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215話 地獄の最中


「大変です!参番隊、肆番隊ともに敵に押されている模様!我が部隊にも援軍の要請が来ております!」


 伝令の兵士の言葉に、弐番隊のシーアンの兵士達がざわつく。新たに手に入れた強力な魔法の力を前に、シーアンの兵士達は自分たちの勝利を疑ってはいなかったが、戦況は戦前の予想に反して、シーアン軍が不利と言う状況に誰しもが驚きを隠せないといった様子であった。


だが、弐番隊隊長であるリオンの表情だけは、平静を保ったまま変わっていなかった。死線を数多く乗り越えてきたであろうリオンという男にとっては、今の状況も想定の範囲内であったのだ。


「慌てるな。我らも出るぞ。後軍と連携しながら、前線に兵の供給をし続ければ、兵の数ではこちらが有利であることは変わらない。分断さえされなければ大丈夫だ。俺が先陣を切る。おぬしらもついてこい」

 


………………………………………



 ラナスティア平原中央部では、連合とシーアン軍の激しいぶつかり合いが続いていた。シーアン軍の魔法使い達の出現により、一時は戦況も傾き駆けたが、何とか連合軍の士気も保たれ、互角の戦いが繰り広げられていた。


 それでも、次から次へと押し寄せてくるシーアン軍の勢いは凄まじいものであった。次第に傷つく者が増えていき、また戦場に散っていく者も後を絶たなかった。それはラナスティア兵士だけではなく、レェーヴ軍、そして黒竜の者にも言えることである。


「くそがあ!」


 火を吐く黒竜に、一斉に襲いかかるシーアンの兵士達。そして、1人また1人と、減っていく味方。確実に敵を減らしてはいるはずであったが、全くシーアン軍の勢いは衰えるような気配はなかった。


 もはや、味方の連携をとると言ったような話をしている余裕はない。目の前に現れる敵を対処するというので、皆が精一杯であった。私にできる事は、1人でも多くの味方の無事を祈ること、それしか出来なかった。


「いたぞ!あの女だ!」


 シーアン軍の兵士達の方から叫び声が聞こえる。波状攻撃のように押し寄せてくるシーアン兵。もう何隊のシーアン兵を斬ったか、そして魔法で倒したか、もう私にもわからない。


「やれえ!あいつを討ち取れば!我らの勝利も同然!」


「そう簡単にはいかないよ」


 龍神の剣が、向かってきた兵士達を一閃する。血しぶきを上げながら戦場に散っていく男達。


「くそ!ひるむな!やれ!」


 そう叫んだ兵士達が突如として、倒れ込む。兵士の後ろには、兵士達の血に染まったアマツの姿があった。


「イーナ~~!張り切ってるね~~」


「アマツ!無事だったんだね!」


「なんとかね~~でも倒してもキリがなくてさ、どうする~~?」


「いたぞ!!!」


 アマツとの再開を喜ぶ間もなく、再び新たな敵の声が響き渡る。押し寄せる敵の姿を見ながら、不敵な笑みを浮かべるアマツ。笑顔を浮かべたまま、アマツは、私に向けて口を開く。


「まったく、イーナはモテモテだねえ~~次から次へと」


「こんな場所でモテたところで何も嬉しくないよ……」


「そんなこと言っちゃってさ~~!」


 そんな冗談じみた会話を交えながら、私達は向かってくる敵をどんどんと倒していく。あとどの位敵を倒せばこの地獄が終わるのか、その答えをわかるものは誰もいない。それでも私達は目の前の敵を切り続けるしかないのだ。


「クソ!」


 慌てふためく兵士達。突如として、そんな兵士達を一喝するように、低い声が周囲に響き渡った。


「ひるむな!」


今までの敵とは比べものにならないほどの威圧感。幾多の死線を乗り越えてきたことが一目でわかる。男は表情を変えず、私に向かって、口を開いた。


「おぬしがイーナだな?」


「そうだけど、あなたは誰?」


「俺は、シーアン軍弐番隊隊長リオン・アレクサンドリア。おぬしらのここまでの戦い大変見事である。だが、これ以上おぬしらの好きにさせるわけにはいかない」


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『Re:わたし、九尾になりました!』
わたし、九尾になりました!のリメイク版になります!良かったらまたお読み頂ければ嬉しいです!





『memento mori』
新作になります!シーアン国のルカの物語になります!良かったらよろしくお願いいたします!




FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。
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