46話 戦いが絶えない世界
ミズチとの出会いから一晩が明けた。ルカではないが、私も大分疲れていたのであろう。部屋に戻った記憶はあるが、それ以降の記憶が無い。
そういえばルカは!?
なんとなくまだ意識はぼーっとしていたが、ルカの事を思い出すと一気に目が覚めた。起き上がって横を見ると、まだみんな寝ているようだ。
私は起こさないようにルカの額の上に手を置いた。大分熱は下がっているようだ。これなら特に大事は無いであろう。まだ無理をするのは良くないけど……
ちょっと外に出てみようか、そんな気まぐれに身を任せ屋敷を出た。外はもうすっかり明るくなっていたが、大蛇の人通りは少なかった。ゆっくりと息を吸い込むと、身体が自然と一体化していく、そんな感覚を味わえた。
「んー空気が美味しい!」
昨日は夜だったので暗く、あまり良く見えなかったが、太陽に照らされた死海は、その名に似合わず大変美しい景色が広がっていた。山々の木々の緑と合わせて、むしろ「死」と言うよりも「生」という言葉の方が適しているのではないかと錯覚してしまうほどである。
「イーナ様、お目覚めになられたのですね」
景色を眺めていると、大蛇の1人がこちらに近づいてきた。昨日、案内をしてくれた大蛇である。大蛇はほとんど人間のような姿であったが、所々鱗のような、おそらく蛇であった名残が見えた。
「おはよう、昨日はありがとう!朝はあんまり人がいないんだね!」
「はい、我々大蛇は夜の方が得意ですので、朝は最低限の人数だけであとは交代で休んでいるんですよ。お昼くらいになれば、皆動き出すのですが、どうにも朝は苦手で」
わかる、私も昔は朝が苦手だった。けれども、動物を相手にする仕事を選んでしまってからは、いかんせん朝に活動しなければならない事が増えた。今でも朝は得意ではないが、勝手に目が覚めるようになってしまったのである。
「つかぬ事を聞きたいんだけど、ミズチさんってまだお若いの?」
私はミズチにあったときからずっと思っていた疑問を大蛇の1人にぶつけた。見た目としては明らかに若かったが、九尾の例もある。本当にモンスターの年齢というのは見た目ではわからない。興味があったが、どうにも聞きづらかったというのが正直なところである。
「そうですね、ミズチ様はちょうど100年前くらいにミズチ様になられたので……まだお若いと言えばお若いですね」
「ミズチさんがミズチさんになるって?」
「我々大蛇の長は代々ミズチという名を引き継ぐのです。つまり、蛟の座にいる大蛇こそがミズチを名乗る。そういうものなのです」
なんだか難しい話ではあるが、なんとなく分かった……様な気がした。
「ありがとうね!色々教えてくれて!」
大蛇の男に一言お礼を伝え、私は屋敷へと戻った。部屋に入ろうとすると、後ろに誰かの気配を感じた。そこにはアマツがいたのである。
「イーナ~~もう目が覚めたんだね~~!おはよう~~」
「ああ、アマツ、おはよう」
そして、ここで私はアマツに聞こうと思っていたことを思い出した。アマツの用事が一体何だったのか。口を開こうとすると、先にアマツが問いかけてきた。
「イーナ~~あのさ~~私とミズチはランドブールまで戻ったらそのままフリスディカに向かおうと思うんだけど、イーナはどうする~~?本当はイーナにもきて欲しいんだけど~~」
「そのことについてなんだけど、私も関係のある話って事なんだよね?」
アマツの問いかけに、私も問いかけで返した。
「そう、でもイーナにはいまやることがあるから~~話すべきかどうするか悩んでたんだよ~~」
そこまで言われると気になってしまう。
「アマツ教えて欲しい」
アマツの目を真っ直ぐ見つめながら、そう言うと、アマツはゆっくりと口を開いた。
「実はね~~アレナ聖教国が連邦に対して戦争を企ててるらしいんだ~~まあまだ確定情報ではないし、あくまで企てているだけだから、どうなるのかは分からないけど~~こないだの帝国の件もあったしね~~」
「それで夜叉は止めようと?」
「イーナのおかげでお父様も平和主義者になったからね~~思いの外イーナのこと気に入ってるみたいだよ~~」
正直、国同士のいざこざなど関わりたくないというのが正直なところではある。だが、放置しておく訳にもいかない。ミドウ達が中心に動いてくれるというのであれば、勝手ではあるが今は任せたいというのが本心であった。
「わかった、1回フリスディカには戻るようにする。でもその前にちょっとだけいくつか用事を済ませたいんだけど、大丈夫?」
「結局帰るのに飛空船が必要だからね~~寄り道も付き合うよ~~」
その夜再び、私はミズチと話をしたのである。
「ミズチさん、色々とありがとうございました。ルカの……仲間の体調の方も良くなってきましたので、明日にでも出発出来ます」
「分かった、イーナよ。明日出発をしようではないか。道中は我らの一族も同行するが、よろしくお願いする」
ミズチはゆっくりと頭を下げた。焦って私も頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
次の日、すっかりルカの体調は良くなり、再び旅立ちの準備も整った。やはり妖狐の回復力というものは恐ろしい。
ミズチに言われたように、街の入り口で、ナーシェ、ルカ、テオ、そしてアマツと共に待っていると、2人の男が街から出てきた。
「お待たせした。それでは出発しよう」
ミズチの隣には、最初に大蛇の街を案内してくれた大蛇の男がいた。
「イーナ様、アマツ様、今回同行させて頂きます、カブラと申します。よろしくお願いいたします」
「さあ、出発だ!まずはラングブールに戻ろう!」




