表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/223

28話 風を切る者


「こちらがレベル4の証、バッジになります!」


 ギルドのレベル4への昇格試験、俺達は問題なくパスした。ギルドでは、レベルに応じて、付けるバッジが異なる。バッジを見れば、その人のレベルが一目瞭然という仕組みだ。


「早速ですが、イーナさん達に行ってもらいたい依頼があるのです!」


「依頼?」


 俺の問いかけに、受付のお姉さんは続ける。


「はい!例のナリスの近くの森、なにやら最近、不穏な空気が漂っているとのことで!あの森に調査に行って欲しいのです!そして、今回は他のパーティも一緒に行くことになるのですが……」


 なにやら、少し語尾が小さくなったのが気になったが、まあいい。


「良いですけど……」


 今回一緒に依頼を受けたパーティは先にナリスへと向かったようだ。待たせるのも良くない。俺達はすぐにナリスへと向かった。


「ええーーー!あなたたちと一緒なんですか!」


 ナーシェは叫ぶ。そう、今回一緒に行くパーティとはナーシェの元パーティだった。受付のお姉さんめ…… 黙ってたな……


「こっちの台詞だよ!せいぜい足は引っ張らないでくれよな!」

「まあ、怖かったら先に帰っても良いぜ!俺達でやっとくからな!」


 相変わらずやなやつだ。


 しかし、ギルドからの指令とあれば仕方無い。一度引き受けちゃったしな……


「じゃあよろしくお願いします」


 なにやらみんな不満そうだったが、仕方無い、ここは大人の態度だ。


「おうおう、よろしくされますよ!」


 我慢だ我慢。



「みんなの力見たらそんなこと言ってられないんだから……」


 ナーシェは1人、ずっとぶつぶつと何か呟いている。怖い。


 それに引き替え、シータは流石に大人である。子供を見るかのような優しいまなざしで彼らを見つめている。


「イーナ様!早く行こ! 」


 そしてやはりルカは天使であった。




 なんだかんだで、無事に森の入り口へとついた。森は異様な雰囲気を醸し出し、近寄りがたい空気を出している。


「……なんか ……やばめだね」


 俺の言葉にシータも同意する。すると、男どもは口々にまた煽りだした。


「びびってるの?イーナちゃん!」

「可愛いお顔が傷ついちゃったたら大変だよ!」


 何も言わない。何も言わない。


「じゃあ俺達は先に行くぜ!後からゆっくりついてきな!」


 男達はニヤニヤしながら森へと消えていった。団体行動もへったくれもない。


「ねえ……」


 俺はナーシェに問いかけた。


「なんであいつらと……パーティ組んでたの?」


 ナーシェは少し元気なさげな様子で答える。


「私…… ギルドに入ってから失敗続きで……薬を間違えたり!部屋着のままギルドにいっちゃったり……」


 おい、大丈夫かこいつ。


「でも、前のギルドをクビになって、あの人達のギルドに数合わせって形でも誘われたとき、嬉しかったんです。私が必要にされてるって思えたから……」


「でも!今は!素敵なみんなと出会えたから!結果オーライですね!」


「頼むから……薬は間違えないでね……」


 俺達も彼らに続いて、森へと向かった。




「それにしても……あの人達どこまで行ったんでしょうか?」


 あれからしばらく森を歩いたが、進んでも進んでも、彼らに合流することはなかった。


「あいつら……迷ったりしてないだろうな」


 シータはなにやら彼らの心配をしているようだ。出来た男だ。


 さらに進むと、木々に囲まれた、池のような場所が見つかった。水面は青く輝いており、木々の緑と相まって、まるで楽園のような場所だった。


「綺麗ですね!」


 ナーシェはなにやら嬉しそうな様子で池へと近づいていった。ルカとテオもナーシェについて行く。俺はここで、皆に提案した。


「ちょっとここで休憩しようか!」


 池のほとりではナーシェとルカとテオがなにやら話をしている。平和である。




 しかし、つかの間の平和は、すぐに過ぎ去ったのだ。


 池の向こうの森から突然に、それは現れた。巨大な狼は3体、牙を剥きながらこちらを威嚇している。そして、その3体の奥から、もう一体さらに大きな、3体とはまた違う、美しいとさえ思えるような白い狼が現れた。その狼は仲間に向かって静かに告げた。


「まて、そいつらは人間と違う香りがする」


 ボスのような狼の声はこちらにも聞こえた。そして、さらに狼は続ける。


「おまえらは何者だ」


「九尾だ」


 俺は一応身構えながら、狼の言葉に返事をした。そして狼はなにやら納得したような様子で、また話を続けた。


「なるほど、俺は大神の族長 真神だ。名はシナツという」


「私はイーナです。シナツ……どうしてそんなに荒立っているの?」


 狼は襲ってくるつもりはなさそうだ。会話も出来そうである。


「先日、俺達の里は、人間に襲われた。その時に俺の父、前真神は皆を逃がすために、1人で戦い、そして死んだ」


 死んだ…って


「人間に…… やられた……?」


 しかし、大神も神通力はあるはずだ。いくら兵器があったとは言え、そう簡単にやられないだろう。


「あいつらはなにやら武器を持っていた。それに、1人向こうにも魔法を使うものがいたのだ……」


「魔法を?」


「そいつの魔法はなかなかに強力だった。何より驚いたのは、俺達にしか使えないはずの風切まで使いやがったんだ。そして、お前達妖狐が使うような術もな」


 なにやら、怪しげな気配が漂ってきた。それに……


「大神、気付いている?」


「ああ」


 何者が近づいている。賢者の谷から格段に神通力が使いこなせるようになったようだ。俺にもその気配は分かった。


「ルカ、テオ、ナーシェ後ろに隠れて」


 そして、そいつは俺達の目の前に姿を現した。鎧をまとった軍人であった。

 軍人は笑みを浮かべながらシナツの方に向かって、叫んだ。


「ここにいたか、大神よ!さて私と遊ぼうではないか!」


 狼たちは牙を剥き、臨戦態勢を取っている。

 軍人を見たナーシェの顔はだんだんと青ざめていくのが分かった。そして一言呟いた。


「な、なんで帝国がここに……」


 帝国……連邦と戦争をしていたという帝国……?


 さらにナーシェは続けた。


「帝国は滅びたはずじゃ……」


 次の瞬間、軍人は姿を消した。と思ったら次の瞬間大神たちの目前へと現れ、持っていた剣を振るう。大神たちはどうにかかわしたようだ。


「おい」


 俺は軍人の方に向かって声をかけた。軍人はこちらには気付いていなかったのか、声に反応してこちらを向いた。すると、また消えたかと思いきや、軍人は俺の前へと現れた。軍人の手によって俺の顔は持ち上げられていた。


「お嬢ちゃん、なんでこんなところにいるんだ?」


「嬢ちゃんじゃない、九尾だよ」


 俺は背中にある龍神の剣に手をかけ、軍人に向かって剣を振った。やはりあたらなかったようだ。再び、軍人は離れたところへと姿を現した。


「そうか、真神に加えて、九尾まで!これは傑作だ」


「お兄さん、誰?」


「私はエルナス帝国第3部隊長 ラヴィル、まあその名もすぐに忘れることになるがな」


「ラヴィル……」


「それに、良いのか4神のうち2人が俺1人を相手をして、今頃連邦は火の嵐だろうに」


「フリスディカ……!」


 ナーシェが呟く。


「奴らの次の狙いはフリスディカです!こいつはおとりです!」


 ナーシェが叫ぶと、ラヴィルはなにやら笑みを浮かべ、また口を開いた。


「おいおい、おとりとは失礼だな」


 また消えた。と思いきや、目の前へと現れた。今度は明らかに攻撃態勢である。なんとか紙一重でラヴィルの斬撃を防ぐ。そこに、シナツが横から攻撃を加えようと、牙を剥いて襲いかかった。やはりかわされたようだが。そして、そのままシナツは俺の横へと来た。


「ねえ、あの瞬間移動みたいなのって、風切ってやつ?」

「そうだ、まあ、俺達の風切よりは大分遅いがな」


 シナツは静かに答える。しかし、どうしたものか。


「シナツ、何か策はある?」


「俺達の方が早い、隙が出来れば一気に倒せる」


 しかし、なぜ、ラヴィルは大神の神通力を使えるのか?今は考えても仕方ないが。

 それに隙と言われても、こんなもんどうしろって言うんだ。


「風切ってどうやって移動してるの?」


「一気に地面を蹴り上げ、風に乗るんだ」


 地面を蹴り上げるか……


 ラヴィルも流石に九尾と真神、2人を同時に相手をするのは警戒をしているようだ。じわじわと距離が開いたまま、時間が流れる。


 ふと、俺は一つの考えを思いついた。地面を蹴るというのなら……


 俺は右手をラヴィルの方に向け一気に氷を放った。神通力は確かに強力になっているようだ。前よりも格段に範囲が上がっている。風切でかわされたようだが。


「ふはは、九尾よ、その力、使えるのはお前達だけではないぞ」


 ラヴィルが手を上げると同時に、俺の神通力と同じように、ラヴィルの足元から、こちらに向かって一気に地面が凍り付く。妖狐の力も使えるようだ。


 しかし……


――なんじゃ、あの神通力は…… 妖狐のものにしてはへっぽこじゃわい


「確かに」


 俺がサクヤの言葉に笑みを浮かべると、ラヴィルはその言葉が気に触ったのだろう。怒りがこちらにも伝わってくる。


「へっぽこだと……! 私を誰だと思っている」


 そう言うと、再びラヴィルはこちらに向けて氷を放った。不意打ちじゃなきゃ交わせる範囲である。やはり妖狐には劣るようだ。


――へっぽこじゃへっぽこ、そんな手品みたいな魔法、妖狐の力とは月とすっぽんじゃ


 なんでそんなに煽るかなあ……


 ついに、ラヴィルは耐えきれなかったようだ。再び、風切を使いこちらに攻撃を仕掛けようとした。しかし、次の瞬間ラヴィルは一気に地面へとたたきつけられたのだ。そして、そのあとラヴィルが起き上がることはなかった。瞬間、大神たちの餌食となったのだ。森にはラヴィルの断末魔だけがこだました。


 俺はにんまりしてシナツの方を向いて一言放った。


「隙は作ったよ!」


「ああ、ありがとうな、イーナ」


「どういうこと?」


 ルカは謎めいた顔で、問いかけてきた。


「あいつ、妖狐の魔法で足元まで凍らせてたでしょ。凍ってたら風切は使えないよ。一気に蹴り上げたらスリップするから」


 俺は笑顔でルカに答えた。正直、冷静さを失いやすい奴で助かった。


「それよりも!フリスディカです!早く戻らないと!」


 ナーシェの言葉に状況を思い出す。早く戻らなくては……!


「イーナよ!私達の背に乗れ!風切なら早く着く!」


「ありがとうシナツ!」


 フリスディカはどうなっているんだ……大神の背にまたがり、俺は嫌な予感があたらないことをただ祈っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on

『Re:わたし、九尾になりました!』
わたし、九尾になりました!のリメイク版になります!良かったらまたお読み頂ければ嬉しいです!





『memento mori』
新作になります!シーアン国のルカの物語になります!良かったらよろしくお願いいたします!




FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ