戦うのたぶん無理
晩メシの前に、ロレン店長と護衛の5人は、明日からの山越えについて色々と打ち合わせをしていた。俺はメシの支度に忙しかったし、一緒に聞いてもたぶんわからなかっただろう。
予め水で戻しておいた緑豆を、カリカリに炒めたベーコン、玉ねぎと一緒にミルクで煮る。俺は小麦粉を炒めて作るホワイトソースが上手く出来ないので、小麦粉は後からミルクで溶いて混ぜる。今日はクリームパスタにしよう。
メインは肉団子にした。小さくて青い芽キャベツと、赤いラディッシュと一緒に炒める。片栗粉でとろみをつけて、甘辛く味をととのえる。カラフルな一品になったな。青い野菜ってのも、地球じゃ見かけなかったけど、この世界には割と普通にあるんだよな。ラディッシュも中まで赤い。
ハルは辛いものが苦手なので、うへぇーっと舌を出しながら食べていた。残さないで食べたので、少しびっくりした。他に食べるもんないもんな。
食べ終わった食器や鍋を洗っていると、ハザン隊長がやってきた。
「ヒロト、ハル、ちょっと話しがあるんだが」
俺は頷いて、洗い物の手を止める。
「ドルンゾ山で灰色狼の、大きな群れが目撃されているらしいんだ。目撃は、『見つかる、情報』だな」
「たくさん?」
「そう、たくさんだ」
「それで、ヒロトとハルが、どの程度戦えるのか知りたい。まぁ、戦うのは俺たちの仕事だ。念のためにな」
「ねんね、豆?」
「念のためだ。豆じゃねぇ。『用心、保険、一応』だ。わかるか?」
なるほど。豆じゃない、と。
「武器はなにが使える?」
俺は少し躊躇いもあったが、スリングを出し、組み立てて見せる。
ハルも腰の物入れから、自分用のスリングを出す。
「なんだ、そりゃ? 武器なのか?」
玉を取り出し、村の外に向かって打って見せる。暗闇で木の枝に当たったのだろう、ザシュ!という音と、木の枝が落ちるバサバサという音が聞こえた。
「へぇ! おまえら、面白いモノ持ってんな! で、どのくらい当たる?」
「あたり7、はずれ3」
「ハルは?」
「同じくらい」
「でも、俺もハルも、夜、目、ダメ」
「剣は?」
「ダメ、全然、ムリ」
ハザン隊長は、ふむふむと顎ヒゲを弄ると、
「明日、明るいところで見せてくれよ」と言って、やたら嬉しそうに笑った。それから、
「夜目、全然ダメなのか? 俺もネコ科のやつらに比べたら見えねぇけど、全然ってのも珍しいな」
と言った。そうなのか? 鳥設定にした方が良かったか? いや俺、踊れないし、尾羽の偽装も難しいな。
俺は仕方なく、曖昧に笑って、
「戦うはハザン。任せる」
と言ってハザン隊長の肩を叩いてみた。
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今日のメニュー
朝 昨夜のスープの残りにチーズ入れて、チーズリゾット
昼 BLTサンドイッチ
夜 緑豆とベーコンのクリームスープパスタ、キャベツと肉団子の甘辛炒め
村で新鮮な牛乳と肉を入手できたので




