162話 The End of the Journey, the Beginning of the Journey
第5部完結です!
エンディア国の首都、アンドールへと戻ってきた私達。雷を呼ぶとされる麒麟は結局、私達とは一緒には来なかった。彼は雷鳴山でこれからも暮らしていくという。それでも、もう彼は決して1人というわけではない。エンディア女王と麒麟の約束は、私達を保証人として確かに結ばれたのだ。
エンディア国に帰ってきたイナンナを国民は温かく迎えてくれた。結局神になることは出来なかったイナンナであったが、誰も彼女を悪く言うものはいなかった。むしろ、人の身で帰ってきてくれたことを、国民全員が喜んだのである。
おそらくもう、神として祀られるものがエンディア国から出てくることはないだろう。
アンドールへ帰ったからと行って、私達もゆっくりしている時間は無い。私達の目的はさらに東、シーアンにある。思ったよりもエンディアに長く滞在してしまうことにはなったが、そのお陰でこうして麒麟と出会うことが出来たし、何よりエンディア国とのつながりが出来たと言うことが何よりも私達にとっては大きかった。
「イーナさん、皆様、この度は本当にありがとうございました」
アンドールへと帰った翌日、早速私達は、水の宮殿でイナンナと話をしていた。名残惜しくもあったが、そろそろ私達も出発しなければならない。もうすでに飛空船のエネルギーは満タンまで溜まっていたのだ。水の宮殿に来たのも、イナンナ達に出発するという挨拶をしにきたのだ。
「皆様には、本当にお世話になりました。こうして、私がここにいられるのも皆様のおかげです。それに、麒麟のこと。きっとこれからは彼とも良い関係を築いていけるでしょう……」
麒麟との別れ際。彼は私達にも一つの約束をしてくれたのだ。
そもそも、何故私達がはるばるエンディア国まで来たのか。世界を滅ぼしうる力の存在。そして使徒と呼ばれる者達。麒麟にもそのキーワードについて、尋ねてみたが、彼もわからなかったようだ。
だが、もし彼の力が必要になったとき、その時には必ず助けになる。彼は確かにそう私達に約束してくれたのだ。
「あなた方は、すぐにシーアンに向けて出発するおつもりでしょう。すでに、約束のものは用意しておきました」
イナンナの言葉に、姿を現したのはシュクルであった。シュクルの手元には、イナンナの紹介状、シーアンの王に向けての書状が用意されていた。
「ありがとうイナンナさん!本当はもっとゆっくりしていたいんだけど…… あまり時間も無くて……」
「わかっています。こちらこそ、これくらいでしかあなた方の力になれなくて申し訳ないのですが…… また、事が落ち着いたときには、ぜひエンディアに訪れてくださいね!」
「ぜひそうさせて頂きます!国同士の話のこともありますし……! また詳しくはその時に……!」
今回私達が得られたものは、麒麟の力だけではない。私達レェーヴ連合とエンディア国の間で友好関係が結ばれた。それは私達にとって何よりも大きな事である。なんと言ってもエンディア国は歴史ある大国。その国と良い関係を築けるというのは、レェーヴ連合のような新しい国にとって、非常に大きなものになる。
「ぜひ、またこの国を訪れてくださいね!約束ですよ!」
………………………………………
イナンナに挨拶を終え、書状を受け取った私達は、飛空船へと乗り込んだ。
「ねえ、イーナ様!エンディア国いいところだったね!」
「そうだねルカ!また絶対来ようね!」
ルカは満面の笑みで頷いた。一方で少し、不満そうな表情を浮かべていたのはリンドヴルムである。
「リンドヴルム?どうしたの?」
「修行やらなんやらで、ほとんど酒も楽しめなかった……おい、イーナまた来るときは絶対俺も連れてこいよ!」
「全く、リンドヴルム様……」
私の言葉を代弁してくれたのはルウである。だが、まあ今度は観光に来るというのも悪くはない。是非とも皆で来たいものだ。
「ニャ!そろそろ出発の準備が整うのニャ!」
離陸の準備は整った。次なる目的地はシーアン。一体今度はどんな出会いが待っているのだろうか。期待に胸を膨らませながら、私は皆に声をかける。
「じゃあそろそろ行こうか!ちょっと遅くなっちゃったけど、シーアンに向けて……」
「しゅっぱーつ!」
ここまでお読み頂いた皆さんへ。
いつもご覧頂きありがとうございます。
遂に第5部も終わり、次回からは第6部、新たな冒険と出会いのはじまりとなります。
重ねてにはなりますが、ここまで続けてこられたのも、いつもお読み頂いている皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
これから先、イーナ達にどんな出会いがあるのか、どんな出来事が待っているのか、作者である私自身、日々楽しみながら執筆させて頂いております。
今後も、ぜひ皆様にお楽しみ頂ければと思いますので、お付き合い頂ければ嬉しいです。もしよろしければ、応援のつもりで、ぽちっとブクマや評価、また感想など頂ければ嬉しいです!重ねて、こちらの方もよろしくお伝えさせて頂いて、ご挨拶とさせて頂きます。
今後とも、何卒よろしくお願いいたします。
惟名水月




