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状況把握と可能性の考察

 手持ち無沙汰ぶさたと言う言葉がある。やる事がなく、何となく居たたまれない状況を指す言葉だと思うが、俺はまさにそんな気持ちだった。いや、片手にハル、片手にハナを抱えて、両手が塞がってはいるのだが。


 何しろ、どうして良いかわからない。ハルはキョロキョロと辺りを見回して、俺のTシャツの裾をぎゅっと握った。


 スマホの着信音が鳴った。


 さすがナナミ。そうだな、まずは状況確認からだ。



「ヒロくん? 今どこにいる? ハルは? ハナは一緒?」


 的確に必要な情報を求める。俺の嫁は切迫した状況下で、必要な行動をする強さを持っている。ナナミの口調は完全に、職場モードになっている。救急車で運ばれて来た患者に、意識の有無や容態を確認する口調。俺の嫁は看護師だ。


「ハルもハナも一緒だ。ここどこだろうな、ハル。荒野?」


 何をどうして良いかわからず、ほうけていた俺とは違うな。説明できるほど現状を把握しておりませんですハイ。


「荒野? 砂漠とは違うの? こっちは海が見える。それで‥‥」


 ナナミの口調が、プライベートなものへと戻る。俺たちの無事を確認して、少し落ち着いたのだろう。


 ガーガーという雑音が混じり、ブツッと通話が途切れる。スマホの画面を見ると圏外。


 とりあえず嫁も無事らしい。しかし海か‥‥。この見渡す限りの乾燥地帯からは、ずいぶんと遠い気がする。


 ハルにリュックから、オレンジジュースのペットボトルを取り出して渡しながら、今更だがこの状況と向かい合う。


 瞬間転移か? タイムトリップか? まさか、アブダクション(宇宙人にさらわれる事)か?


 俺はオカルトに興味はないが、今の状況が夢ではなく、俺の精神が壊れたわけでもないなら、俺たちを取り巻く全てのものが一瞬のうちにどこかとすり替わってしまったか、俺たちがどこかに移動した、又はさせられたかのどちらかだろう。


 アメリカかオーストラリアならこんな場所もあるのかも知れない。日本国内じゃない気がするな。地球じゃなかったらの想像をしたら、背筋が寒くなったのでやめておいた。


 さっきまで都内某所の少し大きめの公園に、向かっていたはずなのだが。嫁の作ったサンドイッチ持って、バトミントンでもしよかーお母さん三連休だしなー、なんて日常が嘘のような景色だ。


 俺が公園に向かう途中で記憶喪失になり、ハルとハナを連れてここまで移動し、さっき唐突に記憶が戻った可能性はあるかも知れない。


「ハル、今日はどこに向かっていたんだっけ? 何月何日だ?」


 まさかな、と思いつつハルに聞いてみる。


「8月7日。100円ロー◯ン寄ってから◯◯きねん公園に行くとちゅう、だったよね? おかーさん、どこにいるって言ってた?」


 うん、俺とハルの認識にズレはない。記憶喪失説は却下きゃっかだな。スマホの日付と時計を確認する。午前9時ちょっと過ぎ。自宅を出た時間からすると、そんなもんだろう。


 スマホからメールの着信通知が鳴る。嫁からだ。


 ヒロくん、電話が通じなくなった。

 ハルもハナも無事なら良かった。

 なんで急にこんな所にいるのかわからないよ。

 遠くに街並みが見える。ビルらしき建物がないし、馬車が走ってたよ! テーマパークみたいな感じだけど、行ってみる事にするね。

 お金持ってる? なるべく早く合流したい。

 なんか非常事態だけど、ハルとハナをよろしく。


 俺も返信する。


 ハルもハナも大丈夫。金も持ってる。今、モニュメントバレーっぽい場所にいる。たぶん日本じゃない。状況がわかり次第、連絡を取り合おう。

 なるべく早く迎えに行くからあんまり動くな。落ち着け。街まで行ったら、警察とか役所とかに駆け込め。


 ポチッと送信して、オレンジジュースを飲む。


 さてと、次は何をすれば良いんだ?

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