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Shanghai Palace   作者: kamakura betty
4/14

プールサイドのハニーレッグ

頭に10フィートのボードを乗せ

メメぞうはサニーサイドダイナーを出、

砂交じりの芝生をしばらく歩くと、

この夏の居候先大浜ビーチインに着く。

キダチアロエの植え込みにボードを立てかけ

緑色のホースの先を指で潰しながら

ザブザブと水で海水を洗い流した。

空色のロングボード上に虹が出現し、

一瞬アーチで飾られる。


ボードが終わると自分の頭の上から

長いこと水をかけ、

蛍光ビキニの上下の中にもホースを入れる。

褐色のハニーレッグを水が這い、

ホースを抜くと水滴が玉になって伝い落ちた。

すでに肩の水滴は強烈な日差しに刺され蒸発していた。


ここは15m四方の小さなプールを囲む

平屋建てのバカンスB&B。

客は少なくとも1週間はここに滞在し、

想い想いに東日本最南端の渇いた夏を過ごす。

メメぞうはここで部屋の掃除や洗濯を

手伝うことでひと夏居させてもらってるのだ。


プール伝いに居候部屋を目指すと、

「メメちゃん、今日の波はどうだったの?

あんまりずっと海に入ってると

体がシワシワになっちゃうよ」

先週から1人で滞在している

クセ毛の白髪ミドル・須能さんが茶化すように

声をかけてくる。

東京で会社を持ってるが、

今は顧問としてたまに顔を出すくらいらしい。


こんな感じのノリだから

当然初日でニックネームを聞き出された。

それから毎日顔を合わせると何かしら声をかけてくる。

ここが出来た頃から毎年来ているそうで、

何から何まで熟知している。

「俺なんてご覧の通りシワシワだから参っちゃうよ。

ところで、明日は白浜神社のお祭りだよ。

よかったら乗せて行くけど?」

笑いながら言う通り艶のない上半身は

かつてあった肉付きが抜けたような

萎んだ感じになっているが、

よく陽に焼け品のいいネックレスを

しているおかげで貧相には見えない。


須能さんは東京から車でやってきている。

いくつか所有する中から

滞在中近場をあちこち動きやすいということで

ミニモークで来るのがお決まりだ。

ミニ社がかつて出していた

車高の低い小さなジープのようなタイプで、

幌を開けるとオープンになる。

メメぞうは赤いこの車が好きで

よく下田の街まで送ってもらったりしていた。

「ありがとう。

でも明日はターちゃんのところに行かなきゃいけないのよ」

もう一つここのオーナーに頼まれて

近所の小学生の夏の宿題手伝っている、

その曜日が明日なのだ。

「さすがにお祭りの日はお休みじゃない?」

「そうよね。聞いてみる」


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