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おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
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閑話〜ハルの学習計画と日本の事〜



 ある日の午後の事だ。午前中に谷越えを済ませ、俺的にはドルンゾ山最大の難所を越えたとホッと胸を撫で下ろしていた。


 クーは毛布で包み、アンガーが腹に括り付けて渡った。ハルはまた俺と一緒だ。不意打ちのようにブランコに乗せられた前回と違い、考える時間がある分、逃げ出したい気持ちがつのった。


 絶叫マシーンの列に並んでいる時の、あの感じだ。ちなみに、ハルには今回も内緒にした。目隠しされた時点で気付いただろうが。


 ところがハルは滑空途中で目隠しを外したらしく、俺が心の中でブランコを作ったやつを呪う言葉を呟いていると、


「おとーさん、すごい景色だよ! 空をとんでるみたいだ!」


 と言って、両手を羽のように広げていた。


 まあ確かにな。あと5回くらい乗ればお父さんも景色を楽しむ余裕ができるかも知れない。あと5回も乗るのは勘弁して欲しいけど。



 谷を越えれば、シュメリルールまでのあと半分。俺はラッカを爪弾きながら、サラサスーンに戻ってからの事や、次の旅の事をつらつらと考えていた。


 そしてふと、ハルが勉強をしていない事を思い出した。ハルはよくさゆりさんの単語帳を開いて、言葉の練習をしていたし、俺と一緒に文字の勉強もしていた。だから全然気付かなかった。


 そう、日本の小学2年生としての勉強の話だ。


 日本ではとうに夏休みが終わって、学校が始まっている時期だ。もし日本に帰れた時の事を考えると、漢字も書けず計算も出来ませんでは暮らしていけないだろう。


 地理や歴史、生物や科学は微妙だな。第一、俺に何が教えられるのか。雑学程度の話を寝る前にでもするしかないな。


 算数は小学生レベルならイケるだろう。漢字はスマホの辞書機能が生きている。


「という訳で、ハルくん! 今日から算数と国語の授業をする事にします」


 俺が唐突に言うと、


「あーあ、おとーさん、ぼくが勉強してないの思い出しちゃったんだ」と言った。


 ハル、気づいてたのか?


 小学2年生の算数は確か、足し算引き算の筆算とかけ算九九。漢字はハルに書ける漢字を全部書き出させて、知らない漢字を教えていく事にする。作文や朗読もやった方がいいかな。その辺はおいおい考えて行こう。


「そう言えばさ、ヘチマもう枯れちゃったかな」


 ふと思い出したようにハルが言った。夏休みの宿題で、観察日記を付けていたヘチマの話だ。あれから2ヶ月以上経つ。枯れてパリパリになっている事だろう。


 俺はヘチマの鉢の置いてあったベランダと、東京の家や、日本の知り合いの事を久し振りに思い出した。


 一家四人が突然行方不明なってしまったのだ。それなりに騒動になっているだろう。ニュースになったり、ネットで話題になったりしているかも知れない。


 うちはペットを飼っていなかったので、本当に良かったと思う。冷蔵庫の中身や観葉植物の事が少し気にかかる。


 迷惑をかけてしまったのは、ナナミの職場である病院と、俺の仕事関係だろうか。いくつかの小説の挿絵さしえと表紙絵、絵本の仕事、あとはスマホゲームのキャラデザインの企画が進んでいたはずだ。


 ハナの保育園やハルの学校、ナナミの両親や兄弟たち。俺の姉貴と親父。みんなに心配をかけている事を思うと、なんとも心苦しい。


 俺もハルも元気でやっています。ハナも知り合いの家で楽しく暮らしいています。ナナミとは訳あって離れてしまっていますが、きっと迎えに行きます。俺たちは大丈夫なので、あまり心配しないで下さい。


 俺はそんな事を、心の中でつぶいてみた。


あまり知られてはいませんが、谷ブランコはチョマ族が管理しています。こんな危険なメンテナンスは翼を持つ人でなければ出来ませんからね。


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