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ハルの質問

 昼メシをご馳走になり、子供たちは昼寝。俺はカドゥーンじーさんを手伝って家畜の世話したり、物置小屋の片付けをしたりした。燻製小屋があったのには感動した。今朝のスープのベーコンは手作りなのだろう。


 その後、ジャムがくつくつと煮える音を聞きながら、この世界の言葉と文字を教えてもらう。言葉の壁は高く厚い。


 文字は所謂いわゆる『表音文字(言葉の発音をそのまま表記する文字の事。単語や漢字ではなく、かな文字やローマ字)』なので、せめてヒヤリングが出来ない事には話にならない。


 必要最低限の単語から覚えていくしかないようだ。異世界転移には言語翻訳スキルが、もれなく付いてくる御都合展開が羨ましい。


 謎言語に四苦八苦していると、ハルが目をこすりながら起きてきた。


 しばらく俺の迷生徒ぶりを、半分寝ぼけた顔で眺めていたが、


「さゆりおばあちゃん、しつもんしてもいい?」


「なあに? ハルくん。私に答えられる事だと良いんだけど」


「まほうは使えるの? 強くなったらカメ◯メ波とかビームとか出せるようになる?」


 ハル、俺がどうしても恥ずかしくて聞けなかった事だよ、ソレハ。


 さゆりさんはプッと吹き出して、それを誤魔化すようにふふふと笑った。


「魔法はあまり聞いた事がないわ。でももしかして私が知らないだけで、使える人がいるかも知れないわね。カメ◯メ波は、そんな感じの事が出来る人はいるらしいわよ?」


 まじでー! カ◯ハメ波あるんだー!


 ハルも目がキラキラしている。


「『気』に似ているかも知れないわね。耳傾けるとか、目をらすとかそんな感じかしら。集中して意識を強く向けると、少し能力が上がるの。人によるけど、早く走れるようになったり、遠くのものが見えるようになったり。昨夜ハナちゃんの泣き声が聞こえたのは、私がなんとなく聴力強化を使ったからなのよ」


「ぼくも出来るようになるかなー?」


「ええ、きっと出来るようになるわ」


 断言しちゃったよ。『気』なんて意識した事も感じた事もない。それとも異世界ならありなのか?


「ぼく、いっぱい練習する。そんで強くなって早くお母さんをむかえにかなきゃ」


「ハルくん‥‥」


 さゆりさんが言葉を失ったように口ごもる。


「ハル、お父さんも今すぐお母さんを迎えに行きたいんだ。でも今の俺たちは言葉もわからないし、どこを探したら良いかもわからない。おまけにこの世界のお金も持っていない。これじゃあ、お母さんに会える前に干からびちまう。ハルの好きなゲームだって、最初はお金貯めたり、レベル上げたりするだろ?」


「うん‥‥。わかったよ。さゆりおばあちゃん、ぼくお手伝いたくさんするから、ぼくにも言葉教えて。ハナちゃんの分までぼくがお手伝いするよ」


「ハルくん、いいのよ。そんな心配しないで。でもお手伝いはしてくれると助かるわ」


 さゆりさんがハルの頭を撫でながら言う。


「おとーさんはいっぱいかせいできてね」


「はい」


 つい良い返事をしてしまった。ハル、鬼嫁みたいなセリフだな!




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