表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
64/181

ロレン店長と

 ハルと2人、大急ぎで海から戻ると、宿屋のソファでロレン店長が本を読んでいた。息を切らして入ってきた俺たちに気付き、顔を上げて立ち上がる。


「ロレン、待たせる、ごめん」


 頭を下げると、「大丈夫、それほど待っていませんよ」と笑ってくれた。


「海、きれいで、遊びすぎ、ぼくがわるい」


 ハルがわたわたと説明する。


「コレ、おみやげ、ロレン」と、薄い緑色の小さな貝殻を見せる。


「目の色、同じ、きれい」と、少しおずおずと手渡す。


「私の目の色ですか?」


 ハルがコクンと頷く。


 ロレン店長はソファに手を突いてフルフルと震えている。


 俺は思った。


 ああ、落ちたな、と。


「ハルくん、ありがとう! とても嬉しいです。さあ、美味おいしいものを食べに行きましょう! 何でも好きなものを食べて下さい!」


 ロレン店長がハルの手を取って歩き出す。うむ、流石さすがだハル! ずっきゅんハルくんの名は伊達だてじゃないな!




 ラーザの海の幸は、どれもとても美味うまかった。


 赤い皮の魚は身がホロホロと柔らかく、酸っぱくてピリっと後味の辛いタレと良く合った。貝を殻ごと炊き込んだ米料理は、コックリと味が濃く、シャキシャキの葉野菜で包んで食べると、また違う味わいがある。


 甲殻類っぽい小ぶりな何かは、毒々しい紫色にビビったが、噛むとプツリと歯応えがあり、トロリとクリーミーな何かが口いっぱいに広がった。


 何か、について聞くのはやめておいた。


 ロレン店長はハルが美味しそうに食べるのを、ニコニコ眺めながら、次々に料理を勧めてくれた。そしてハルがトイレに立ったタイミングで、少し真面目な顔になり、


「ヒロト、教会へは行ったのですか?」と、聞いてきた。


「奥様の足取りは?」


「全然」


 俺がそう答えるとしばらく考え事をして、


「うちのキャラバンは、まだ他にも海へのルートを持っています。また参加して下さい」


 と言った。難しい言い回しもあったが、おおむね理解出来た。願っても無い提案だ。


 俺は「お世話になります」と頭を下げた。


「あなたは自分で思っているより、ずっと有能ですよ」


 うむ。褒められているような気がするが。ロレン店長の話し方は、丁寧な分難しい。


「キャラバンでヒロトが、役に立っているという意味です」


 俺が理解できずにいる事に気付いたのか、ゆっくりといい直してくれた。


 ハルがトイレから戻ると、デザートが運ばれてきた。もうおなかいっぱいで食べられないと言うと、お土産用に包んでくれた。


 店を出て、2人でご馳走ちそうさまと言うと、「美味しかったと言う意味ですか? なら良かった」と言われた。


 うむ。この挨拶あいさつも通じないらしい。なかなか異世界語マスターへの道は遠いな。


 ハルとロレン店長は、また手をつないで、上機嫌じょうきげんで宿屋までの道を歩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ