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おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
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海!

 ドルンゾ山に入ってから9日目、馬車は渓谷に沿ってゆるやかにうねる道をひたすら進んでゆく。谷の向こう側の崖に、見事な大角おおつのを生やした鹿しかがいる。切り立った崖を、よくもまあ、と思うほど身軽に登って行く。身体に比べてアンバランスさを感じるほどの大きな角は、邪魔じゃまにならないんだろうか。


 渓谷の底に遠く細く見えていた川は、今ではゴウゴウと音が聞こえるほど近く、山道が下っている事を思い出させてくれる。


「ホウホウホウ、ホロロロロ」という、よく響く鳥の鳴き声が聞こえる。渓谷を渡ってから、どんどん緑が深くなり、道を圧迫するように木が生えている。ついこのあいだまで、赤い地面ばかりを見ていた事を考えると、外国へ来たような気持ちになる。


 まあそれを言ったら、ほんの二ヶ月前まで、高層ビルの立ち並ぶアスファルトの道を、人波にうんざりしながら歩いていたのだが。


 渓谷を越えた日からだったか、俺が朝の筋トレをしていると、トプルさんとハザン隊長が眠そうに目をこすりながらやってきて、隣で剣の素振りや立ち合い稽古をするようになった。聞けば、2人は若い頃ラーザの剣術道場に通っていて、今でもラーザへ行くと必ず顔を出すのだと言う。


「ここんとこ、稽古サボってたし、師匠ししょうにどやされちまう」


「しりょうに、どくされる」


「違う意味でこえーよ! 師匠は、先生、剣を教えてくれる人。どやされるは、怒られるって事だ」


 うむ。2人の剣の振り方は、どこか洗練されていると思っていたが、ちゃんと師匠について修行していたんだな。納得の強さだ。


「ヒロトのメシが美味うますぎて、身体が重くなった」


 トプルさんが嬉しい事を言ってくれた。俺の料理なんて男飯オトコメシなんだけどな。レシピはほとんどクッ◯パッドで仕入れたものだ。ちなみにプレミアム会員だった。


 俺があちこち、とり散らかしたような思考に沈んでいると、先頭の馬車で御者をしているアンガーさんが叫んだ。


「海が見えたぞー!」


 俺はハルと顔を見合わせて、荷物の箱を乗り越え御者席から顔を出す。


 馬車がちょうど崖を回り込むところだった。


 右手の視界が開けて来ると、眼下に森と、真っ直ぐに伸びる街道、その向こうに遠く海が見える。


 そして、2つに別れた川に挟まれるように広がる街並み。


 ラーザの街が見えてきた!


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