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隠し扉

★←続々追加してます。


サブタイトルに「★」が付いているおはなしは、「あとがき外伝」、又は「本文を読んだ作者の妄想」がおまけで付いています。1話で二度と楽しい! 良かったら読んでみて下さいね。










 大岩の家へと戻ってじーさんを探す。麦わら帽子を被って畑の草取りをしていた。


「父さーん!」


 リュートが呼ぶと手を挙げて、ヒラヒラと振る。


 隣でちょろちょろとお手伝いという名の悪戯いたずらをしていたハナが、こちらに気づいてユキヒョウの姿になってコロコロと駆けてくる。


 ロレンとリュートが相好そうごうを崩し、二人揃っておいでおいでのポーズをする。


 フフフ! 残念だったな! ハナは絶対に俺のところに来る!!


 俺の腕にポスンと収まり、人の姿へと戻る。


「とーたん、おきゃーり!」


 相変わらずの赤ちゃん言葉だ。ユキヒョウの姿でいる時間が多いからなのか、異世界語と日本語の入り乱れた大岩の家の弊害なのか。


「ハナ、はだか、ダメ」と異世界語で叱ると、


「ヤー!」と手を挙げて了解の返事をした。


 おまえら、ハナが服着るまで、あっち向いてろ! ……そんな羨ましそうな顔すんなよ。リュートはもうすぐ子供、生まれるじゃん。ロレンは……、恋を知る事から始めてくれ。


 じーさんがハナの脱ぎ捨てた服を拾いながら、畑のあぜ道をゆっくり歩いてくる。


「父さん、俺たち忌み地へ行ってきたんだ。何か知っている事があるなら、教えてくれ」


 リュートが待ちきれない様子で言った。


「ああ、何が聞きたい?」


 じーさんはさらっと何でもない事のように言いながら、ハナの服を俺に渡した。


 とりあえずジャブからいこう。


「じーさん、忌み地、行く、何回?」


「若い頃、面白くてな。しょっちゅう行っていた。パラヤが生まれる前の話だ」


 じーさんは、よっこらしょと日本語で言いながら、腰を下ろした。


「危険はないのですか? あの音は?」


「少なくとも、俺は危険な目には一度もってねぇな。音って、あのキーンってやつか?」


 俺たちは三人揃って頷く。


「あれは獣除けの音だろうさ。現にあのうちっかわには獣ははいっちゃ来ねぇ」


「俺には聞こえない」


「ヒロトの耳は小せぇからな」


 そういう問題だろうか。まぁ、年寄りだからと言われるよりはいいな。


「なにか建物とか、倉庫とかあるのか? ヒロトは隠し部屋みたいなものがあるはずだっていうんだ」


「ああ、あるぞ。空飛ぶ船が山ほど隠してある。全部壊れてるけどな」


「「黒猫の英雄!!」」


 ロレンと俺が顔を見合わせて、一緒に叫ぶ。


「んまあ、俺もそう思ったけど、実際はわからねぇよな。大昔の話だ」


「じーさん、教えてくれないは、なぜ? そんなに知っているのに」


 つい、感情的になってしまう。


「知りたかったのか? それは、すまんかった」


「ヒロト、ごめん。耳なしの話は、うちではあまりしないのが習慣になっているんだ」


 じーさんが困ったように謝り、リュートがかばうように言った。




 俺が常に感じている不安。


『転移は一度だけではないかも知れない』


『また、どこかに飛ばされてしまうのではないか』


『ハルやハナが、目の前から消えてしまうのではないか』


 そんな不安は大岩の家族全員にあったはずだ。いや、今もあるに違いない。その不安に、耳なしは深く繋がり過ぎている。避けるのも無理のない話だ。


 俺たち家族が目の前に突然現れた事は、そんな忘れかけていた不安を、思い出させてしまったのかも知れない。謝るのは俺の方だ。



「忌み地の更地には、隠し扉があるんだ。行ってみるか?」




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