163話 若き王の治める国
第6部スタートです!よろしくお願いします!
エンディアを旅立ち、私達は次なる目的地、シーアンへと向かっていた。特に、トラブルもなく飛行は順調である。この分だとシーアンへも予定通りたどり着くことが出来るだろう。
東の大国シーアン。世界で最も古くから栄えたと言われる国。私達の目的地ははそのシーアンの王がいると言われている、中心都市リーハイである。エンディアの女王であるイナンナから聞いた情報によると、シーアンはその広大すぎる国土故に、辺境の地までは王の権威が届いておらず、まだ把握されていない部分も多いらしい。だが、大国と言うだけあり、中心都市の規模は、アンドールの比ではないほどに大きく、その分活気も凄まじいとのことである。
正直、シーアンの事について何もわからない私達に一番必要なものは情報である。人や物の集まるリーハイでは様々な情報が得られるという、イナンナの助言もあり、王への挨拶も兼ねて、まずはリーハイへと向かうことに決めたのだ。
飛空船から見える風景も、移動するにつれて全く違う世界へと様変わりして行く。遠くには、ル・マンデウスよりも高い山々が連なり、眼下にはどこまでも続いているかと錯覚するような平野が広がっている。まさに今までの国々とは文字通りスケールが違うのだ。
ここに霊亀や鳳凰がいる。そう思うとわくわくしてたまらない。イナンナからもらった地図を頼りに、飛空船はリーハイに向けてどんどん進んでいく。
そして、しばらくの後、遠くからでも大都市だとわかるリーハイの街が見えてきたのだ。フリスディカも相当な大都市であったとはおもうが、まるで格が違う。
「ニャ!地図通りだと、あの奥に見える街並みがリーハイの街なのニャ!」
すっかり興奮するテオ。その気持ちも十分に理解できる。私は、それこそ現代で大都市を見慣れていたのもあり、そこまで驚くと言うことはなかったが、他の仲間達にとっては初めての経験なのである。遠くに見える、今まで見たことのないような街並みに、皆が目を奪われていた。
「イーナ様!アレ本当に一つの街なの!?ルカあんな街見たことないよ!」
「私もです……フリスディカなんてもんじゃないです……世界にこんな街があったなんて……」
それにしてもイナンナから、書状をもらえたというのは本当にありがたい話である。こんな巨大な街、あてもなく彷徨おうものなら、確実に迷子になると、それだけは自信を持って言える。
リーハイの空港に降り立った私達は、早速兵士達にエンディアからの書状を見せた。最初こそ、不審者扱いをされたものの、やはり女王の紹介と言うのは凄まじい。すんなりとシーアン国は私達を受け入れてくれたのだ。
「ようこそ!シーアンへ!イナンナ女王の紹介とあらば、私達も歓迎いたします」
そう言いながらも、兵士達は物騒な装備に身を包んでいた。エンディアの時と同じく、空港に降り立った直後、私達は兵士達に囲まれたのだ。シーアンの兵士達の態度は、エンディアのような紳士的なものではなかった。もしイナンナからの書状をもっていなかったら……想像するのも恐ろしい。
比較的、国同士の行き来にも開放的だったアーストリア連邦の国々とは異なり、東側の国はなかなかに警備が厳しい。聞けば、大国であり人口も多いシーアンはどうしても治安は良くないようで、武力に頼らざるを得ない所があるという。私は興味本位で、兵士の1人に尋ねてみた。
「もし、私達が書状をもっていなかったら…… どうなってたの?」
「そうですね、おそらく不審者として投獄は免れなかったでしょう。ただでさえ今は国内も不安定ですので……」
国内も不安定……? この国も何か問題を抱えているようだ。あまり深く突っ込むのも気が引けたので、それ以上追求をする事はしなかった。いずれにしても、この街で調査をして行けばわかることであろう。
どこの国も王宮というのは豪華絢爛である。シーアンの王宮も例に漏れず、そうであった。私達の目の前にいる男、まだ若いにも関わらず、この大国の王にまで上り詰めたワンは、私達の来訪を歓迎してくれた。
「イナンナ女王からの書状受け取りました。はるばる西国から、遠いところまでお越し頂きありがとうございます。是非とも私達もレェーヴ連合とは良い関係を築いていきたいと思っております。これから是非よろしくお願いいたします」
ワンは見た目こそ、若い今時の青年といった感じであったが、やはりこの大国を治める者と言うだけあって、立ち振る舞いや言動に気品が溢れていた。私も見習わなくては……
「こちらこそ盛大な歓迎感謝いたします。私達もまだ歩み出したばかり。ぜひとも友好な関係を築いていければとおもいますのでよろしくお願いいたします」
私も出来るだけ丁寧に言葉を返す。国と国との関係は舐められては負けだ。もちろん、ワンは見た目通り誠実な男であると信じてはいるが、ここまで大きい国となっては、おそらく体制も一枚岩というわけではないだろう。もう敵を作るというのはこりごりであるし……
「せっかく来て頂いたところ申し訳ございませんが、今日は少々忙しいので…… また、お話の出来る日をご用意させて頂きます。それまで、どうかシーアン国を楽しんで頂ければ…… 近いうちに使いの者を出します故……」
ワンは忙しい中でも、挨拶の時間を作ってくれたようである。飛び込みできた私達にも丁寧に対応してくれた。それだけでも感謝の言葉もない。
その日は挨拶も早々に済ませ、私達はワン達が用意してくれた宿へと向かったのである。




