220話 Next Generation
ラナスティア大平原の戦いは、連合軍の圧勝という結果で幕を下ろした。戦争に踏み切ったシーアン国の上層部は、しかるべき処分が下され、シーアン国は、リオンの危惧していたとおり、内情は悲惨な状態に陥ったのである。
そして、残る白の十字架の連中は、忽然と姿を消し、その後の消息はわからずじまいである。結局、奴らとの因縁に完全に決着をつけるというわけにはいかなかった。
そう戦いには勝利したものの、私達にも課題が沢山のこされた結果になったのである。まだまだやらなければならない事はある。
それでも、私達は前に進むことが出来た。数多くの犠牲の上に。だからこそ、私達は足を止めてはいけない。前に進み続けなければいけないのだ。
「リオンさん、ありがとう。あなたのお陰で…… 何とか平和を掴めそうだよ!」
リオンの遺言。自分の亡骸をローナン大森林に葬って欲しいという願いを叶えるべく、私達はローナン大森林へとやってきていた。
「ねえイーナ様!シーアンは大丈夫かなあ?」
私の隣で、リオンの眠る墓に一緒に手を合わせていたルカが問いかけてきた。
「きっと大丈夫だよ!リオンさんが言っていたように……シーアンにもちゃんと立派な次の世代が育っているはずだから!」
そう、皆が必死で繋いできたその種を、皆の犠牲の上に育ちつつある種を、生き残った私達が大木に育てていかなければならないのだ。
ごめんねリオンさん……
まだ、私達にはやらなきゃいけないことが沢山ある。
でも、そのやるべき事に片がついたときには……
リオンのもう一つの遺言。自らの息子をよろしく頼むという言葉。命をかけて、シーアンのために戦ったリオンのためにも、私はその願いを引き継がなければならない。
ルカという少年。きっとシーアンの将来を担っていく少年。きっと、あんな勇敢な戦士の息子であるルカであるならば、立派な人物になるだろう。
「イーナ様?どうしたの?」
ふと笑みがこぼれてしまっていた私をルカが不思議そうな表情でのぞき込んできた。
だって、面白いじゃない。
これからのレェーヴを、妖狐を担っていくであろう少女と、シーアンを担っていく少年の名前が同じだと言うこと。きっとこれも何かの運命なのかも知れない。
「ねえ、ルカ!」
「なにイーナ様?」
ルカは私の呼びかけに笑顔で答える。
「いやなんでもないよ!」
「なに?イーナ様!気になるよ!」
これからの…… この世界はきっと2人の『ルカ』が中心に回っていくんだろう。今まで、私はレェーヴという国を大きくしていくことに必死だったが、また一つやるべき事が出来てしまったのだ。
次の世代を育てていく。
それが、これからの私の役割なのだ。
『わたし、九尾になりました!』をここまでお読み頂いた皆様へ
いつもお読み頂きありがとうございます!
この話をもちまして、本編は完結という形になります!途中で何度も心が折れそうになったこともありました。それでもここまで書き続けられたのも皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
さて、長い間にわたって、書き続けた本作ですが、これで幕を閉じる形になります。ですが、イーナ達の冒険は終わるわけではありません。
次の世代、ルカの話として、新たな話を書いていくつもりです。よければランキングタグの方から引き続きお読み頂ければ嬉しいです。
最後に、ここまでお読み頂きまして本当にありがとうございました。初めて長編を書いたため、不慣れな点や、納得の行かないことも多かったとは思います。ですが、なんとか完結まで書き終えられたのは、本当にいつもお読み頂いている皆様のおかげだと心より思っております。
ですが、ここまで書き切れたことはきっとこれからの私にとっても大きな力になっていく、そう確信を持っています。
これからも惟名水月の作品を、何卒よろしくお願いいたします!
惟名水月




