ルームナンバー
あの日、星空を見たあとの部屋は1009号だった。
親の契約してる部屋と聞いたから今回も同じ部屋に違いない。
マツは下田プリンスホテルの廊下をわくわくしながら歩いていた。
今日漁協に行く途中あの赤いBMWを見た。
ナンバーも間違いない、裕子のだ。
神社のおばちゃんも「女の人から電話があったよ」といってたので
また突然下田に来て驚かそうとしているのだろう。
持ってきた白のワインをドアのビュアーから見えないよう体の後ろに隠しチャイムを鳴らした。
「はーい」
確かに裕子の声だ。
ドアに近づきビュアーをのぞいている間を感じる。
が、すぐにドアが開き出てきた裕子はすぐにドアを閉めた。
マツの腕を引きビュアーから見えない位置まで移動した。
「どうしたの?びっくりしちゃった」
「昼間神社に電話くれたでしょ。車も見かけたから来てるなって」
「ダメなのよ」
「何が?」
「今回はフィアンセと来てるの」
ドアの向こうから男の「どうしたの?」という声がした。
「戻るね。こないだはいい思い出をありがとう」
そう言って裕子は消えた。
ドアの向こうから「ホテルの人が落とし物の主を探しにきたの」
という声が聞こえた。
冷えていた白ワインのボトルから水滴がももの裏をつたっていた。




