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おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記《嫁探し編》〜  作者: はなまる
第2章 キャラバンのお食事係と旅日記
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雨宿りと浅き夢

 雨は収まる気配がなく、まだ午後も早い時間なのに辺りは真っ暗になってしまった。


 時折り稲光りがバリバリと空を走り、どこかに落ちているのだろう。ズドーンという地響きが聞こえる。ひときわ近くでバリバリズドーン! と聞こえた時、ハルが「ひゃあ」と小さく呻いて俺の脇腹にしがみついてきた。


 ハザン隊長が「なんだよーハル、カミナリ怖いのか?」とニヤニヤしながらデコをつつく。


 ハルは、「怖い、ない! 違う!」と言って、ポスポスとハザン隊長にパンチをくれた。




 馬の世話を終えたら、夕方まで俺の仕事はない。さて、雨が止むまでの間、何をして暇を潰そう。他のみんなも思い思いにやりたい事をはじめた。


 ハルは木箱の上で、また折り紙を折っている。ロレン店長は書類の確認をしたり、伝票のような物を書いたりしている。ハザン隊長は槍の穂先を砥石で研いでいる。口元にヤバイ笑みを浮かべながら、刃物を研ぐのはやめて欲しい。


 ヤーモさんとガンザールさんはトランプのようなカードゲームに興じている。ふと思い立って、俺はなるべく清潔な布と木桶を持ってトプルさんを呼ぶ。


「トプルさん、傷、洗う。布、変える」


 トプルさんは歩いてきて「すまんな」と言い、腕を出す。腫れていないし、血も止まっている。猫の爪の傷は腫れるので心配だったのだが、これなら大丈夫だろう。傷口を洗い、アロエを潰してゼリー状の汁を塗り、布を巻く。アロエの鉢はキャラバンには必須アイテムらしい。ポンと叩いて「すぐ治る」と言うと、「そうか、ありがとう」と、言った。


 雷の音が、幾分遠ざかってきたようだ。これならしばらく待てば出発出来るかも知れない。


 しばらくして俺はウトウトしていたらしい。浅い眠りの中で夢を見た。




 サラサスーンの、さゆりさんの家の前にいる。じーさんが出てきて、


「ヒロト、お帰りだにゃー」


 と言った。そうか、俺は帰って来たのか。


 って、なんかじーさん今、「にゃー」って言ったか?


 さゆりさんも出てきて、


「無事で良かったコンコン」


 と言った。はっ? コンコン?


 ちょっと待ってくれ! 何なんだその語尾は!


 ハナが走ってきて、俺に飛びついて言った。


「とーたん! お帰りぴょん!」


 ぴょん、かよ! 飛びついたから?


 その時ハナの帽子がポロリと落ち、その下には白いウサ耳があった。


 可愛いけど! 可愛いけども!! 生えて来ちゃったの?!


 お父さんまだ心の準備出来てないよ!


 後ろから懐かしい声が聞こえる。


「ヒロくん、会いたかったぴょん!」


 ナナミ、お前もぴょんかー!!


 アーイアイ、アーイアイ、おサルさーんだよー♪「ウッキー!」


 みんなが歌いながら俺の周りを回りはじめる。


 アーイアイ、アーイアイ、みなーみのしまーのー♪「ウッキー!!」


 ハルが絶妙のタイミングで合いの手を入れる。


「ウッキー!」と‥‥。


 ハルの頭には大きくて黒い丸耳が付いている。長くてフサフサの尻尾も。


 ああ、アイアイか。だからウッキー、なのか。


 俺は嫌な予感を感じつつ、「ただいま」と口にする。でも俺の口から出たのは、


「ただいまウッキー」という言葉だった。






 と、言う夢だった。


 気がつけば、ハルが俺を起こしている。


「おとーさん、うなされてたよ」とハルが心配そうに言ったが、俺はしばらく言葉を口にする事が出来なかった。


「ウッキー」と言ってしまいそうで。


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