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おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
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キャラバンの日常

 ドルンゾ山に入って7日目。明日には下りに差し掛かるだろうという日の午後。昼メシの後片付けを終えた俺とハルは、ヤーモと3人で森に入った。薬草や食べられる野草を補充したかったのと、狩りの実践訓練じっせんくんれんだ。


 俺はなるべくできる事を増やしたかった。ナナミがキャラバンのルートがある街にいるとは限らない。俺たちだけで旅をしなくてはならない時が来るかも知れない。


 野草や山菜、キノコや薬草は、スマホで写真を撮り、以前図書館で調べた情報と併せて、より実用的な図鑑ずかんを作っている。


 さゆりさんの単語帳も、追加や追記をどんどん増やしている。文字も、もの凄く時間を掛ければ、ひと通り読んだり書いたりも出来るようになって来た。


 ただしハザンの書いた文字は、さっぱり読めない。トプルに言ったら、俺でも読めないと笑っていた。



 森に入ってしばらく歩くと、ひまわりの群生地を見つけた。種が食べられるし、しぼれば油が採れるはずだ。咲き終わって下を向いた花を探して全部カゴに入れる。油がたくさんあれば揚げ物が出来るぞ!


 ヤーモが蜜蜂の巣を見つけ、採ると言う。俺とハルは戦々恐々として見守った(すごく遠くから)。2人してゴーグルを装着してピントを合わせて見物していると、ヤーモは荷物入れから麻袋を出し、巣を無造作にポンポンと入れて行く。袋の口を縛ってブンブンと振り回す。


 袋の口を開いて中身を一旦全部出すと、蜜蜂はどうやら目を回していて飛べないらしく、ノロノロと這い回っている。巣だけ回収してご機嫌な様子で歩いて来た。


「蜂の子をバターでいためると美味いよ」と言った。それ俺がやるのか? えー、勘弁して欲しい。


 蜂の巣に関しては、全面的にヤーモに任せる事にした。俺もまだまだだな。


 今日の森は面白いものが採れた。その分狩りの獲物はゼロだったが。


 馬車の中でハルが、かけ算九九をそらんじながらひまわりの種を剥く。乾煎からいりして塩を振ってオヤツにするのだ。


 クーが時折ハルの九九に「メェー」と合いの手を入れたり、鼻息で種のからを吹き飛ばしたりして邪魔をする。


 剣の手入れをしていたハザンが、「ハルの歌ってるの、おまえらの故郷の歌か?」と聞いて来た。


 数え唄みたいなもんだ、と答えると、


「へー! 教えてくれよ!」と言った。


 歌として教えるのは簡単だが、かけ算の概念がいねんを説明出来る異世界ボギャブラリーは、俺にはないな。今度ロレンにでも相談してみよう。


 夕暮れ前に小川を見つけたので、今日はそこで野営する事になった。早速テントを貼り、石を組んでかまどを作る。


 仕入れたチョマ族の毛織り物を使ったら、テントの保温性と快適度が格段かくだんに上がったらしく、身体の大きな護衛4人は今もテントで寝ている。


 今日は肉狩れなかったからな! 魚料理にするか。鮭っぽい魚の塩漬けを水で良く洗う。オレンジ色の切り身で、味はまんま鮭。じゃあ鮭でいいじゃん、とも思うのだが、実はこの魚、触手のような足が付いているのだ。


 海から川底を歩いて故郷の川へと帰り卵を産むそうだ。泳げよ魚なんだから! と、俺が突っ込んだら、ハルが、「鮭の事情は、ぼくらにはわからないよ」と言っていたのが印象的だ。


 ハルくん、深いな!


 さて、そんな鮭を今日はムニエルにする。塩漬けなので胡椒こしょうのみ振りかけ小麦粉をまぶして、バターで表面がカリッとするまで焼く。すり潰したひまわりの種とレモンでソースを作ってみた。


 ヤーモが隣で蜂の子を炒めているが、見ないようにする。


 ハル、ジャガイモすり下ろしてくれ。ああ、ひとつでいいよ。ここのジャガイモでかいから。


 ミニ大根を千切りにして、ゴマ油と砕いたひまわりの種をえる。塩胡椒でさっぱり大根サラダ。


 冷えてきたので身体の温まる生姜を使ったスープを作ろう。玉ねぎと卵のジンジャースープ。卵はこれでおしまいだ。


 ハルがジャガイモをすり下ろし終わったので、塩と一緒に薄いパンの生地に練りこんで焼く。


 ヤーモ! 蜂の子、ムニエルの皿に入れんのやめてくれ!


 ーーーーーーーーーーーーーー

 今日のメニュー


 朝 千切った干物と大根葉のお茶漬け、ピクルス


 昼 ベーコンとキャベツのスープパスタ、ピクルス


 夜 歩き鮭のムニエル レモンソース添え(蜂の子のバター炒め)、大根とひまわりの種のサラダ、卵のジンジャースープ、ジャガイモ入りの薄いパン


 トマトがなくなって、スープがワンパターンになりがち。卵も牛乳も切れた。ドルンゾ山のふもとの村まであと3日。なんとか工夫して乗り切ろう。



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