137話 Golden Peaks
第四部完結です!
「おお、イーナ!目が覚めたか!」
私は目覚めたあと、すぐにファフニールの元へと向かった。
「天上の台地で起こったこと、リンドヴルムとルウから聞いた。まずは礼を言わせて頂きたい。ありがとうイーナ」
深々と頭を下げるファフニールに、私は慌てて言葉を返す。
「お礼を言われるような事はしてません。結局ガルグイユは助けられなかったし……」
「ガルグイユ…… 惜しい人物を亡くしたな…… それでも、イーナがいなければ、もっと大惨事になっていたかもしれない。少なくても、ヨルムンガルドを認めさせたこと、期待以上だった。あと、一つ、病み上がりの所申し訳ないが、聞きたいことがある。ガルグイユを倒したという人間の事だが……」
リンドヴルムやルウにも詳しく話していない以上、ファフニールが彼らのことを知らないというのも当然であった。
「奴らは白の十字架…… 私もよく知りませんが、奴らは世界を滅ぼしうる力を復活させると言っていた…… 私も本当にこれしか知らないんです。ですが、奴らは私達モンスターをも上回る力を有している。本当かどうかはわからないですけど、放っておくワケにはいきません」
「世界を滅ぼしうる力か…… つまりは黒竜の始祖の力を狙ってきたと言うことか……?」
ファフニールが以前話してくれた黒竜の始祖。四つに分かれた四竜ですら化け物じみた力を有していたのにもかかわらず、それが一つになったとしたら、想像も出来ない。以前神話で聞いた、黒竜は大地を生み出したという、ばかげた話も、あらかた嘘ではないのかもしれない。だが……
「確かに、奴らは黒竜の血を求めていたとは言っていました。ですが、始祖の存在は一度も聞いたことがない。おそらく違うとは思います。それよりももっと恐ろしい何か……奴らはその秘密を握っているとは思います」
そう言うと、ファフニールは難しい顔で何かを考え始めたようで、しばらく無言が続いた後に、ゆっくりと口を開いた。
「まさかな……」
「何かわかるのですか?ファフニールさん」
「いや、確証はない。少しだけ時間をもらえないか。こちらも調べておく。だが、その前に、イーナ」
そう、ファフニールさんとの約束はまだ残っていた。まだ終わってはいないのだ。ファフニールさんの治療を無事に終えてこそ、全て終わったと言える。
「わかっています。良ければすぐに出発したい。リンドヴルムの所にいる、みんなも迎えに行かなきゃいけないので……」
「そうだな、仲間も心配しているだろう。よし、明日にでも出発しようじゃないか。スウ!ルウ!」
ファフニールが声を上げると、すぐにスウとルウが私達の元へと姿を現した。
「お呼びでしょうか。ファフニール様」
「お呼びでしょうか。ファフニール様」
「明日、イーナ達の国に向けて出発する。途中でリンドヴルムの所にも寄って、イーナの仲間と合流した後に、レェーヴ連合に向けて移動だ。イーナ達も乗せていくから、2人にも一緒に来て貰いたい。準備を頼む」
そう言うと、スウとルウは笑顔を浮かべ、ファフニールに向けて頷いた。
「わかりました。すぐに支度を致します」
「わかりました。すぐに支度を致します」
この子達は相変わらずだなあ…… だが、以前と違うのは、スウもルウも言葉の端々から何処か楽しそうな様子がうかがえた。スウとルウにとっても、外の世界に行く機会なんて滅多にないのだろう。私達の国に行くことを楽しみに思ってくれるのは、私もなんだか嬉しくなる。
「スウ、ルウ! 」
私の呼びかけに、支度をするために部屋を出ようとしていた2人が足を止め、こちらを見る。そんな2人に私は笑顔で言葉を贈った。
「もうしばらくお世話になります!よろしくお願いします!」
………………………………………
そして、出発の朝。
一足先に、自らの里へと戻ったリンドヴルム、そしてみんなと合流するべく、私とルカはルウの背にまたがっていた。もう1人の黒竜、スウは、ファフニールとナーシェを乗せてくれている。
「イーナ様。そろそろ飛びますよ」
「大丈夫だよ!ルウ!よろしくね!」
「まずはリンドヴルムの所へ向かう!スウ、ルウ頼んだぞ!」
ファフニールの言葉に、スウとルウは一斉に大空へと飛び上がった。次第に小さくなっていくファフニールの里を見ながら、私は感慨に耽っていた。すると、突然にルカが興奮した様子で、ル・マンデウスの頂上の方を指さし、私に向かって話しかけてきた。
「イーナ様!見て!山のてっぺんの所だけ晴れてるよ!」
ルカの指した先、天上の大地の上空はぽっかりと晴天が顔を覗かせており、頂上付近は日光を浴び、キラキラと黄金色に輝いていた。その光景を見たファフニールが、口を開いた。
「珍しいな…… ル・マンデウスの頂上が晴れるなんて、滅多にないのに……」
皆は黄金色に美しく輝くル・マンデウスにすっかり見とれていた。頂上の方には小さい米粒のようなサイズではあったが、確かに黒竜の姿があった。
ヨルムンガルド……
輪を描きながらゆっくりと雄大に飛ぶヨルムンガルド。そして、もう一匹、私には黒竜が見えた気がしたのだ。
ガルグイユ……?
「イーナ様。確かに私にも見えましたよ。2人の姿が……」
ルウが私の心を見透かしたかのように、嬉しそうな様子で、私にそう言ってきた。
「そうだね!ルウ!」
互いに笑い合う私とルウ。その様子をみんなは不思議そうな表情を浮かべ見つめていた。これは、私とルウ、そしてリンドヴルムしか知らない秘密。
そして、一瞬だけ、その美しい山肌を見せていたル・マンデウスの姿は、再び厚い雲の中へと消えていった。
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惟名水月




