19話 グールだって生きている?
試験に合格した次の日のことである。再び、俺達はギルドへと足を運んでいた。今日は渡すものがあるから来てくれと言う受付のお姉さんからの指示である。
ギルドに正式登録されたと言うことで、俺達はギルドの団員の証である、ギルドパスと、背中に紋章のはいった黒いローブをもらった。かっこいい。
「そうですね……最初ですし…… あ、このグールの討伐とかいかがでしょうか!」
受付のお姉さんは俺達に一つの依頼を紹介してきた。
「グール?」
俺が聞くと、ナーシェは答えた。
「グールは区分上、鬼族にはなるんですけど、普通の鬼とは違って、死んだモンスターが魔力によって復活した奴らなんです! 知性は低いので、そこまで危険度は高くないですね! グール自身も可哀想なので、なんとか浄化させてあげれればいいんですけど……!」
なるほど、それならば罪悪感もあまりないな、うん
指定された村へは、列車で移動するらしい。移動費はギルドで持ってくれるとのことだ。
「それにしても、死んでなお復活するなんてことがあるんだな……」
「原理は分からないんですけどね!」
ナーシェは俺のそばから離れようとしない。
「ねえ……前から思ってたんだけど、なんでそんなにくっつくの……?」
「だってイーナちゃんかわいいんだもの!えへえへ」
「おまえ……」
ルートが引いたような目で彼女を見つめる。
「ルートさんもそう思いません……?」
「なっ…… いや…… 俺は……」
ルートは目を逸らした。
「もーールートさん照れちゃって!」
「照れてないっ!茶化すな!」
そして俺のもう一つの懸念は、ナーシェが俺にくっつくと、ルカが拗ねてしまうことである。狐の姿をしている以上、口にはださないが、明らかにナーシェを敵視しているようだ。
「それに……イーナちゃんのペットの猫と狐さんもかわいい!」
そう言うと、今度はルカとテオに抱きつく。ルカは少しいやがっている。テオはまんざらでもなさそうだが。このドスケベ猫が。
――なんだかさわしがしくなってきたの……
サクヤは神通力で俺にぼやく。しかし、こちらもまんざらでもなさそうだ。
「おい、そろそろつくぞ。じゃれてないで下りる準備をしよう」
シータが声をかけた。いよいよか。列車の旅もなかなか長かったな。
到着した街、ナリスは農業によって栄えたらしい。グールについて詳しく情報を聞くため、俺達は街のギルド窓口を元を訪れた。各街にはギルド窓口が存在し、相談があったうち、ギルドへと正式に依頼が受理されるとのことである。あとちょっと遅かったらルートも討伐対象としてギルドに登録されていたかも知れないな……
ギルド窓口は街の役場のようなところに設置されており、病院なども併設しているようだ。
グールによって襲われたであろう人々が何人も運び込まれていた。中には泣いているものも多くいる。
「ひどい……」
「昨日、街から離れた、南の集落がグールによって襲われたのです。犠牲者も何人も出てしまい…… そこで放ってはおけないと言うことで、今回の依頼になりました」
そして、黒い十字がはいった、白いローブを着た医者達が、忙しそうに次から次へと患者の治療を行っていた。
「あの、十字がはいった医者達もギルドなの?」
俺がそう聞くとナーシェは答えた。
「あれはギルドとは別の組織ですね!白の十字架といって、最近連邦内で、医療を広めている団体なんですよ!」
「白の十字架……」
国境なき医師団のようなものかな……
そうして、窓口で教えてもらった集落に行くと、畑は荒らされ、家も廃墟と化していた。なかなかに無残な光景である。
「これでレベル3なの……?」
「おそらく……この被害から言うと、大量のグールがいそうな感じですね。なかなか骨が折れるかも知れないです、危険を感じたらすぐに一度退避すべきですね……」
「グールは夜になると現れるようです!光に弱い性質があるので…… それで、この被害の割になんとか生き延びられた人も結構いるみたいですね! まあその分視界も悪くて危険度は上がりますけど……」
「ふん、ちょうど良いな」
ルートはナーシェの心配をよそに強気であった。ルート自身夜でなければ力が出せないからである。
「夜までキャンプを立てて休みましょう」
日も大分傾きはじめ、夜が近づいてきた。
「そういえばナーシェって戦えるの?」
俺の質問にナーシェは申し訳なさそうに答える。
「すいません、私は戦いはあまり得意ではないのです……!基本的には皆さんのサポートという形です!」
正直その方が都合が良いな、前に出られてケガでもされたら困る。医師なのに。
「もしケガをしても、少しくらいなら薬で治せるので、全力でたたきつぶしちゃってください!」
こいつ、笑顔でたまにとんでもないことをいうな……
まあ、オーガと同じくらいなら、今の俺達なら何の問題もないだろう。いざとなれば、サクヤもルカもテオもいるし。
そして日も完全に落ちた頃、森の奥、木々の合間から奴らはやってきた。
グールの大群だ。思ったよりも多い。優に百は超えているだろう。
「こんなに来るの!?」
俺は思わず叫んでしまった。
「こんな大群初めて見ました……!なにやら、凶暴性も高そうですし……! 一度、引いた方が良いかもしれないです!」
「イーナ、ルートよ、問題ないだろ?」
シータの問に俺とルートは声を重ねて答えた。
「ああ!」
シータとルートは我先にと、グールの大群へと突っ込んでいった。
出遅れた……!
「ナーシェ!ルカとテオを任せるね!」
俺はそう言うと、2人をナーシェに預け、彼らの後を追った。
背中の龍神の剣を抜く。そして、龍神の剣に炎をまとわせると、その様子を見たナーシェは思わず呟いた。
「イーナちゃん…… あなた…… 何者なの?」
グールを斬ると、傷口から炎は広まり、一気に燃え尽きていく。シータとの修行の成果だろうか、明らかに前よりも神通力の使い方も上達していた手応えはあった。
そして、戦場は即座に鎮圧されたのだ。
「イーナちゃん!シータさん!ルートさん! すごい!お強いです!あんな大群をこんな短時間で!」
ナーシェは興奮した様子でこちらへと向かってくる。
「なあ……」
俺はみんなに問いかけた。
「なんか、グールの様子がおかしくなかった?」
すると、みんな同じことを思っていたのだろう。シータが答えた。
「そうだな、まるでなにかに怯えているような様子だった」
「あんなにグールがでるなんて…… なかなかないんです……! 森に何か異変が起こっているのかも知れないですね……」
「イーナ!シータ!さらに森に入ってみないか?」
ルートのその提案に、ナーシェは戸惑っていたが、正直俺もこの先で何かが起こっているようで気になった。
「ナーシェ、どう思う?」
ナーシェは少し、考えてからゆっくりと口を開いた。
「……行きましょう、その代わり……」
ナーシェは少しうつむいている。怖いのは俺も同じだ。戦う手段も持っていないなら、無理もない。
「イーナちゃんに守ってもらいます!!」
ナーシェの目は輝いていた。
おい……




