表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
78/181

灰色狼の群れ 前編

動物を殺す描写があります。出血を連想させるシーンがあります。刺激は全然強くないですが、苦手な方はご注意を。

 スリングは鉄の玉を打ち出す。弓矢のやじりのようにとがっている訳ではないので、当然刺したり切ったりの攻撃は出来ない。遠距離からの打撃系武器、と言ったカテゴリだろうか。


 狩りをしていてわかった事は、動物の毛皮はけっこう防御力が高いという事だ。熊のように肉が厚く毛の硬い動物を相手にしたら、たぶん大したダメージを与える事は出来ないだろう。


 大切なのは狙う場所だ。どんな動物でも目と鼻には毛が生えていない。あとは眉間みけん。眉間はどんな動物も急所だ。ここを集中的に狙う。多少外れても、頭に当たれば脳震のうしんとうを起こしてフラフラになる。その間に逃げるなり、とどめを刺すなりすれば良い。


 俺とハルは命中率を上げる事、連射速度を上げる事を目標にしてきた。




 こんなにもスリングの事ばかり考えてしまうのは、今現在戦闘中だからだろうか。俺は集中したり、追い詰められたりすればする程、色々な事を考えてしまう。無我むがの境地は程遠ほどとおいな。





 夕焼けがはじまっても野営の場所が見つからず、仕方なしに道の端に馬車を寄せた時だった。狼の遠吠えが遠く近くで聞こえたかと思うと、行く手をさえぎるように大きな灰色狼が数頭、姿を現した。


 馬車はそう簡単にUターン出来ない。わかってやっているとしたら、頭の良い生き物だ。


 さらに遠吠えが吠え交わされ、やがて馬車はすっかり狼の群れに囲まれてしまった。日が沈み、暮れはじめた辺りに低く威嚇いかくの声がひびく。


 ロレンとガンザが弓を持ち、ほろの上に登る。俺たちの馬車の御者をしていたアンガーが、クーを毛布で包んで背負う。ハルが心配そうにアンガーの名前を呼ぶと、


「大丈夫、俺が絶対にクーを守る」と言って、ひらりと馬車を飛び降りて行った。ハザンが「ヒロトとハルも幌から応戦してくれ。狼は幌の上には届かない」と言って走って行く。


 俺はハザンが俺と、ましてやハルを戦力として数えた事に少し驚いた。信頼してくれているのか、それともそれだけ事態が逼迫ひっぱくしているのか。どちらにしてもやるしかない。今ならまだ外は明るさが残っている。闇に沈んでしまえば、夜目の効かない俺たちにはすべがない。


 俺とハルはスリングと、持てるだけの玉を腰ベルトの物入れに入れ、素早く幌に登った。近接戦闘の出来るハザン、トプル、ヤーモ、アンガーは馬を守って戦っている。馬車の側面を壁につけていたので、完全に囲まれていないのは好材料だろう。


「ハル、遠くのやつから狙え!」


「うん! 頭だよね?」


 ロレンとガンザの矢の数を考えると、無駄打ちは出来ないだろう。手数ならスリングは弓矢に負けはしない。


 狼の狩りは波状攻撃はじょうこうげきだ。決して致命傷を狙わず、入れ替わり立ち替わり襲いかかり少しずつ体力を奪う。


 俺とハルはゴーグルを装着し、草むらや木の陰で様子を伺っているやつを片っ端から打った。


 倒れる個体は少なかったが「キャウン」と鳴き逃げて行くやつらは結構いた。ハルも落ち着いて丁寧に狙いをつけている。


 その間にも遠吠えの声が響く。まだ集まって来るのか? すでに30頭前後は相手にしている。


 ハザンは数歩前に出ていて、狼を誘うように立ち、隙と見て跳び掛かってくるやつを危なげなく倒して行く。


 トプル、アンガー、ヤーモはそれぞれ馬を守っていて、やはり跳び掛かってくるやつに対処する。同時攻撃を仕掛けてくるやつには、ロレンとガンザが弓矢を放つ。俺とハルは遠巻きにしている奴らを追い払う。


 そんな奇妙な均衡がやぶれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ