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天の助けか地の罠か

 なかなか泣き止まないハナの背中をトントンしながら、散らばった焚き木を集める。ポケットからミニライトを出して辺りを照らし、耳と目をらして暗闇を見つめる。

 こんな超常現象に巻き込まれたにも関わらず、俺には気配察知とか索敵なんてスキルは生えてこないらしい。


 何も見えないし、聞こえない。虫の鳴き声さえ止んで、耳がおかしくなったのかと思うほど、あたりは静まり返っている。


 俺が戻ってくると、ハルは目を赤くして、ちょっと恥ずかしそうに顔をらした。


「ハル頑張ったな。ちゃんとラケット花火スペシャル、当たったな。お父さん、お前が居て心強かったよ」


「嘘だ! ぶるぶる震えてただけだ‥‥」


「嘘じゃないさ。ハルと2人で武器を作って、そんで2人でハナを守ったんだ。お母さんに会ったら自慢しよう」


「おとーさんは、ラケットで犬をやっつけて、すごくカッコよかったのに」


 ハルは自分の不甲斐ふがいなさを恥じるように言った。8歳の子供が、あんなでかい狼みたいな犬に平気で立ち向かうなんて、物語の中だけだろう? ハルは充分頑張った。


 それにしても、良いな! 『お父さんカッコイイ!』。世のお父さんが、息子に言われたみたい台詞おそらく第1位だろう。今の言葉だけで、お父さんこの先10年頑張れる気がするよ!




「おとーさん、アレ見て!」


 ハルの指差す方を見ると、ゆらゆらと灯りが揺れていた。そしてどうやら近づいて来る。


 俺は手早くラケットやらペットボトルやらをリュックに入れ背負い、ハルの手を握る。


 走って逃げるか?


 すると


「おーい」とか「ほーい」


 とかいう、少し気の抜けた声が聞こえてきた。

 そしてカンテラのような、提灯ちょうちんのようなものを持ったじーさんが、焚火の前にスルリと現れた。


 助かったー!


 と思ったのもつかの間。


「△◯☆ー? ◯◯▽◯☆?」


 何を言っているのか、全然分からなかった。英語でも中国語でも、スペイン語でもない。ポンチョを着ているから、ケチュア語とかだろうか。だとしたらお手上げだ。


 だが、それよりも気になるのは頭の上にあるものだ。


「ねぇおとーさん、あの耳、動いてるよね?」


 じーさんの頭の、ネコ耳。警戒してのか? ピコッと後ろ向いてパタパタしてる。


 質感といい、動きといい、とても作り物とは思えない。逆に作り物だとしたら凄い技術だと思う。でも普通の素朴なポンチョ着たじーさんが、そんな高性能な耳を頭に付けてどうしようって言うんだ? それなんか怖い!


 本物だったら? ネコ耳が? 世界不思議発見!? 知られざる独自の進化をげた、秘境の少数民族とかそーゆーの? 肉食だったらどーしよう! 怖い!


 俺はここまでを僅か3秒で考えた。ネコ耳についてこんなに考えたのも、初対面のじーさんについてこんなに考えたのも、おそらく生まれて初めてだ。考えが頭を駆け巡ると言うのは、こういう事なんだと思った。


 そしてどっちのパターンもちょっと怖かった。


 俺たちとネコ耳じーさんの間に、微妙な空気が流れた。



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