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おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
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海辺の街、ラーザ

ようやくラーザ到着です!

 馬車が街道を走る。この世界の街道は石畳だ。石の大きさはそれぞれで、サラサスーン近辺では比較的大きく赤っぽい。サラサスーンからドルンゾ山へ向かう途中で、灰色の丸みを帯びた小さな石になった。このラーザへと続く街道は、青い。大人のてのひらくらいの、ひらたくうす水色の石が敷き詰められたこの街道は、まさに海へといたる道に相応ふさわしい。


 ドルンゾ山の渓谷から続く川は、太さを増しラーザの手前で二つに分かれている。ひとつは海へと流れ込み、もうひとつは街道と沿うように伸び森へ消えている。ラーザの街は海へ流れ込んでいる方の川から、なだらかな白い岩山へとうように広がっている。


 俺とハルは御者を務めるトプルさんの隣に座って、午後の日差しがキラキラと反射する海と、外国の絵葉書のような街並み眺めていた。


 ハルが、スリングをもてあそびながら、


「シュメリルールの白い家もかわいいけど、ラーザの家もすごくきれいだね」と言った。


 真っ白い壁に、街道と同じうす水色の石が敷き詰められたトンガリ帽子のような屋根。てっぺんが煙突になっていて、煙が上がっている。どの家の壁にも、大きな青い木枠の開き窓がはまっている。白と、みず色と、青。そして海の青。


「ちょっと写メって来るな」


 俺はハルに断りを入れてから、ホロの骨組みに手を掛け、逆上がりをするように幌の上に上がった。2ヶ月近くの朝晩の筋トレの成果は出ているようで、こんな事も出来るようになった。


 もっともアンガーさんなら、ひとっ飛びで飛び上がれるし、ハザン隊長なら片手でハルを抱えても出来るだろう。


 写メを5、6枚撮る。引きこもりだと言っていた、さゆりさんとじーさんに見せたら、きっと喜ぶに違いない。


 ハルも幌の上によじ登ってきた。2人で並んで潮風に吹かれていると、下からトプルさんに「幌が痛むから降りて来い」と怒られた。


 ハルが舌を出して笑った。ハルは内弁慶うちべんけいで、家の外では表情の変化をあまり見せない子供だったが、この世界に来てからは、よく笑うようになった。ハザン隊長といるときは、よく怒ったりもしている。


 そして泣かなくなった。転移初日に谷狼に襲われた時が最後だったと思う。山猫に襲われた夜も、雷におびえていた時も、渓谷を渡るブランコから降りた後も、さゆりさんとじーさんに行ってきますと言った時も。


 ぐっと歯を食いしばって、目を見開いて涙をこらえていた。俺はそんなハルに、そのたびに「泣いてもいいんだぞ」と言いそうになったが、敬意を表して見ないふりをした。


 馬車が街道を外れてラーザの街へと入る。このまま馬車道を通って、ロレン店長の商会で荷物を下ろす。その後は3日間自由行動だ。ハザン隊長とトプルさんは剣術道場に顔を出すそうだ。ヤーモさんとガンザールさんは、海へ釣りに行くと言っていた。アンガーさんは元々ラーザの街の人なので、家へ帰るそうだ。ロレン店長は色々忙しいらしい。


 倉庫街の前で馬車が止まる。荷物の木箱や麻袋がどんどん降ろされていく。俺はハルと一緒に馬をうまやへと連れて行く。


 水をたっぷり飲ませて、新しいわらき桶に飼葉を入れる。硬く絞った布で体を拭いてやる。今回の旅で1番頑張ったのは、間違いなくコイツらだろう。労いを込めてブラッシングもする。


「お疲れさん、ゆっくり休んでくれよ」と首をポンポンすると、


「飼葉食べてんだから邪魔しないでよ」という風に蹄を鳴らされた。


 コイツら全然なついてくれねぇのな! 毎日下僕げぼくのようにお世話してんのに!


 馬の世話を終えて馬車のところへ戻ると、粗方荷物は下ろし終わっていた。書類とにらめっこしているロレン店長のところに行き「お疲れさん」と声をかける。


「そんなに疲れてないから大丈夫ですよ」


 と言われた。挨拶としては一般的ではないのか? さゆりさん家族はふつうに挨拶として使ってたんだけどな。まあ、あそこの一家は、ちょっと日本人過ぎるのかもな。


 宿の地図をもらい、自分たちの荷物をまとめていると、ロレン店長が来て、


「今晩、一緒に食事に行きましょう。ラーザの案内は任せて下さい」と言われた。


「はかせて、くさい?」


「吐くのはやめてください。くさいのも嫌です」と笑われた。


「ラーザの名物料理をご馳走ごちそうしますよ」


 うむ。どうやらおごってくれるらしい。あとで宿まで迎えに来てくれると言う。


 エスコート付きかよ! 俺、口説くどかれんのかな!


 まあはじめての街だしな。心配してくれてるんだろう。


 荷物を担ぎ、手を軽くげて別れる。


 とりあえず宿に荷物を置きに行こうと歩き出すと、ハザン隊長に声をかけられた。


「ヒロト! 今晩呑みに行こうぜ!」と、コップを傾ける仕草をする。あんたホントは日本の昭和おっさんだろ。


「ラーザの夜の街を案内しちゃうからよ!」


 俺の帽子の耳に口を近づけて、ハルが寝ちゃってからな、とウインクして言う。


 お、おう、ラーザの街、到着初日からイベント盛りだくさんだな!


潮の風が運ぶのは、歓喜かそれとも慟哭か。走り出したハルの帽子が落ちる。まだ幼さの残る少年の瞳に宿るのは?


次話、いよいよ教会へと向かいます!



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