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おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
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玉ねぎと狼

 この世界には、ゴリラ、チンパンジー、オラウータンなどの大型・中型の霊長類れいちょうるいの人はいない。俺とハルの耳を見て、ハザンが驚いていたのはそのためだろう。


 リスザルやキツネザルなどの、耳に毛が生えていて尻尾が長い「猿の人」はいるらしい。


 それはつまり、猿から霊長類、そして「猿の人」への進化は、この世界では起きなかったという事ではないだろうか。


 同じように言うと、例えば狐から「狐の人」へと進化する過程で、ある程度人間に近いと思われる狐種の動物もいない。


 ミッシングリンクにしては大き過ぎる。


 この世界の動物と多種多様な「獣の人」は、全く関わり合いのない生物なのではないだろうか。


 まるで、違う星の生き物を一緒の箱庭に入れてしまったみたいだ。


 そんな事を考え込んでいたら、うっかり玉ねぎのみじん切りを鍋に山盛り作ってしまった。もちろん俺はゴーグルを装着しているので平気だが、鼻が敏感な獣の人たちには刺激が強過ぎたらしい。


 ハザンは離れたところから


「なんだ! やる気か!」と言いながらも更にどんどん離れて行くし、ロレンは涙目でタオルを鼻に当て


「ヒロト、話し合いましょう」とか言っている。


 特に嗅覚の鋭いヤーモは、鼻を押さえてうずくまったまま動かない。大丈夫だろうか。


 今日はウサギ肉のハンバーグを作ろうと思っていたのだが、それだけでは余るな。腸詰め入りの玉ねぎスープ、まだ余るな。タルタルソースでも作るか? とりあえず熱を通さない分は水で晒しておく。そのうち刺激臭も収まるだろう。


 ちなみにこの世界の犬系の人は、玉ねぎを食べても中毒にはならないらしい。



 あの後、ハザンへのカミングアウトがひと通り済んで、この際だからと獣の姿を見せてくれるよう頼んでみた。ハザンは、割とあっさりと了承りょうしょうしてくれた。


 そしてなぜか服を脱ぎ始めた。なんでだよ!


「脱ぐ、なぜか?」と聞くと、


「あ? だってどうせ見せるんだろ?」と言った。


 やはりこの世界の人にとって、獣の姿を見せる事は肌を晒す事と同意らしい。俺はさゆりさんになんて事を頼んでしまったんだ。


 まあそれはさて置き、ハザンはとりあえず服を着ろ! そしてあっちの物陰ものかげで獣の姿になってから見せてくれ。おまえの裸は見たくない。見たいのは獣の姿だ。



 木箱の山の向こうから、白と黒の毛の混じる大きな狼がのそりと顔を出した。毛色や、黒で縁取りされた白い耳、金色の瞳は確かにハザンのものだ。


 ハルが「ハザン! カッコイイ! すごい!」と、目をキラキラさせて言う。


 狼ハザンの口元が少しゆるんで見えるのは、気のせいだろうか。


 確かに自転車程もある立派な体躯たいくといい、豊かな毛並みといい、雄々(おお)しくそして美しい。ハルでなくとも見惚みほれるくらいだ。


「話せるのか?」と聞くと、首を横に振る。


「言ってる事、わかるか?」コクリと頷く。


 ハルが「触る、いい?」と聞くと、またコクリと頷く。


 ハルは恐る恐る、狼ハザンの首のあたりを触る。手触りを確かめ、顔を近づけ匂いを嗅ぐ。


「うん! ハザンだ」


 おまえも犬みたいだな、ハル!



 ーーーーーーーーーーーーーー

 今日のメニュー


 朝 干物、おにぎり、ピクルス


 昼 アボカドと大葉のパスタ、キノコのスープ


 夜 ウサギ肉のタルタルハンバーグ、玉ねぎと腸詰めのスープ、玉ねぎとニンニク入り薄いパン、ピクルス


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