表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
80/181

発熱と悪い夢

短いので、閑話が入ってます。






 その晩は、熱が出た。


 俺はインドア派の割に身体が丈夫で、もう何年も寝込んだ記憶はない。久しぶりの発熱は、疼くような頰の鈍痛と共に俺の気力を奪って行く。


 何度も悪い夢を見て目がめる。ハルが狼に引き裂かれる夢、ハナがサラサスーンから消えてしまっている夢、ナナミが恐ろしい悪人面あくにんづらの男に斬りかかられる夢。


 こんなに的確に、俺の精神をえぐる攻撃を仕掛けてくるのは誰なんだよ!


 俺だ。


 俺が普段考えないようにしている、嫌な想像ばかりだ。


 うなされて目を醒まし、引きり込まれるように、また浅く眠る。


 途中、何度か苦いものを無理やり喉に流し込まれた。




 目が醒めると、俺の顔のすぐ目の前に、泣き腫らして眠るハルの顔があった。


 最近泣いてなかったのにな。ハルはハルなりに、何かの決心を持って涙をこらえていた。それがわかっていただけに、申し訳ない気持ちになった。


 しかし喉が渇いた。怠さと頭痛はあるが、たぶん熱は下がっている。俺の白血球さんは良い仕事をしてくれたらしい。


 破傷風や狂犬病は、確か潜伏期間せんぷくきかんがあったはずだ。狂犬病が発症した場合の死亡率は100%だから、もうどうしようもないんだけどな。


 額のタオルを取り、汗ばんだ顔を拭っていると、ハザンが抱き起こして水を飲ませてくれた。


 クッ!こんな弱った姿をコイツに見せるのは、なんかムカつくな!


 まあ、ありがたいんだけどさ。



 その日の午後には、フラフラしたが立ち上がれるようになった。アンガーが泣きそうな顔で様子を見に来てくれた。


 バカヤロー。おまえはハルのヒーローなんだから、しゃんとしてろよ。


 幌が壊れたのも、俺が怪我したのも、おまえの所為せいなんかじゃないだろ!


 ってな感じの事を伝えたかったが、頭回らないし喉も痛いし、面倒くさくなって手を伸ばすとアンガーの頭をぐしゃぐしゃとかき回し、バーカ、と言っておいた。


 たぶん伝わったはずだ。なんてな。


 晩メシはおかゆを食べる事が出来た。食後にヤーモに、また苦いモノを飲まされる。これが何かはおそらく聞かない方が良いだろう。熱冷ましで苦いとくれば、たぶんアレだ。土の中にいる、アレだ。


 次の日の朝には身体も軽くなった。そろそろリハビリがてらメシ係に復帰しよう。トレーニングもストレッチから再開だ。


 馬車は、明日には街道へと出る予定だ。



 ーーーーーーーーーーーー

 挿話〜ハザンのヒロト看病日記〜


 ヒロトが怪我をした。目の下から顎にかけて灰色狼の爪にザックリとやられた。こめかみの大きな血管や、目に傷がつかなかったのは良かったが、たぶんかなり目立つあとが残るだろう。


 夜半から熱が出て、うなされて何度も目をます。ヤーモが熱冷ましだという、ミミズのせんじたやつを飲ませていた。


 うなされて、故郷の言葉でうわ言を繰り返す。さっぱり意味はわからなかったが、聞き取れる言葉もあった。「ハル」「ハナ」「ナナミ」だ。こいつにとって家族は、よっぽど大切なんだな。


 自分の子供が可愛いのはなんとなくわかる。俺もハルは可愛い。だが、嫁ってぇのはよくわからねぇ。所詮しょせん他人じゃねぇか。


 俺にとって女は、あったかくて柔らかくて気持ちいいものだ。あと金がかかって、面倒くせぇ。ヒロトにとっては違うのか? 違うんだろうな。


 キャラバン唯一ゆいいつ妻子さいし持ちのガンザに聞いてみた。そしたら、


「ハザン、おまえ女にれた事がないのか?」と、逆に質問された。


「まあ、ヒロトみたいに子供が2人もいるのに、れた腫れたとか言ってる夫婦はあんまりないけどな」


 俺んとことは大違いだ、と言ってガハハと笑った。


 俺は、自分が万が一女に惚れて、ヒロトみたいになったらなんだか面倒くせぇな、と思った。


 だが、そんな女に出会えたヒロトが、羨ましい気もした。


 まあ、一瞬そんな気がしただけなんだけどな。


本話にて第2章終了です。ここまで読んで頂き、ありがとうございます!しばらく茜岩谷の大岩の家でのんびりしたり、キャラバンの面々と騒いだりして過ごします。


そしてまた、旅です。今度の旅では、どんな風景に出会えるのでしょう。どんな出会いが待っているのでしょう。そしてナナミさんと会う事は出来るのでしょうか。


ヒロトやハルと一緒に異世界の旅を楽しんで頂けたらと思います。


どんな感想も糧となります。評価は指標となります。ブクマ登録は、続きを読みたいと思って下さる意思表示と思い、とても励みになります。よかったら評価、感想、ブクマ登録、よろしくお願い致します。


注)ブックマーク登録は各ページの左上に、評価・感想欄は最新話の1番下にあります。ちなみに、評価・レビューはアカウント登録が必要です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ