74話 そろそろ国でも作ろうと思います
教会によるアレナ聖教国の統治は終わった。ロード達、フリーフェイスをはじめとする若者達が中心に立ち上がり、革命が起こったのである。不正や暴虐の限りを尽くしていた連中は逮捕され、民達による自治が開始されようとしていた。新たな時代の始まりである。
「イーナさん、皆さん本当にお世話になりました。今こうして、我々が生きていられるのも皆さん達のおかげです。これから我々の力で、良い国に変えていこうと思っています!その時には、是非ともまた訪れてください」
ロード達、フリーフェイスのメンバーは明るい表情で見送ってくれた。これから彼らには沢山の困難が立ちはだかってくるだろう。長く続いた教会の支配、その体制が壊れてしまったのだから。だが、きっと彼らなら大丈夫。そう思いながら、私達はアレナ聖教国を後にしたのだ。大量の狒々たちと共に……
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「イーナよ、どうするのだ?狒々たちのこと」
戦いの決着がついた後、ミドウが尋ねてきた。確かに私は猩々と約束してしまったのだ。彼らの面倒を見ると。
「流石にフリスディカに連れて帰るのは……まずいよね……」
そう言いながら、苦笑いを浮かべたが、本当にどうしたものか悩みどころである。こんなに大量の狒々たちを連れて帰ったところで、住むところはないのが目に見えている。だが、猩々を私が討ってしまった今、狒々たちをこの国においていくわけにも行かない。
狒々たちにどうしたいか聞いてみると、イーナ様の一存にお任せしますとのことだ。サルだけに上下関係がしっかりしているらしく、戦場ではあんなに凶暴であったのに、今となっては非常に従順な態度となった。その態度を見ていると、ますます放ってはおけないと思ってしまった。
「あのさ、一つだけ考えがあるんだけど……」
私がそう言うと、ミドウだけでなく、ミズチやシナツ、そして、仲間のみんながこちらに注目してきた。
「妖狐の里のあるレェーヴ原野に、モンスターの国を作るってのはどうかな……あそこなら、土地は十分にある。これだけの大所帯となれば、すぐに人間と一緒に暮らすというのはどうしても難しいだろうし……人間が認めてくれるかどうかは提案してみないと分からないけど……」
正直無謀な話である事は分かっていた。建国なんてそんな簡単な話じゃない。少なくとも連邦の許可は得ねばなるまい。人々の理解を得るのにも時間がかかるだろう。
私の提案を、皆あっけにとられたような様子で聞いていた。そりゃそうだ。モンスターが国を興すなんて話、前代未聞であろう。
「やっぱ……だめだよね」
私はそう言って、ごまかすように照れ笑いを浮かべた。すると、ミドウは高らかに笑い、こちらの方を叩きながら大声で口を開いた。
「面白いじゃないか!イーナよ!モンスターの国とは!俺達は夜叉は乗ったぞ!なあアマツ!」
ミドウがアマツのほうに話を振ると、アマツも笑顔で言葉を返してきた。
「面白そうだから~~私も賛成~~」
「大神と大蛇はどうだ?」
ミドウがシナツとミズチに話を振った。シナツも賛成してくれるようだ。そして、ミズチは、少し考えこんだ後に口を開いた。
「俺の一存では決められない。里の皆にも聞かねばなるまい。検討の時間をもらえるだろうか?」
ミズチから思ったよりも前向きな答えが返ってきたことに少し驚いた。一旦この話は持ち帰り、後日再び検討するとの結論でまとまった。それまでの間、狒々達にはレェーヴ原野で過ごしてもらうこととなったのだ。
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と言うわけで、私達も一度フリスディカに戻った後、アマツ達と別れ、狒々たちと共に、妖狐の里へと久々に戻ったのである。
「イーナ様お久しぶりです!」
妖狐の里に帰ると、ルクスをはじめとする妖狐の皆が出迎えてくれた。実に、2年ぶりくらいの里帰りである。思えば、私達の冒険もこの村から始まった。なんだか懐かしい気分になる。妖狐の里の風景はあのときとあまり変わってはいなかった。
「ルカちゃん達の故郷は素敵なところですね!」
ナーシェとルートは、はじめて妖狐の里に来たことになる。妖狐のみんなにも受け入れてもらえてるようで何よりである。
「みんな、全然帰ってこれなくてごめんね……それで、今回戻ってきた理由なんだけど……」
私は、里のみんなにいきさつを説明した。サクヤは結局助けることが出来なかったこと、私が九尾として生きることになったこと、そして、モンスターで国を作ろうという話になったこと。皆は私の話一つ一つにしっかりと耳を傾けていた。
「なんと……我々の国ですと……!そんな事が本当に可能なのでしょうか?」
そして、国を作りたいという私の説明に、里の皆が響めいた。
「もちろん、簡単にはいかないとは思う。でも、みんなで力を合わせればきっと出来るよ!」
私がそう言うと、里の皆は歓喜の表情を浮かべながら喜んだ。
「まさか……我々が国を持てる日が来るとは!」
「イーナ様、我々も協力します!」
妖狐の里の協力は取り付けられそうである。あとは他のみんな、そして人間次第である。どうなるかは分からないが、私に出来る事はもう何もない。
数日間、妖狐の里でのんびりと過ごした後に、私達は再びフリスディカへと戻った。遂に、他の四神達との会談の日を迎えた。
「さて、皆の意見はどうであった?」
ミドウの主導で四神会談が始まった。私達、それぞれの種族の長に加え、それぞれ一名ずつ、お供の者を連れている。カブラとアマツも参加していた。私はルカと共に、会議へと参加した。ミドウの問いかけに対し、最初に口を開いたのはミズチであった。
「大蛇の意見としては、賛成だ。カブラが里中のものに人間界での事を言いふらし回ったみたいでな。人間界に興味を持っている者が増えている。大蛇もこのまま引きこもっていても未来はないだろう。ならば手を取り合って生きていける道を選んでいきたい」
ミズチの話に、カブラが少し恥ずかしそうに頭に手を置いていた。確かに、人間界に来たときには、カブラは誰よりも楽しそうにしていた。ミズチに続いてシナツが意見を言った。
「大神も賛成だ。先代真神が人間に討たれてから、人間に対する見方も変わってきている。人間が驚異にならない、共存という道があるなら、それを選ぶのも悪くないのではないか」
2人の意見の後に、ミドウがとりまとめるかのように言葉を発した。
「では決まりだな!連邦には俺が手を回しておいた。万事問題ない!今この時より、我々はモンスターの連合国の一員と言うことで決まりだ!」
ミドウの言葉に皆が首を縦に振る。すると、ミドウはさらに話を続けた。
「国を作ることが決まった今、まず国の名前と代表の者を決めねばならない。さて、代表はイーナで異論は無いかと思うが、皆どうだろうか!」
ミドウの提案に、皆が首を縦に振る。
……?
「ま、まって、私が国の代表!?なんで!?」




