アイスティと語り
大きなパラソルから少しだけ出た足先を
真上の太陽が照らすと、
微睡みから引き戻された。
まだ開けたくない目を開かせたのは、
照らされ火照った足先に
ポタポタ垂れる水滴。
「もう少し他人を気遣ったら?」
濡れた長い髪を撫で付けたメメぞうだった。
気づけばデッキは埋まっており
間原のテーブルだけ敬遠されるように
空いていた。
パラソルが作る日陰の円周半分以上を
彼の体と荷物が占領していた。
「ほんといつまでたっても変わらないわね。
脱いだ靴下の処理まで母親任せ。
話し出すと放課後帰ってからの
おやつの時間みたいに
その日にあった自分の話を
永遠と喋り続けるの。
彼女になる人はそれを全部負うのよね、
きっと」
足をどかされ空いたチェアに座った
メメぞうは
「何にも入ってないアイスティーを
大きめのグラスでお願い」
大きなカゴショルダーから
白いバスタオルを出し髪を拭きながら
潮で赤らんだ目をミラーで気にしている。
メメぞうという名前はその大きく二重の、
でも少しだけ垂れた目から
間原がつけた愛称だ。
「相変わらず吸い込まれそうな目だね」
「あなたを吸い込んだら
一生苦労しそうだわ。
語り尽くされる人生、あーやだ」
福田とベティがアイスティーを運んできたが
会釈で受け取ったメメぞうは
髪を拭き続けていた。
「けっこう俺の語りもいろんなところから
支持されるんだよ。
メメぞうくらいじゃない?そういうの」
大きなグラスから3口くらい飲むと
バスタオルを肩にかけ、
体ごと間原に向き直し
「私が変わってるってこと?
誰が支持してるのか言ってみてよ!」
「えーっと」
女性の名前を挙げ始めそうな間原を
うんざりした表情でメメぞうが制した。
「そういえば、
さっき源さんに聞いたんだけど
シッタカが沢山採れたから
パレスに卸しておいたって」
「えっ、ほんと!
きっとすごい料理になるんだろーな」
「どお、行ってみない?」
「行く行く!」
拍子抜けするくらい食が効いた。
「決まりだ!じゃあ、7時に現地で」