表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/223

13話 ヴァンパイア


 夜の漆黒に紛れるような黒のマントに身を包んだ、その男の目は赤く輝いていた。

 その手には、大きな鎌のような武器が握られ、よく見ると、目から血の涙が流れている。


「ヴァンパイア……」


 思わず呟く。


「人間……許さない……」


 ヴァンパイアとおぼしき若い男は、こちらが状況を理解する前に襲ってきた。その目はこちらを完全に殺しに来ている目だった。


 俺が持っていた龍神の剣を抜こうと背中に手を伸ばしたときには、もうすでにシータは剣を抜いており、俺の前に立っていた。


「俺がやる!まかせろ」


 そう言うと、シータはヴァンパイアが振り下ろす鎌を自身の龍神の剣で防ぎ、ヴァンパイアの左脇腹辺りに向かって剣を振る。


 ヴァンパイアもなかなか強者で、斬撃を鎌の柄で防ぐと少し分が悪いかと言った様子で距離を取る。


「人間のくせに強い…… お前らもやつらの仲間か……」


 どうやら冷静ではないらしい。話を聞いてみたかったがそんな場合でもなさそうだ。


「シータ!なんとかそいつと話がしたい、殺さないでくれるか?」


 俺がそう頼むと、シータは少し苦笑いしながら言った。


「なかなか、難しいかもな…… 奴は強いぞ」


「そうか、じゃあ俺も手伝うよ」


 俺は持っていた剣を抜き、ヴァンパイアの方に向けた。


「おい、俺と話をする気はないか?」


「人間と話すことなどない!」


「人間と?なら、人間じゃなきゃいいんだな?」


 少し屁理屈といえば屁理屈だったかも知れない。俺が剣に炎を宿すと、ヴァンパイアはその光景を見て、驚いた様子で叫んだ。


「なぜ、人間が魔法を使っているのだ!?」


「俺達は人間じゃないからな」


 俺に限って言えば、嘘である。まあでも半分はホントだ。


「もう一度聞く。俺はお前と話がしたい?だめか?」


 ヴァンパイアは少し迷った様子で、しばらく動かなかったが、構えていた武器を下ろし静かに口を開いた。


「いいだろう……」


 そして、なんとかその場は収まったのだ。


「ここでは目立つ、こっちへ来てくれるか?」


 ヴァンパイアの案内に従っていくと、道から少し外れた森の中に広場があった。中心にはたき火の跡のような、まだ燃え尽きていない木が数本集まっている場所があった。


「灯り付けて良いか?」


 俺が聞くと、彼は好きにしろとだけ言った。


 暗くて良く見えなかったが、火に照らされた、その男の目鼻立ちはくっきりと整っており、人間で言うと20代くらいの優しい男といった印象だった。


「さっき人間じゃ無いといったな?お前は一体何者だ?」


 ヴァンパイアは尋ねてきた。


「妖狐だよ。狐だ。後は龍と猫」


 俺の言葉に続いて、狐の姿になっていたルカは人間の姿へと変わった。


「なるほどな狐が化けていたのか」


「お前、ヴァンパイアだよな?灯りに当たっても大丈夫なのか?」


 ふと、俺は疑問に思ってたことを口にした。ヴァンパイアと言えば光に弱いイメージがあったからだ。


「大丈夫だ、ただ力は出せなくなる」


 ここで万が一、俺達に襲われたらどうするんだ……と思ったが口には出さなかった。実はこう見えて、なかなか純粋な青年なのかも知れない……


「それより、なんで人間を襲った?」


「俺達は元々、人間を襲ったことはなかった。そもそも、基本的にヴァンパイアは血は必要ない。たまに、森の動物を狩ることはあったが」


 さらに彼は話を続ける。


「少し前のことだ。その日俺は動物を狩りに1人で山に行っていた。すると突然、城の方から激しい音が鳴り響いた。なんだと思って戻ってみると人間達が城に来ていたんだ。奴らは話すこともせずに、城にいた俺の仲間達を武器を使って殺していった。俺はなにもすることが出来ずに隠れていることしか出来なかった」


 場が凍った。俺の脳裏には一つの可能性がよぎった。もしかしたら、アルラウネの里で出会ったあいつらなのかもしれないと。


「だから俺は人間に復讐する事を決めたんだ。あいつらをこの手で殺すために。それから、しばらくの間修行した。そのままでは絶対に勝てないと分かっていたから。そして俺は強くなった」


「それで人間を襲っていたのか?」


「そうだ、人間に復讐すると共に、俺の噂を流せば、また奴らも来るに違いない。そう思って俺は人間を襲うことにしたんだ」


「なんで、人間はお前らの所を襲ったんだ?ヴァンパイアは人間に関わらないで生きていたんだろ?」


 俺がそう尋ねると彼は少し興奮した様子で叫んだ。


「知らん!だからこそ、俺は人間が許せなかった」


 そういった彼は少し震えていた。


「何か、ヴァンパイアの城に人間が欲しがるものがあったのか……」


「ぴんぽ~~ん!」


 突然、聞いたこともない女の声が聞こえた。そして、次の瞬間俺達の目の前に2人の人間が現れた。


 1人は今の声の主だろう。透明感のある青い髪は、神社の縄のような髪留めでサイドテールに束ねられている。そして、六芒星に見える瞳は赤く輝き、明らかに人ではないことがわかった。


 もう1人、その男は確かに前に見たことがあった。そう、アルラウネの里を襲っていた2人組の男のうちの1人、黒髪の男であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on

『Re:わたし、九尾になりました!』
わたし、九尾になりました!のリメイク版になります!良かったらまたお読み頂ければ嬉しいです!





『memento mori』
新作になります!シーアン国のルカの物語になります!良かったらよろしくお願いいたします!




FOXTALE(Youtube書き下ろしMV)
わたし、九尾になりました!のテーマソング?なるものを作成しました!素敵なMVも描いて頂いたので、是非楽しんで頂ければと思います!

よろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ