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Shanghai Palace   作者: kamakura betty
7/14

シッタカ三昧

めめぞうはすでに到着していた。

外に向いたカウンターで背を向け

夕陽を映す漁港の水面をじっと見ている。

白いTシャツに色落ちしたブルージーンズ、

足元は素足に白のトレトン。

お団子にした潮焼けした髪はうなじにはらりと垂れ、

シーリングファンの微風に揺れている。

「ごめん、俺のほうが遅くなっちゃった」

「あ、寛ちゃん。いいよ私のほうが早く着いちゃっただけだから」

「めめぞう、うなじ細かったんだね。結構キテてるねぇ」

”キテる”というのはテレビ業界者が「いい感じ」と意味で使うらしく

いつの間にか一般の人達も使うようになっていた。

「また余計な!太いと思ってたの!!」

「ホメてるんだからいいじゃん」


ShanghaiPalaceの店内は日に焼けたシニアのヨットマンや

地元の家族連れなどでほぼ一杯になっている。

海水浴にやってきた人たちは宿泊しているところで出される

夕食を食べてるのが大半だから、

ここへはおのずと地元の人達と別荘族がやって来ることになる。

「寛ちゃん、レディを待たせちゃだめだよう。

今日は石田さん所のいいシッタカがいっぱい入ったからね。

何で食べたい?」

「あ、フウさん、お邪魔してます。もちろんお任せ。楽しみにしてる!」

「もうずっとお腹減らしてたのでよろしくおねがいします!」

「おお、じゃあうなじちゃんのために頑張るか!」

「もうフウさんまで!」


このお店の店主、フウさんは20年前に中国から下田にやってきて

同じ漁港の町中華『香港亭』でずっと住み込みでやってきたが

5年前にこの建物のオーナーから腕を買われて今の店を立ち上げ

店主として切り盛りしてきた。

地産の食材をあらゆる手段で仕事するその腕に惹かれて常連が通う。

「今日のシッタカはどんな形で出てくるのかなぁ?」

「茹でる、焼く、蒸す、揚げる、煮る…他に思いつかない」

「まさか中華じゃなくてエスカルゴ風とか?」

「あ、それ美味しそう!」

朝のプリモのことはすっかり忘れたのか、

今はまたもふたりで青島ビールを2本開けていた。

「おまたせ!もう2本も飲んだの!じゃあそれに合うと思うよ、

まずはマース煮。これって沖縄のやり方なんだけど、

地元の塩を使って煮る料理なんだよ。

今日は裏のみかんの葉っぱを入れて軽く火を通したてみたよ」

「みかんの葉っぱ!」

フウさんは二人の驚く顔を見てしたり顔で厨房へ消えていった。

「うわあ、ちゃんと香りがみかんだ!」

「トムヤムクンにこぶみかんの葉っぱが入ってるけど、あれだね。

潮の香りと柑橘の香りが凄い合うね」


もう一本青島ビールを開けたところで紹興酒に切り替えた。

お店がいつも切らすことのない甕出し紹興酒だ。

大量に買い付けているようでデキャンタで格安で出してくれる。

その後は下田の味噌蔵の味噌を塗って焼いた串や、

切り干し大根といっしょに焼いた卵焼き、

麻婆茄子には挽肉の代わりに軽く燻製したシッタカが入っていた。

締めはなんと手打ち中華麺のシッタカビアンコ。

「やっぱり天才だわフウさんって」

「本当、こっちにきた頃にマツに紹介してもらったけど、最初敷居が高くて

入り口でウロウロしてたらフウさんが扉開けて歓迎してくれて。

しかもこんな学生なのにいろんなのをまとめて

2000円でやってくれるんだからね」

「えー、今日ので一人2000円!」

「いやいやその倍お酒飲んでるんじゃない?」

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