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おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
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ハルの心配事

 ハルが、「おとーさん、あれがラーザの街なの?」と、遠く見える街並みを指差して言った。


「ああ、そうだな」


「おかーさんに会えるかなぁ」


 俺はハルの肩を抱き寄せて、


「会えるといいな!」


 とだけ言った。


 あまり期待するなよ、と言おうかと思ったが、案外あっさり見つかるかもな、とも思う。ナナミに会えたらまず何と言おうとか、会えなかったら、ハルを何と言ってなぐさめようかとか。


 つまりは俺に、色々余裕がないって事だ。




 ロレン店長に聞いたら、ラーザの街まであと3日くらいだと言う。あと3日も、こんなモヤモヤした気持ちでいなければならないのか。


 仕事がある事は有り難かった。やらなければならない事に集中していれば、気が紛れる。少しはな。


 俺はアホみたいに筋トレをして、わき腹がもだえ苦しみ、クッソ手の込んだ料理を作って、ロレン店長に材料を使い過ぎだと怒られ、ハルに話しかけられても気づかないほど、のめり込んで絵をいた。


 挙動不審にもほどがある。


 次の日は色々反省して、一日中ハルと折り紙を折って過ごした。ロレン店長にメシを作れと怒られた。


 ますます挙動不審だった。


 そうしていよいよ、明日はラーザの街という夜。2日間の寝不足がたたって、晩メシを作り終えると、俺は倒れるように眠り込んだ。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 挿話


 ハザン隊長の杞憂きゆう




「ごめん、手伝い、ハザン」


 ハルが済まなそうに言う。


 ヒロトがぶっ倒れるように寝ちまったので、俺とハルで晩メシの後片付けをしていた。


「なあハル、お前のとーちゃん、どーしちゃったんだ?」


 ハルとヒロトは嫁さんを探して、遠い異国から旅をして来たと言う。その割には旅慣れていないし、子供でも知っている常識にうといくせに、妙な事に詳しい。異国人というだけでは、説明がつかない事が多々あった。


 俺は最初、苦労知らずのボンボンが、何かから逃げているのかと思った。ヒロトは明らかに何かかくしている。


 悪人にしては間が抜けているし、隙があり過ぎる。しかも弱い。あれで弱い振りをしているのなら、大した役者だと思う。


「おとーさんは、おかーさんがだいすき」


 考え込んでいたハルが言った。俺の質問に答えているのか?


「ラーザ、おかーさん、いない、どうする? おとーさん」


 うーん、嫁さんに会えなかった時の事を考えて、あんな挙動不審になってるって事か? いい歳をしたおっさんが? 2人も子供作った嫁さんに対して?


 初恋にとち狂ったガキじゃあるまいし。


 俺がついプッと吹き出してしまうと、ハルが少しムッとして、


「おかーさんの事がだいすきなおとーさんが、ぼくはだいすき」


 と、やけにハッキリと発音した。


 すまんすまんと帽子あたまをでるとハルは、


「しんぱい」と、ポツリと言った。


 全く、子供にこんな心配かけてんじゃねぇよ! しょうがねぇ父ちゃんだな。


 明日嫁さんに会えなかったら、酒でもおごってやるか! ついでに隠し事も聞き出してやる!


 俺はどうやら、自分で思っていたより、こいつら親子の事を気に入っているらしい。何か事情があるなら、助けてやりたいと思う程度には。


 俺はもう一度、ハル頭を帽子の上から撫でた。そして、鍋の底をゴシゴシと擦りながら思った。


 それにしてもハルは可愛い、と。


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