70話 使徒 vs 使徒
「狒々……!なぜ教会軍が使徒を!」
抵抗軍の中に動揺が走る。まずい。味方の士気が下がっては、数の上で劣る抵抗軍に勝ち目がないのは目に見えている。
こうなれば、私がなんとかするしかない。
狒々の集団はこちらの様子を見ると、今が好機とばかりに一気呵成に攻めてきた。なんとしても、狒々の侵攻は食い止めなければならない。
「炎渦」
狒々の数匹が炎の中に包まれた。倒すこと自体は問題は無かったが、いかんせん数が多過ぎる。するとその光景を見た狒々は警戒するように、私との距離を取った。
「お前、何者だ。その妖術ただの人間ではあるまい!」
先頭にいた狒々がこちらに向けて叫んできた。
「あんた達と同じ、使徒と呼ばれてるものだよ」
私がそう言うと、狒々は何かを悟ったように静かに呟いた。
「妖狐か……」
このまま引いてくれればしめたものである。もしくは、他の4神の時のように味方になってくれないだろうかと淡い希望を抱いていたのである。だが、すぐに私の希望は潰えたのだ。私の回答は結果的に狒々たちの士気をさらに上げることとなったのだ。
「お前達妖狐は人間に四神の一族だなんだと崇められてきただろう。同じ使徒であるというのに、我々とお前達の差は一体何なのだ!お前達を倒し、我らが新たな四神の一族となるのだ!みな、あの妖狐の者を討て!」
狒々の一匹が叫ぶと、狒々の集団から一気に声が上がり、こちらに向かって攻め立ててきた。
「みんな引いて!なるべくあいつらは食い止めるから!」
だが、勢いづいた教会軍は、動揺している抵抗軍をじわじわと追い詰めていった。1人また1人と、味方が崩れ落ちていく。まずい、このままじゃまずい。
私もなんとか抵抗を見せるが、斬っても斬っても敵の数は減るどころかどんどん増していく。まるで無限に敵が湧いてくるかのようであった。
――おい、イーナよこのままではまずいぞ!
そんな事はいわれなくても分かっている。だが、目の前の敵を相手するので精一杯であった。
どうする?
「妖狐の実力そんなものか!」
さらに、狒々たちは勢いを増して押し寄せてきた。じりじりと後退しながら、気が付けば、もうすでに街の入り口近くまで押し戻されていたのだ。
「おい、イーナ!まずいぞ!完全に敵が勢いづいている!」
同じく、敵の勢いに後退してきたルートが叫ぶ。シータもアマツもそこまで戻されていた。
「シータ!竜は?」
「遠距離の魔法使いがいる以上、この数相手では、ただの的になってしまう!」
シータが敵を斬りながらこちらに向かって叫ぶ。打つ手がない。
どうする……?どうする……?
「イーナ~~」
アマツはいつもと変わらない様子で飄々と、こちらに話しかけてきた。
「なにさ、アマツ!こんな時に!」
「反撃タイムの始まりだよ~~」
どういうこと……と思った瞬間、戦場に銃声が鳴り響いた。教会軍は魔法や使徒だけではなく、銃まで使うのか。万事休すだ……
――おい、イーナよく見るのじゃ!
だが、撃たれたのは、味方軍では無かった。一体、また一体と、教会軍の連中が鋭い悲鳴を上げながら崩れ落ちていく。何?一体何が起こっている?
すると、次の瞬間、聞き覚えのある声が私の耳元へと届いた。
「イーナよ!待たせたな!同盟の一員として助太刀に参った!」
その声の主はミドウであった。その横には、ミズチも冷静な様子で立っている。後ろには銃を構えた夜叉の皆々の姿、そして、大蛇、大神の姿も見えた。その光景に呆然としていると、シナツが颯爽と私の横へと現れたのである。
「イーナよずいぶん苦戦しているようだな!」
「なんでみんなが……?」
「四神同盟を忘れたのか?ミドウから知らせを受けて、飛んできたのだ」
知らせ……?私がアマツのほうを見ると、アマツは笑いながらこちらにウインクを飛ばしてきた。アマツ、分かっていたなら最初から教えてくれよ。
夜叉、大神、大蛇の援軍に一気に形勢が傾いた。さっきまで士気が下がっていた抵抗軍は一気に敵を押し戻していく。
私の元に、ミドウとミズチもやってきた。いまここに四神の長が集結したのだ。
「みんな、ありがとう!」
「なに、もともとこれは夜叉の戦よ。皆を巻き込んでしまったこと、本当に申し訳ない」
ミドウが深々と頭を下げながら言った。
「約束してしまったものは仕方無い。それに、最近戦いには飢えていたのだ。より強い敵と戦えるのであれば好都合だ」
ミズチが表情を変えず口を開いた。
「イーナよ!久々に共に戦えるな!」
戦力は整った。狒々相手だろうが、魔法使い相手だろうが、負ける気はしなかった。
「イーナ~~私の策はどうだった~~?」
アマツが笑みを浮かべながらこちらへとやってきた。聞く前から答えがわかりきった質問である。
「じゃあ、反撃タイムと行きますか!」




