171話 レェーヴ連合国代表
明くる日、私達は早速ローナン地方へ旅立つ為の支度を済ませていた。広大なシーアン国と言うだけあり、ローナンへ向かうとしても徒歩ではなかなか難しい。だが、私達には飛空船という強い味方がいる。
支度と言っても、荷物は飛空船に積み込んできたため、そこまで大きな準備というわけではない。だが、リンにとっては話は別である。
「す、すいませ~~ん!」
先に空港で待っていた私達の元へと、リンがやってきた。バッグをいくつも抱え、背中には、今にもはち切れそうなリュックを背負っていたリンは、息を切らしながら、私達の元へと駆けてきた。
「遅れてごめんなさい!荷物をまとめるのに思ったより時間がかかってしまって……!」
よく見ると、リンのバッグからは鍋やら謎の棒やらよくわからない物まで、飛び出している。家の荷物を全部詰め込んできたのかと思うほどに、大量の荷物を抱えながら息を切らすリンに、リンドヴルムが語りかける。
「リン、お前…… 荷物持って来すぎじゃないか?」
「ローナン地方は遠いですから……!何があっても大丈夫なようにと思っていたら……こんなになっちゃって……!」
「まあ……大丈夫だよ!飛空船で行くし!」
「私、飛空船に乗るの初めてなんです!」
空港についたリンは、ようやく息も整ってきたようだったが、今度は興奮で息を荒げていた。
「前にリーハイに来たときは、飛空船じゃなかったの?」
「はい!うちはお金もそんなになかったので……キャンプをしながら徒歩で来ました!一ヶ月くらいかかった記憶があります!」
「一ヶ月……」
それにしても、なかなかにリンはたくましい少女である。いや、これがこの国の人達にとっては普通なのかな……?
「じゃあ、まあ出発しようか!」
そして、全員揃ったところでようやく飛空船に向けて歩みを進めていく。すると、リンは不思議そうな表情を私達へと向ける。
「あの……」
「どうしたの?リン?忘れ物?」
ルカが戸惑っているようなリンに笑顔を向けながら問いかける。
「い、いえ…… 飛空船乗り場はあっちって書いてあるので……」
確かに看板に書いてある方向とは反対側へ私達は歩みを進めていた。リンの示した先、飛空船乗り場と書かれた先へと、人の流れは続いている。
「あー、まあ大丈夫だよ!こっちの方向で合ってるよ!」
戸惑いながらも私達についてくるリン。私達の向かった先は大きな扉が一つと、警備の兵士が何人も立っているだけの、行き止まりである。
「ちょっと待っててね!」
そう言いながら、私は1人で兵士達の元へと向かう。私に気付いていた兵士は敬礼をしながら、私に向かって声をかけてきた。
「イーナ殿!ご出発ですか?」
「うん、ローナン地方に向けてね!」
「お気をつけて!すでに王から話は聞いております!」
兵士がそう言うと、閉じていた大きな扉がゆっくりと音を立てながら開いていく。扉の先は外、眩しい光が私達の元へと差し込んでくる。扉が完全に開いたのを確認した後、私は皆の元へ戻り、皆に向けて声をかけた。
「じゃあ行こうか!」
「えっ……?行くってどこへ?」
リンは私が一体何を言っているのかわからないという様子で、終始戸惑っていた。外へ出ると、そこには軍用機であろう飛空船が数隻と、私達の飛空船が泊まっていた。
「リン!アレが私達の飛空船だよ!」
「わ、わたしたちの……?飛空船……?」
「そうだよ!アレに乗ってローナン地方に向かうんだ!一応住めるようにはなってるから……まあ、多少の長旅でも全然大丈夫!」
驚きのあまり、リンは未だ状況を読み込めていないようである。
「イ、イーナさん…… 一体…… 何者なんですか?」
「改めて自己紹介をさせて貰うね!私はアーストリア地方にあるレェーヴ連合国、代表のイーナ!長い旅になるけど、よろしくねリン!」




