていたんだ。そんなかんじで、みんなで役割を分担したらどうかな?」
「ほう、具体的にはどんな形だ?何かプランはあるのか?」
ミズチが私の話に興味を示し、問いかけてきた。私は皆に私の思い描いた方法について説明を続けた。
まず、複数の種類のモンスターが暮らしていくと言うことで、方針の決定をする機関が必要になるだろう。これは、各種族の長達で務める。
そして、それぞれの長達に、専門性のある役割を与える。
医療担当 これは私が行う。
軍務担当 戦闘に強い大蛇たち、その長のミズチさんにお願いしたい。
総務担当 外に出がちになるであろう、私やミドウの分も国内のあれこれを任せたい。シナツにお願いする。
外交担当 人間の国と仲良くやっていくために重要だ。もちろんミドウさん。
「どうだろう?漠然とだけど、後は例えば、農業であれば、狒々たちなら植物には強いだろうし、細かな話は追々決めていくとして!」
私の提案に皆が首を縦に振った。ある程度の役割分担も決まった。
「では、そのような形で運営していくとして、異論は無いな?」
ミドウが皆に確認をとった。再び、皆は首を縦に振った。
こうして、私達の国、レェーヴ連合は、モンスターとの国としていまここに成立したのである。
モンスターと人間が共存して、生きていける世界。そんな私の夢へと、また一歩、それも大幅に近づいた瞬間であった。
ここまでお読み頂いた皆さんへ。
いつもご覧頂きありがとうございます。
さて、突然更新を再開して、第2部、なんとか書くことが出来ました。それもいつも読んで頂いている皆様のおかげです。本当に皆様には感謝しております。
獣医療をテーマに、いろんなモンスター達を描きたい一心で始めた小説ですが、ここまで続けられた事に自分自身大変驚いております。皆様にも獣医学を少しでも身近に感じて頂ければ嬉しいです!
特に、皆様の感想やブクマ、評価は、沢山の事を学ばせて頂けるし、こちらにとってもすごくモチベーションとなっております!神通力よりも私にとって強力な魔法です笑 もし、気に入っていただけたという方がいれば、ポチッとして頂けると、飛び跳ねて喜びます!笑
さて、余談はさておき、これからもイーナ達の冒険は続いていくと思いますし、是非とも続けていきたいと考えております。やっとモンスターの国が出来上がったので、是非ともいろんなモンスターの考察をしてみたいです。そんな筆者の妄想に、よろしければ、これからもお付き合い頂ければ幸いです。
何卒今後ともよろしくお願いいたします。
惟名水月




