団欒
リュートが大岩をヒョイヒョイっと登り、向こう側へと飛び降りる。しばらく待つと、謎ギミックが作動し、ゴゴゴゴーッと音がして入り口が開く。コレ何度見ても良いな! 滾る。あとでどんな原理で作動しているのか聞いてみよう。
馬から降りて入り口をくぐると、ハルが
「おとーさーん!」
と、走ってくる。
ハナが後から、
「とーたーーーん!!」
と、とてとてやって来て腹のあたりに飛びつく。
ハナを左手で抱き上げ、ハルの頭をポンポンする。なんだこの大歓迎! 多幸ホルモンが出まくりだ。ハナの頭の匂いを嗅ぎ、ハルの髪の毛の感触を堪能する。
おかえりー、ただいまー、良い子にしてたかー、なんていつもの台詞を交わす。幸福感に包まれながらも、だからこそ、足りないピースを思い出す。嫁は今、どこで何を思っているのだろう。
にわとりを全部小屋に入れ終えたじーさんに帰宅の挨拶をし、子供たちと一緒に先に家に入ってもらう。俺はリュートと一緒に馬を厩に連れて行き、荷物を降ろす。リュートは少しゆるんでキイキイと音を立てる厩の扉が気になるらしく、様子を見ている。
「ヒロト、待つ」
荷物から道具を取り出し、手早くメンテしていく。全くもって有能なオトコだ。
軽く点検して仕上がりに満足したらしいリュートと、のんびり歩いて家へと向かう。
「ただいま戻りました」
出迎えてくれたさゆりさんに、少しかしこまって挨拶する。何故だろう、さゆりさんにはつい丁寧に接してしまう。少し緊張する。
「ヒロト、ていねい。違う人みたい」
リュートが吹き出して言った。俺がお返しにリュートのこめかみをグリグリしていると、さゆりさんが、
「あらあら、ずいぶん仲良しになったのね」
と、微笑みながら言った。俺は余計に照れ臭くなったが、リュートはやけに嬉しそうに笑っていた。
すぐに少し早めの晩メシとなる。街の様子を聞きたがるハルや、狩の獲物となる動物の状況を聞くカドゥーンじーさん、俺の似顔絵屋の様子を聞くさゆりさん。異世界語と日本語の飛び交う、たいそう賑やかな食卓となった。たくさん笑い、美味しいさゆりさんの手料理を食べ、はしゃぎ疲れた子供たちは早々に船を漕ぎ始める。
子供たちを屋根裏部屋に運ぶ。街で手に入れた情報を元に、さゆりさんやリュートと、今後の行動を相談しようと思う。